1章 トリップしたらすること
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倉山 紅那(くらやま くれな)
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この日私は、名探偵コナンの漫画を手に、一人公園のベンチに座っていた。
キャラの中でも赤井さんが好きな私は、赤井さんや沖矢さんの登場する巻を読んでは一人ときめく。
もう何回読んだからわからない本を閉じると、瞼を閉じ考える。
もし名探偵コナンの世界に転生かトリップでもできたら、私は真っ先に彼に会いに行きこう伝えるだろう。
「赤井 秀一さん、私は貴方が好きです」
つい声に出してしまったけど、この公園は基本、今の時間は誰もいないから問題ない。
でも、瞼を閉じたまま立ち上がって言うなんて、誰にも見られてないとはいえ恥ずかしい。
なんて考えながら瞼を開くと、私の目の前には男性の姿。
それも、沖矢さんにそっくりで、彼は私を見詰めたまま固まっている。
もしかしなくても今の言葉を聞かれたのだろう。
恥ずかしさでその場から去りたくなり、本を鞄にしまうと早足で公園を去った。
いつもこの時間、学生は学校で社会人は仕事なのに、何故こういうときに限って人がいるのか。
それも、顔や髪型、服装まで、コスプレかってくらい完成度の高い沖矢さん似の人がいるなんて、あんな言葉さえ言っていなければ、チラチラ見て幸せを噛みしめていたかった。
なんて思いながら歩いていたら、車や人通りがある場所まで来てしまった。
そして私は驚く。
何故なら、全く見覚えのない場所にいたから。
いくらあの場から逃げたかったとはいえ、知らないところまで来るほどの距離を移動できるはずがない。
そんなに歩いてないから、近くにその公園はあるはず。
そこまで戻れれば帰るのなんて簡単のはずだったんだけど、自分が来た道すらすでにわからなくなっていてどっちに進めばいいかすらわからない。
26にもなってまさかの迷子。
なんて絶望している場合ではない。
交番、もしくは歩いている人に声をかけて道を聞こう。
人に声をかけて迷子なんて知られるのは恥ずかしいので、適当に歩いて交番を探すことにした。
取り敢えず道路に沿って歩いていくと、なにやらあってはいけないものが視界に入る。
まさかそんなはずない。
一度大きく深呼吸して、再度視線を前へ。
「毛利、探偵事務所。下は……ポアロ。はははっ」
乾いた笑いが口から出る。
こんな非現実的な状況を突きつけられたら笑いたくもなって当然。
まさか知らない間に死んで転生はないだろうから、これはトリップ。
だが、自分の状況がわかったところでどうしようもない。
この世界での私の居場所なんて神様が用意してくれてない限りないだろうし、こういうとき神様の声が聞こえたりメインキャラ達に遭遇するものじゃないんだろうか。
何かこの世界に関するものがないかと自分の持っている鞄を漁り、取り出したスマホの電源を入れると、何故かデータは全て消えていて初期状態。
他は、公園に行く前に入れたもの以外何もない。
初期状態のスマホに本、ハンカチ、ティッシュ、財布に家の鍵。
まるで無装備でゲームの中に放り込まれたような気分。
そこで私が取るべき行動は決まっている。
ここが名探偵コナンの世界なら、よくあるトリップの定番としてキャラ達に接触するということ。
キャラ達が接触してこないなら自分から行くしかない。
こういうのは基本、キャラ達と関わっていくうちに元の世界に帰れたり話が進んだりするものだから。
少なくても私は、すでにこの世界の登場人物の一人になっている。
ここは下手に隠したりせず、全てを話して協力してもらうのが一番。
信じてもらえるかは別だが、私の鞄の中には運良く名探偵コナンの漫画が一冊入っているから、それを見せれば、私の言葉も信じてもらえるかもしれない。
そうと決まれば最初に会う人物は決まっている。
階段を上り扉をノックすると「はーい」という聞き慣れた声が中から聞こえ、戸が開かれる。
「お客さんですか? すみません。今父は出かけていて、直ぐに戻ると思うので中で——」
「あ、えっと、違うんです。こちらにいるコナン君に用がありまして」
本物の蘭ちゃんを前に緊張してしまったが、この世界の主人公であるコナン君に会えばきっと何とかなるはず。
「コナン君ならお友達と一緒にポアロに行くって言ってましたから、今も多分いると思います」
「わかりました。ありがとうございます」
ポアロの入り口とは反対方向から来たから気づかなかった。
友達とってことは、少年探偵団の皆といるのだろう。
私は蘭ちゃんにお礼を伝えると、1階にあるポアロへと行く。
ガラス越しに見えるのはコナン君と少年探偵団。
そして、何やら楽しげにコナン君達と話している安室さんの姿。
今の私の状況を一番伝えて協力してもらいたいのはコナン君だけど、安室さんにも協力してもらえたらそれはそれで有り難い。
なるべく手短に説明したいところだが、今行けば少年探偵団の皆やカウンターにいる梓さんにも話を聞かれて面倒になる。
だからといって今話さなければ、今日私はどうすればいいのかわからない。
「姉ちゃんさっきから何してんだ?」
悩んでいると、突然声がかけられ視線を向ける。
そこには、元太君の姿。
それに、歩美ちゃん、光彦君、コナン君まで外に出てきていた。
ガラス越しに店の方を向きながら悩んでいたから、気になっても無理はない。
これはもう考える間もなく話すなら今だ。
コナン君に話があると言って二人きりにしてもらおうとしたとき、店の中から安室さんまで出てきて「何やらこちらのお店が気になっているようですから、よろしければ中に入られませんか」とさり気なく営業され、子供達に押される形で中へと連れて行かれた。
そこからは少年探偵団の質問攻め。
これではコナン君に話すこともできず、取り敢えず店に入ったのだから注文をと思いオレンジジュースを頼むと「オレンジジュースなんて子供みてーだな」と元太くんが一言。
「別に大人がオレンジジュースを頼んでもおかしくないですよ」
「そうだよ。歩美もオレンジジュース好きだもん」
「そうね。おかしいっていうなら、あんなところで何故立ち止まっていたのか、じゃないかしら」
他の子供達と違ってそこを気にするあたり、流石哀ちゃんと言うべきか。
でも、できれば今はその話に持っていかれたくない。
哀ちゃんなら知られても問題ないが、知られると面倒になりそうな人物がここには多すぎる。
なのに、その話に持っていこうとするであろう人物がオレンジジュース片手に近づいてきた。