花房くんと私
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入学から1ヶ月。そこそこ学校にも慣れてきた。乗り遅れたのか、友達はまだ出来ないままだけれど、毎日が充実している。実習の方ではスイーツ作りの基礎を叩き込まれているところ、なんだけど…。いくら両親がパティシエと言ってもセンスは遺伝しないらしい。私の成績は良くも悪くも普通。それはそれでちょっと悔しいのだけど。そしてお隣の席の花房くんはと言うと、
「すごーい!花房くんのマドレーヌ可愛いっ」
「安堂くんは抹茶なんだね!」
「樫野くんのチョコも美味しそーっ」
安堂くん、樫野くんと共にスイーツ王子と呼ばれている。3人は群を抜いて上手。私とは比べ物にならないくらい。自分の作ったマドレーヌを見つめてみる。
『こんなんじゃまだまだだよね…』
はぁ…。とため息を吐いて片付け作業に入った。
*
『確か、この学校って調理室解放してるんだよね』
放課後私は特訓を始めるべく調理室に向かった。自分の意思で入った学校ではなかったけれど、お菓子作りは楽しくてハマりそうだ。まんまと両親の策略に嵌まってしまったのかな、となんだかもやもやしながら調理室へ向かうと少し扉が開いていた。先客…?中を覗くとそこに居たのは
『樫野くん…』
彼はテンパリングの練習をしていた。もしかして毎日やってるのかな。だから樫野くんのチョコはあんなに綺麗なのだろうか。扉からジーっと見つめていると不意に後ろから話しかけられる。
「あれ、名前ちゃん」
『えっ、あ、は、花房くん!』
「そんなに吃らなくても。あ、中に入ったら?」
そう言って扉を開けてくれる花房くん。おずおずと中に入る。樫野くんは集中しているのか此方には気付かなかった。私も練習しようかな。そう思った私はちまちまと準備を始めた。
「名前ちゃんも練習に来たんだ」
にっこりと微笑みながら花房くんは私の隣で飴細工の練習を始めた。
『うん、一応…?』
「ふふっ、なに一応って」
『あー、うん。そうだよね。練習に来たの!』
そっか、と笑う花房くん。その後ろで練習が一息ついただろう樫野くんがはぁ…、と溜め息を吐く。
「名字ってアホだな」
『ひ、ひどい…!』
そう言ってまたすぐ練習に入る樫野くん。むっ、とむくれていると花房くんが綺麗な飴細工を差し出した。
「折角の可愛い顔が台無し。ねっ?」
『これ、くれるの?』
「うん、どうぞ」
『ありがとう!』
にこっと笑うと花房くんが少し驚いた顔をする。綺麗で可愛い薔薇の飴細工。練習をするはずがすっかりお喋りに変わってしまった。ハッとして練習を始める。
「ねぇ、練習明日からもするんでしょ?」
『うん、一応…』
「ははっ、また一応なんだ」
『あ、いや絶対!』
「そう。じゃあさ、」
ボクと一緒に練習しない?