ごちゃまぜ
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フラン様に彼女ができたらしい。
フラン様の部下がそんな噂をしているところに偶然通りがかった。一メイドの私は普段から皆さんのお話は聞こえないフリをすることにしていた。重要機密の任務も扱うヴァリアーで働いているのだ。メイドから情報漏洩など絶対あってはいけない。でもこの噂だけは、聞こえないフリをしたくても出来なかった。つい、足を止めて耳を立てた。
「フラン様の側によくいた…ホラ、あの女」
「あぁ、アイツか。フラン様に尽くしていたもんな」
知っている。フラン様の周りをちょこまかと動き回っていた人だ。フラン様はお優しいのでメイドの私にもたまに声をかけてくださっていた。その度に鋭い目を私に向けて来た女だ。確かその人もフラン様の直属の部下だったはずだ。あぁ、フラン様はあのような人がタイプだったのか。
「ミーの噂はいいですからー。早く任務に向かってくださいー」
「フ、フラン様!申し訳ありません、今すぐに!」
突然現れたフラン様の一声で噂をしていた人達は散り散りになった。私も早く仕事に戻ろう。今はフラン様と顔を合わせる気分ではなかった。しかしそうも言っていられず、
「名前、盗み聞きとはいい度胸ですねー」
「っ、フラン様…」
突然現れたその人は私の顔を覗き込んだ。聞きたいことはある。口を開こうとするが思ったように声を出せず、金魚のようにぱくぱくと動かした。
「言いたいことあるなら、ゆっくりでいいですからー。待ってますんでー」
「あ、の…」
「ハイー」
「いつも、フラン様のお側にいらっしゃったあの方と、お付き合いをされたと、伺いました」
「そうですねー」
「本当なのですね」
あの人のどこが良かったのか、聞きたい気持ちをグッと堪えた。そんな私の思考を読み取ったようにフラン様はこう続けたのだ。
些細なことですけどー、隊服に穴が空いていると知らないうちに直してくれたりー、ミーがリラックスできるように部屋に花を飾っていてくれたりしていたみたいですー。最近それに気がついて、彼女に聞いたら彼女がやっていたと言っていたのでー。気がきく人だなー、なんて。
どうして。頭が混乱した。それをしたのは全て私じゃないか。勿論、私の仕事でもあるので、他の幹部の方へもしていたことだが。毎日花瓶の水を変え、定期的に花を交換する。幹部の方は隊服がボロボロになれば皆さん買い換えるのだが、フラン様の物だけ気づいた時に直していた。それに任務から帰って来る時間を見計らってお部屋にティーセットを用意していたのも私だ。それをあの人は自分がやったと言ったのか。それでフラン様とお付き合い出来たというのか。惨めで虚しいと思った。涙を堪えきれず、頬に一筋の水が伝った。
「名前…?」
惨めな片思いは終わりだ。それと、この仕事も辞めよう。仕事に気づいて欲しいと思ったことはなかったが、こんなことに利用されるなんて金輪際真っ平だ。何のためにメイドをしているのか、わからなくなってしまった。
「何でもありません、目にゴミが入ったのかも。私、仕事がありますので失礼致します」
フラン様に背を向け歩き出す。人事管理をしてくださっているのは確かスクアーロ様だ。辞表を今日中に提出しよう。そして退職まで職務を全うしよう。それが私にできる最後の仕事だ。
そう考えながら、私は涙が止まらなかった。
続きそう
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