見える者
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笹枝 立花(ささえだ りつ)
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幼い頃に両親を亡くして以来妖怪が見えるようになり、それ故の奇行も原因となり親戚の間をたらい回しにされていた。
だが、そんな毎日の中、父方の遠縁の藤原夫妻に引き取られることになり、今は藤原夫妻の家で落ち着いた生活がおくれている。
勿論、妖怪が見えることは隠してだ。
「夏目くんも色々と苦労してきたんだね。やっぱりこんな話、誰にもできないよね」
貴志の心に黒いモヤがかかるが、そんな貴志の目の前に手が差し出され、足を止め顔を上げると、目の前には手を差し出す立花が立っていた。
すると立花は、今日から私と夏目くんは秘密仲間だね、と笑みを浮かべながら言う。
そんな立花に、自然と貴志の口許が綻ぶ。
「ああ、そうだな」
貴志は立花の手を取ると、照れ臭そうに言う。
笑みを溢したこの時の貴志は、心からの笑みを浮かべており、立花の鼓動は静かに高鳴った。
それからというもの、話す事が多くなった二人は、人に話せない妖怪のこともお互いに話し合い、何か変なモノを見かけたら協力しあった。
「夏目くん、今日は何か見た?」
「ああ。でも、目を合わさないようにしてたから何とかなったよ」
「そっか、ならよかった」
貴志と一緒に帰るのは、あれから毎日のことになり、帰路を歩きながらいつも今日あったことをお互いに話していた。
妖怪が見えるのは二人だけ。
今まで誰にも話せず、小さい頃は気味悪がられていた二人だが、そういったことを気にすることなく話せる友達が出来たことにより、二人で話す時間は何より楽しい時間となった。
それから数日後のこと、立花と貴志は何やら噂になり始めていた。
噂といっても妖怪関連のことではなく、よく一緒にいたり帰りも一緒にいることから、付き合っているのではないかという噂だ。
こういった話をしたがり興味を持つのは普通のことなのかもしれないが、二人はあくまで友達。
妖怪が見える特別な関係といえば特別な関係ではあるが、それは周りが思うような恋などとは違うため否定する。
そしてその日の帰り道。
二人は今回妖怪のことではない、噂になっていることについて話していた。
お互い別々のクラスではあるが、二人今日は噂のことを周りから聞かれており、勿論二人とも否定した。
「やっぱり皆、こういう話は好きなんだね。何でも恋愛に結びつけちゃうというか」
「そうだな。まぁ、特別な関係ではあるんだけどな」
梁らかな笑みを浮かべ言われたものだから、立花の鼓動が高鳴ってしまう。
お互い妖怪の話を気にすることなくできるせいか、貴志は最近笑顔を見せることが多くなっていた。
勿論それは立花も同じなのだが、同じ見える者でも二人は対照的に違う。
立花は普段周りから変に見られないように、何時でも笑顔で明るく振る舞うが、貴志はその逆だ。
笑顔はあまり見せない上に、周りとどこか壁をつくってしまっている。
そんな貴志だからなのか、自分にだけ見せてくれる笑顔が立花は嬉しかった。
そんな事を考えながら歩いていると、貴志が何かを思い出したかのように鞄から何かを取り出す。
それは縦に細長いノートの様なもので、中の紙には全て何かが書かれているが全く読めない。
「祖母の遺品から見付かったものなんだが、よくわからないんだ」
ノートの表紙には友人帳と書かれているが、立花も全くわからずにいると、何処からか声が聞こえ周りを見る。
どうやら貴志にも聞こえたらしく、妖怪ではないかと警戒する。
だが確かに聞こえた。
名を返せと。
すると今度はハッキリと聞こえ、二人が後ろを振り返ると、そこには妖怪の姿があり、二人は近くの神社へと走っていく。
後を追ってくる妖怪は、ずっと名を返せと言っていたが何のことかさっぱりわからず、二人は神社に逃げ込むと妖怪が去るのを待つ。
だが、なかなか妖怪はその場から去ってくれず神社の周りをうろうろとしながら、名を返せと何度も口にしている。
一体あの妖怪が言っている名とは何のことなのかと思っていると、何やらまた別の声が二人に聞こえ視線を向けると、直ぐ近くには小さな祠のようなものがあり、じっと見詰めていると、中から妖怪が飛び出してきた。
まるで獣のような姿のその妖怪は人より遥かに大きく、立花を片手で押さえつけると、友人帳を寄越せと言ってきた。
友人帳、それは、先程貴志から見せてもらい今も立花の手にあるものだが、これは貴志のお婆さんの遺品、渡すわけにはいかず断ると、更に強い力で地面に押さえつけられ声を上げたとき、止めろと叫び突き出した貴志の拳が妖怪に当たる。
するとその妖怪は突然小さくなり、真ん丸の物体へと姿を変えた。
「たぬき?」
「たぬきだよね」
二人でたぬきだと口にすると、その妖怪はたぬきではないと怒り出し、二人はじっとその妖怪を見詰め、猫かと納得する。
真ん丸でまるでたぬきのような猫。
その猫に、友人帳を何故狙ったのか尋ねると、どうやらこの友人帳に書かれていたのは妖怪の名だったらしく、その名の書かれた妖怪を従えることができるらしい。
その話を聞いた貴志は、さっきの名を返せと言っていた妖怪はこの友人帳に名が書かれた妖怪なのではないかと言う。
そして、その猫に名を返す方法はないのか聞くと、教えてやってもいいが友人帳を寄越せと言ってくる。
勿論却下だが、妖怪を従えることができる友人帳。
そんなものを持っていれば、この猫の妖怪のように友人帳を狙う妖怪や、神社の外にいる、名を返してほしい妖怪が現れるかもしれない。
そこで貴志は自分が死んだ後に友人帳を猫の妖怪にあげるというのを条件に、自分の用心棒になることを約束させた。
こうして貴志は更に妖怪に関わるざるを得なくなったわけだが、今まで避けていた妖怪と関わることでもしかしたら何かが変わっていくのかもしれない。
そう立花は一人思っていた。
《完》