何も知らずに近づく距離
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笹枝 立花(ささえだ りつ)
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目が覚めたとき、立花は知らない部屋の真ん中の椅子に座っていた。
自分が何をしていたのかも思い出せず、兎に角ここから出ようと扉のドアノブを掴もうとしたとき、壁に文字が書かれていることに気づく。
〝自分が何者か、何のためにいるのか知りたければ、先へと進め〟
「よくわからないけど、先に進めば何かわかるのかな」
扉を開け部屋から出ると、そこは通路となっていた。
少し先にエレベーターが見え、エレベーターの前につくが、矢印は上しかない。
「兎に角上に行こう」
地下6階でエレベーターは停まり、どうやら一気に上までは行けないようだ。
一度そのフロアで降り、上に行く別のエレベーターがないかと探す。
先程いた場所とは全く違う造りにキョロキョロとしながら歩いていると、一枚の紙が床に落ちていることに気づき手に取る。
内容は殺人鬼に関するものであり、とくに興味もなく紙を手放し先へ進もうとしたそのとき、突然背後から声がし振り返る。
「何だぁ?お前」
「ここから出たいんだけど、アナタわかる?」
その男の顔や手には包帯が巻かれており、手には鎌を持っている。
どこかで見たような気がするが、こんな知り合いはいなかったはずだ。
それより今は、ここから出なければということしか立花の頭にはなかった。
「ああ、上に行くエレベーターなら知ってるぜ」
「それはどこにあるの?」
「そこを真っ直ぐにいけばあるが、お前に辿り着くことはできねぇよ」
何でと言いかけたそのとき、男の持っていた鎌が立花の首元に当てられた。
「お前はここで俺に殺されるんだからなぁ」
そう言いニヤリと男が笑った瞬間思い出した。
この目の前にいる男は、先程の紙に載っていた殺人鬼だということに。
男は指を3本立てると、3秒待ってやるから逃げてみろと言い、鎌を退かすとゆっくり数字を数え始めた。
このままでは殺されると思い、男が言っていたエレベーターのある方へと走り出す。
そしてその間に3秒数え終わった男は甲高い笑い声を上げ、立花のあとを足って追いかけてくる。
「あった!」
「ざーんねん」
エレベーターを目の前に、男の鎌が背後から立花の喉元に回り込む。
「こっちに向き直れ。そして、お前の絶望の顔を俺に見せてみろ」
言われた通り立花は男の方へと向き直るが、先程まで笑みを浮かべていた男の表情はつまらないものでも見るかのように変わり、鎌が退けられた。
男はただ一言、そんな顔の奴を殺す気にはならねぇんだよと吐き捨て、立花に背を向け何処かへと行ってしまおうとする。
よくわからないが、このままエレベーターに乗れば上の階に行けるのだろうが、立花の足は真逆に進んでいた。
「ここ、アナタの部屋?」
「うわッ!?何だよ、エレベーターに乗ったんじゃねぇのかよ」
「そうしようとしたんだけど、気づいたら着いてきてた」
「はぁ、訳わかんねぇヤツだな」
この男の部屋らしき床には食べ物のゴミ。
かけられているタオルには血がついている。
綺麗好きな自分からしたら、片付けた方がいいと思うのだが、こんなところで生活をしている男が何故か気になった。
「おい、何時までいるきだよ」
「わからない」
「はぁ……。お前なぁ、今の状況わかってんのか?」
首を傾げる立花の姿に、更に深い溜息を吐くと、男は再び立花の首に鎌をかける。
だが、そんな状況にも動じない立花の様子に、今度はイライラとしはじめたようで、さっさと何処へでも行けと言う。
「貴方は行かないの?」
「は?何で俺が行かなきゃいけねぇんだよ」
「だって、こんなところにいたら衛生的にも良くないだろうし、貴方はここの建物について知ってそうだから、一緒に来てくれたら助かる」
無表情のまま言われた言葉に男の顔がひきつる。
無理もない、目の前にいる人物が殺人鬼だというのに恐怖すらせず、それどころか、のこのことここまで着いてきて、挙げ句に道案内をさせようとしているのだから。
「何で俺が道案内してやらなきゃなんねぇんだよッ!!」
「……わかった。私一人で行く。でもその前に教えて」
「あぁ?」
「何で私を殺さなかったの?」
最初は殺そうとしていたはずなのに、何故か殺すのを辞めた男の行動が立花にはわからなかった。
そしてその答えは難しいものではなく簡単なもので、ただ、立花が死を恐れたりしない人形のようだったからだと男は言う。
普通なら、泣いて叫んで命乞いをするというのに、そんなこと立花は一切しなかった。
「そんなヤツを殺す気になるわけねぇだろうが」
「そっか、わかった。それじゃあね」
あっさりとした返事を返すと、立花は一人エレベーターに乗り上の階へと行く。
だが、やはりこのエレベーターも一階ずつしか停まらないらしく、地下5階で停まってしまい、また上に行く別のエレベーターを探さなければいけない。
「エレベーター、どこにあるんだろう」
先程の男がいた場所とは違い、今度は清潔感のある造りだ。
そんなことを思いながら通路を歩いていると、突然背後から声をかけられ振り返る。
「キミ、見ない顔だね。神父様が新しく連れてきた子かい?」
「神父様?よくわからないけど、私は外に出たいの。上に行くエレベーターはどこ?」
白衣を纏った男は医者のように見え、先程の男よりは安全そうだ。
だが、突然両肩を掴まれたかと思うと、立花の瞳を男はじっと見詰める。
「綺麗な瞳だ……。まるで生きているのに死んでいるようだ」
「あの……」
「ああ、すまない。エレベーターの場所だったね」
男は着いて来てと言い歩き出したため、立花はその後を着いていく。
だがその途中、男は探し物があるんだと突然言いだし、その探し物を見つけるのを手伝ってほしいと言う。
「ごめんなさい。私は先を急いでるの」
「なら、エレベーターの場所は教えてあげられないな」
男の言葉に仕方なく、探し物を手伝うことにしたが、まず何を探せばいいのか教えてもらわなければ探しようがない。
一体何を探しているのか尋ねると、男は笑みを浮かべ、闇を見ている黒い瞳だよとだけ言う。
「それって一体どんな物なの?」
もう一度尋ねてみると、男の手が立花の頬に添えられ、男の瞳が真っ直ぐに立花の瞳を見詰める。
「今、僕を見ているこの瞳だよ」
何故か危険な予感がし、早く先を急がなくてはとその場から逃げ出そうとすると、男の手が立花の腕を掴む。
「どこへ行くんだい?」
「エレベーターを探すの」
「駄目だよ。君は僕の傍に居なきゃ」
「放して」
こんな状況でも冷静な自分はどこか可笑しいのかもしれないが、今はそんなこと関係ない。
兎に角外に出るためには、先を急がなくてはいけないのだ。