3章 ポアロの仕事は思った以上
名前変更
名前変更お話にて使用する、夢主(主人公)のお名前をお書きくださいませ。
【デフォルト名】
倉山 紅那(くらやま くれな)
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しばらく安室さん目当ての女性客で店内は慌ただしかったけど、閉店時間が近づくと流石に人も落ち着いてきた。
今日はこのまま閉店かなと思ったとき、静寂を取り戻しつつあった店内にベルが響く。
やって来たのは、上の階に事務所を構える小五郎さんと蘭ちゃん、コナン君の三人。
私を見た蘭ちゃんに「こちらで働いていたんですね」と声をかけられたので、今日が初出勤だということを話す。
「そうなんですね。あ、自己紹介がまだでしたよね。こっちが父の毛利 小五郎で、私は娘の蘭です」
「私は、倉山 紅那です」
私も自己紹介をすると、小五郎さんは何故か身なりを正して紳士っぽくしている。
普段の姿を知ってるからそんなことする必要もないし、私は美人でも可愛くもない普通の見た目だからそんな風にされると苦笑いを浮かべてしまう。
取り敢えず席に座ってもらうと、安室さんがカウンターから出てきて小五郎さん達の注文を聞き料理を作る。
そしてその出来上がった料理を私は三人の元へ運ぶ。
テーブルに料理を置いていると、いつの間にか私の側に来ていたコナン君に声をかけられ屈むと耳打ちされたのは、トリップについてのこと。
どうやら私が知らない間にコナン君と沖矢さんで調べてくれていたらしい。
だがその結果が残念なもので、トリップした人の情報は見つからず、勿論帰る方法もないというのが今の現状。
その事実にガッカリするかと思ったが、不思議と私は落ち込んでいない。
それはきっと、見つからなかったということよりも、私の話を二人が信じて調べてくれていたということが嬉しかったから。
「沖矢さんともう少し調べてみるから、何かわかったら教えるね」
「ありがとう。ならコナン君にも私の連絡先教えておくね」
私は紙に番号とアドレスを書いて渡す。
しばらくしてコナン君達が帰ると閉店時間になり、扉にかけられた札をOPENからCLOSEDに変える。
閉店後の片付けを終え時計を見ると、時刻は20時30分。
奥でエプロンを外し、外で安室さんにお疲れ様を伝えて帰ろうとすると「送りますよ」と言われ、朝と同じ様にまた安室さんのお世話になってしまった。
「すみません。迎えにまで来ていただいたのに帰りまで」
「気にしないでください。夜道を女性一人で歩くのは危ないですし、まだ道を覚えていないなら尚更、この暗い中を歩いて帰るのは危険ですから」
安室さんは優しい。
だからだろうか。
気付けば甘えてしまっている。
「折角ですしこれから夕食を御一緒にいかがでしょうか? 支払いのことは気にされなくて大丈夫ですので」
「いえ、そこまでしていただくわけには」
「僕が倉山さんと行きたいんです。お付き合いしていただけませんか?」
断りたいところだが、迎えに来てくれたことや帰りも送ってもらっている立場。
こう頼まれてしまうと断りづらく、夕食を一緒にすることでお礼になるのならと思い了承する。
向かった先は、この前みたいなしっかりとした場所ではなくファミレスで少しホッとする。
でもなんだか見たことがある場所だなと思ったら、前に沖矢さんと来たファミレスだ。
駐車場に車を止めて店内に入ると、席へ案内される。
私が頼む物は決まっていたのでメニューボードを見ずにいると、何故か安室さんもメニューボードを見ようとしない。
「選ばれないんですか?」
「ええ、倉山さんはお決まりですか?」
私はこの前と同じ様にドリアを選ぶと、安室さんはドリアを2つ選んだ。
安室さんにドリアが好きなのか尋ねると「倉山さんと同じ物が食べたかったので」と言われ、このやりとりにデジャブを感じてクスリと笑う。
その様子を不思議に思った安室さんにどうしたのか尋ねられ、同じ会話をこの前ここで沖矢さんとしたことを話す。
「彼ともここへ来られていたんですね」
