バイト前にはあの店へ
名前変更
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【デフォルト名】
笹枝 立花(ささえだ りつ)
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「まさか私も同じ立場になるとは」
そんなことを呟きながらまだ温かいパンケーキを口に運ぶと、一気に疲れが吹き飛ぶような美味しさにパクパクと食べてしまう。
パンケーキに紅茶、相性は抜群だ。
これから疲れた朝にはハムサンドではなくパンケーキと紅茶をポアロで食べてからバイトに行こうと一人頷く。
こうしてお昼をさっと済ませると、透にも休んでもらわなければとカウンターに戻る。
どうやら下準備も終わったらしく、今度は透が休憩に行くのだが、もし注文があっても立花は作ることができないため、注文があったら呼んでくださいねと言い残し透は休憩室に行ってしまう。
だが、それから直ぐにベルが鳴り、いらっしゃいませと笑みを浮かべ扉に視線を向けると、そこには男性一人、女子高生が一人、そして眼鏡をかけた子供の姿があり、立花は3人を席へと案内する。
「ご注文が決まりましたらお声がけくださいませ」
そう言い一度カウンターに戻ろうとすると、今日は梓さんと安室さんはお休みですかと女子高生に声をかけられ、梓さんは急用でお休みで、安室さんは今休憩中なんですと答える。
すると今度は眼鏡の男の子が、お姉さん見たことないけど新人さん、と尋ねてきたため、今日だけ梓の代わりに働いていることを話していると、毛利先生に蘭らんさん、コナンくんも来てくれたんですねと、休憩から戻ってきた透がこちらへとやって来る。
どうやら知り合いらしく話を聞くと、この3人はポアロの上の階にある毛利探偵事務所の人達らしく、男性は眠りの小五郎として有名な毛利 小五郎。
女子高生は小五郎の娘の蘭。
そして最後に、知り合いから預かっている江戸川 コナン。
「んじゃ、俺は珈琲」
「私は紅茶で。コナンくんはオレンジジュースだよね」
「うん」
飲み物なら立花にも用意できるためカウンターに戻り、飲み物を用意すると席に運ぶ。
その間も親しく話している透だが、先程から小五郎のことを先生と呼んでおり不思議に思っていると、コナンが気付き、お姉さんどうかしたのと尋ねてくる。
立花はコナンに疑問に思ったことを話すと、隣に立っている透が口を開いた。
話によると、透は小五郎の弟子という関係らしい。
公安である透が弟子なんて、小五郎はそんなに凄い探偵なのだろうか。
それから3人が帰った後、また少し店が忙しくなったが、日も暮れ始め閉店時間が迫ってきた頃にはすっかり落ち着き、透と立花の二人だけとなった。
「そろそろ片付けを済ませましょうか。笹枝さんはテーブルを拭いてもらえますか」
「はい、わかりました」
今日1日のことを思い出し、何気に楽しかったなと思いながらテーブルを拭く。
そして片付けを終えると、二人着替えを済ませ帰るのだが、帰り際に送っていきますよと透に声をかけられ、お言葉に甘えることにした。
正直楽しかったが、コンビニのバイトより少し長い時間働いたためヘトヘトだ。
その上、いつもより早く起きて出勤したため眠気もある。
ポアロは朝7時から夜の8時までの営業。
朝は開店前に出勤をしなければいけなかったり、夜は夜で閉店作業があるため8時を過ぎる。
普段コンビニのバイトは朝の9時に出勤し、終わるのも夕方5時。
この時間にしたのは朝が苦手ということが理由なのだが、そんな人間が朝早く起きていつもより長い時間働けばこうもなって当然だ。
車の助手席は心地よく、瞼が重くなりついに閉じてしまう。
それからどのくらい寝てしまっていたのか、目を覚ますとすでに車は止まっていた。
「お目覚めですか」
声が聞こえ隣を見れば、そこには透の姿があり、自分は送ってもらっている途中で寝てしまっていたのだと気付く。
すみませんと謝ると、全然大丈夫ですよと笑みを浮かべてくれる。
透だって疲れているはずなのに。
「本当にすみません」
「いいんですよ。それに、気持ち良さそうに眠っている笹枝さんを見ることができましたから」
寝顔を見られたことに恥ずかしくなり、立花は顔を伏せてしまう。
そんな立花の反応を楽しむように透は笑みを浮かべる。
そんな空間から逃げ出すように、立花は透に送ってもらったお礼を伝えると車から降りる。
すると運転席の窓が開き、今日はありがとうございました。明日はお客様として笹枝さんが来るのをお待ちしていますねと言い残し、透は車を走らせた。
透のことは知っているようでなにもしない自分。
3つの顔を持つ透が自分の見せているのは本当の透なのか、そんな事を考えると胸の辺りがモヤモヤする。
きっとこのモヤモヤがなくなることはないだろう。
透には、自分なんかが踏み込んではいけない領域が存在し、何時も会っているのに遠く感じる存在だ。
まるで、間に見えない壁が置かれているように。
でもそれは仕方のないことだ。
それに、立花には関係のないこと。
そう思っていたはずであり、今もそう思っているのに、本当の透を知りたいと思ってしまう自分がいる。
だが、それでもまたいつもの毎日が始まる。
変わることのない、今まで通りの日常が。
《完》