海色の初恋
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
私は今彼に告白をされたのだろうか。まさかそんなことを言われると思わず、動揺する。オロオロとする私を真っ直ぐに見つめていた彼は頼りなさげに眉を下げた。
「もしかして、名前の好きって番になりたいって意味じゃなかった…?」
「つがい…?!」
「この前、オレのこと好きって言った」
確かに私は彼のことを恋愛的な意味で好きだ。しかし、つがい、とは。あまり人間には使わない言葉だと思うが、彼の中でその言葉は恋人という意味であっているのだろうか。聞き慣れない言葉がぐるぐると頭の中を巡った。
「わたしは…」
「うん」
「フロイドさんが好き、ですけど」
「けど?」
「番ってどういう…」
「そういえば人間って番って言わねーんだっけ」
ごほん、と一つ咳払いをしたフロイドさんは居直ると真剣な表情をし、ゴソゴソと制服のポケットを探った。そこから取り出したのは、包装もされていない小さなジュエリーケース。中から指輪を取り出すと、彼は私の左手を握り、薬指にそっとその指輪をはめた。
「名前。オレのお嫁さんになってよ」
「ちょ、ちょっと待ってください。お嫁さんって私がですか」
「他に誰がいるわけ?」
「だって出会ったばっかりですしというかまだ私たち学生ですしそもそもそういうのは恋人として過ごしてから、」
「ごちゃごちゃうるさい」
つらつらと並べた言葉は彼のその一言に一蹴され、次の瞬間には唇を塞がれ言葉を発することは出来なくなっていた。啄むように互いの唇が何度も触れる。彼に抱きしめられ逃げ場がない。さっきは、ちゅーしようとした、なんて可愛いことを言って照れていたのに。彼の纏う雰囲気は先程とは違い、妖艶さを醸し出している。気分屋なんてレベルじゃない。息が苦しくなり、トントンと彼の胸を叩くと漸く唇が離れる。ぽーっと数秒視線を絡ませたと思うと、彼は私の耳元に口を寄せた。
「ねえ、オレのこと好き?」
「え、と、」
「ハ?好きじゃねーの?」
「っ、す、きです」
「あはっ、よかったぁ。オレも好きだよ。だからさぁ、番になるよな?」
あれ、この人本当にさっきまでのフロイドさんなのか。あの可愛かった照れや、先程の不安げな表情は消え、声色は若干低い。その不穏な雰囲気に戸惑い、つい、頷いた。急にパッと明るい表情になった彼は嬉しそうに笑ったのだ。
「ふふふ。オレ、名前のこと大切にするからね」
ぎゅーっとされながら、改めて私はとんでもない人を好きになってしまったのではないだろうかと思ったが、もう今更だ。そんなのは最初からわかっていたことなので考えるのを放棄し、ただただ彼に抱きしめられられるのだった。
10/10ページ