「はい、こちらの世界での新しいスマホはその時沖矢さんが購入してくださったので」
あのときのことを思い出すとつい嬉しくなって頬が緩む。
きっと今の私は幸せオーラ全開なんだろうなと思っていると「紅那」と呼ばれ安室さんを見る。
突然呼ばれた下の名前。
それも、いつも付けられている「さん」もない。
「さん、が下の名前でしたよね」
「は、はい」
付け足すように言われて頷くが、突然呼ばれたから一瞬ドキッとしてしまった。
名前の確認でもしたかったのかもしれないけど、だからって何故そこで区切ったのか。
いくら私が好きなキャラは赤井さんだといっても、こんなイケメンさんに呼び捨てにされたらドキッとしてしまう。
安室さんを見ることができず顔を伏せていると「どうかされましたか?」と尋ねられ「アナタのせいですよ」と言いたくなるのを我慢する。
少しして席に出来上がったドリアが運ばれてくると、私は恥ずかしさを誤魔化すようにドリアを食べた。
その後、夕食を済ませた帰りの車内。
先程の鼓動の高鳴りもすでに落ち着いていた。
「初日から大変でしたね」
「本当にへとへとになりました。でも、今までは誰かが休みのときは二人だったんですよね?」
「そうですね。なので倉山さんが入ってくださって助かりました」
そう言ってもらえると、少しホッとする。
もし今日私がいなければ、休みである梓さんに店長から連絡がいき、出勤になっていたかもしれないようだ。
働くのは自分のためでもあるけど、役に立ててるならよかった。
まだ覚えなくてはいけないことがあるし、覚えてもスムーズに出来るようにならなければいけない。
直ぐに全部とはいかなくても、少しずつ慣れていきたい。
それから車が工藤邸の前に着いたのは、22時過ぎ。
明かりが付いているのが見え、まだ沖矢さんが起きていることがわかる。
こんなに遅くなるなら連絡くらい入れておくべきだったと今更思う。
「明日は今日のように忙しくないと思いますから、メニューボードのレシピを出来るだけお教えしますね」
「はい、よろしくお願いします。今日はありがとうございました」
ペコリと頭を下げ「おやすみなさい」を口にして車から降りたとき、工藤邸の中から沖矢さんが出て来るのが見えた。
私の視線の先を見た安室さんも車から降りると、二人は対面する。
「帰りが遅いので道に迷われたのではないかと心配していたのですが、アナタと一緒でしたか。彼女を送ってくださってありがとうございます」
「いえ、僕はただ、彼女ともう少し一緒にいたいと思っただけですから」
安室さんのその理由は初耳だ。
女性の夜道は危険とか、夕飯を一緒に食べたいとは言われたけど、それはつまり私と一緒にいたかったからということだったんだろうか。
でも、そんなことをしてなんの意味があるんだろう。
私と一緒にいることが、公安の仕事に関係があるとは思えない。
そもそも安室さんは公安警察で、黒の組織に潜入するカモフラージュの一つとして探偵まで始めてトリプルフェイスになった。
つまり全ては公安の仕事のために必要なこと。
私と一緒にいたいというのが、こうして沖矢さんとの接触をするためだとしたら、私のせいで沖矢さんに迷惑をかけてしまうことになる。
なんとかしなければと思い慌てて二人の前に出ると、沖矢さんに連絡をしなかったことを先ず謝罪し、そのまま伸ばした手で沖矢さんの腕を掴み工藤邸の中へ向かう。
その途中振り返り「気をつけてお帰りくださいね。おやすみなさい」と安室さんに向け言うと、二人工藤邸の中に消える。
何とか引き離すことが出来てホッとしたとき、私の手が沖矢さんの腕を掴んでいたことを意識してしまい慌てて放す。
「すみません!」
「いえ。正体に気づかれないように、私と彼を引き離してくれたのでしょう」
流石沖矢さん、お見通しのようだ。
でも慌ててあんなことをしてしまったから、逆に安室さんに怪しまれたかもしれないと反省していると「それよりも」と言われ顔を上げる。
私の顔横に手を付くという優しい壁ドンをされ、沖矢さんの顔が近づけられた。
一体この状況はどういうことなのか、胸の鼓動が高鳴り思考が停止してしまう。