海色の初恋
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「おや、フロイドの姿が見えませんね」
突然聞こえた声に振り返ると、そこには先程居なくなったはずの彼と瓜二つの顔。あれ、フロイド、さん??でも声が違うような…。疑問が顔に出ていたのだろうか。男はクスクスと笑った。
「僕はジェイド・リーチと申します。フロイドとは双子です」
「双子」
「えぇ。ところで、フロイドはどちらに?」
「どこかに行ってしまって…。すみません、開店前にお邪魔してしまって。すぐ出ます」
「構いませんよ。もうすぐにオープンしますからそのままいらしてください」
フロイドさんと違い、上品な所作と柔らかい物腰のその男は彼と双子だという。その男、基ジェイドさんはフロイドさんと入れ替わりでカウンターに入ると私の目の前の空のグラスを下げた。代わりにメニュー表を差し出すと、何かいかがです?と微笑む。
「あまりこういうところに慣れていなくて…すみません、メニューもどれがなんだかよくわからないんです」
「では、僕のオススメはいかがです?僕、紅茶を淹れることが得意なんです」
手早く準備をするジェイドさんの手元を見つめる。先程のフロイドさんも、言動が適当な割には丁寧にドリンクを作っていたなぁ。そういうところは兄弟似るのだろうか。
「フロイドは貴女のことを気に入っているようです」
「そんなことはないと思いますけど…」
「一回しか会ったことがない他人の顔なんてフロイドは覚えませんよ」
「えと、相当記憶力がいいのではないでしょうか」
「それにあの日、貴女に名前を聞いたでしょう」
確かに名前は聞かれたが、そんなのただの挨拶のようなものだろう。彼にとって大した意味はないはずだ。きっと、いつでも来ていいという言葉も、同じなのだろう。コトリ、と目の前に出された紅茶に映るのは物憂げな表情の自分だった。
「フロイドが言う通りですね」
「??」
「貴女とは全然目が合いません」
「それは…すみません、私の悪いところですよね」
そう言われてジェイドさんと目を合わせた。本当にフロイドさんとそっくりだ。その綺麗な顔といつまでも目を合わすことが出来ずにすぐ逸らした。
「おや、もう降参ですか?」
「ちょっとこれ以上は…」
「では僕の勝ちですね」
「いつの間に勝負に…」
「ふふ、ではひとつ、僕の願いを聞いて頂きましょう」
そんなの聞いてない。思わずジェイドさんの顔を見上げる。抗議しようとした私の唇に白い手袋を被った人差し指がそっと触れる。少し静かにしていてくださいね。そう言って近づくジェイドさんの顔。何をされるのかと恐怖が募り強く目を瞑った。