6章 謎の女性は積極的です
名前変更
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倉山 紅那(くらやま くれな)
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私は部屋に行くと溜息を吐く。
結局プレゼントを渡すタイミングが掴めなかったけど、一緒に暮らしてるんだから渡すこといくらいつでもできる。
机の上に2つの紙袋を置くと、私は夕飯を作りにリビングへ降りていく。
するとキッチンには沖矢さんと小川さんがいて二人で料理をしていた。
「今夕飯を作っていますので少し待っていてくださいね」
「あ、なら私も何か手伝います」
「私が手伝ってるから大丈夫でーす。倉山さんでしたっけ? 座って待っててくださいねー」
私は小さく「わかりました」と返事をして椅子に座る。
何もせずにこうしていると二人の会話が聞こえてきて、また胸の辺りがもやもや。
やっぱり小川さんは沖矢さんのことが好きなんだろうか。
ずっと距離は近いし、今だってキッチンで楽しげに話してる。
私も赤井さんはキャラの中で一番好きだったから、同じキャラ好きな人がいると元の世界では喜んでいた。
なのに、私と沖矢さんの時間を邪魔されている気持ちになってしまうなんて私は変だ。
少しして出来上がったのは、煮物とサラダ。
目の前に置かれた料理より、目の前で二人が並んで座っていることが気になってしまう。
箸を進めるが、気になって味なんてわからなかった。
食べ終えた食器を片付けようとする私に沖矢さんが「折角のお休みなんですからゆっくりしていてください」と言ってくれたけど、私は明日も休みだし、それに3人分の食器を洗うのは大変なはず。
せめて拭くだけでも手伝おうとした私の言葉を遮り「沖矢さんがやるなら私も手伝いまーす」と小川さんがキッチンへ行く。
私のする事はなくなり、楽しげに話したりベッタリしている二人を見ていられなくなった私は、先にお風呂に入らせてもらうことを伝えると部屋から着替えとタオルを持ってお風呂場へ向かう。
お湯に浸かりながら思い出すのは二人のこと。
今日が初対面の二人なのに、まるで打ち解けているように見えた。
それに小川さんは最初にこの世界に来た私なんかより落ち着いていて、私と同い年とは思えないくらいに可愛くてファッションセンスもあって、何よりフレンドリーに話せる人。
私なんて最初はどうしたらいいかわからなかったし、キャラ達を前にしたときなんてドキドキしてて、怪しまれないようにするので精一杯だった。
沖矢さんは小川さんみたいな積極的な人のが好きなんだろうか。
そんな考えを頭から振り払う。
一体私は何を考えているのか。
私が好きなのは赤井さんというキャラであり、恋愛とかそういう話ではない。
この世界の人達は名探偵コナンのキャラ。
キャラに本気で恋なんて考えたことすらない。
そんなことを考えていたら長湯をしてしまい、お風呂から出た私はリビングをそっと覗く。
沖矢さんだけならプレゼントが渡せるかもしれないと思ってたんだけど、そこには二人の姿。
食器を片付けたあとも小川さんは沖矢さんの腕に絡みついていて、私はその光景に目を逸らすと部屋に戻った。
プレゼントは明日渡せばいいと思いながら、ベッドに横になると瞼を閉じる。
このもやもやとした気持ちが明日にはなくなることを期待して眠りにつく。
翌朝、朝食を作っていると2階から降りてきたのは小川さん。
二人きりになったのは初めてで、何を話したらいいのかわからなくて取り敢えず挨拶をする。
「倉山さんって、沖矢さんのこと好きなの?」
突然の言葉に手が止まる。
好きというのはキャラとしてだろうか、それとも恋愛として。
どちらかはわからないけど、答えを待ってるみたいだからそのままの気持ちを言葉にする。
名探偵コナンのキャラで赤井さんが好きだったこと。
でもそれは恋愛とかではなく、あくまでキャラとしてということを。
「小川さんも沖矢さんが好きだったりとかですか?」
「私はイケメンは皆好きだし、折角トリップしたんだから逆ハーとか最高でしょ。だから倉山さんが邪魔しない人で助かるー」
考え方は人それぞれだし、小川さんみたいに思う人もいるのはわかる。
でも、何だかムカムカしてしまう。
それってつまり、イケメンにちやほやされたいだけってことだから。
好きなキャラを、そんな風に扱われる事は許せないけど、恋をするのはキャラ達。
私が何かを言うのは違う。
しばらくして沖矢さんがダイニングに降りてくると、すかさず小川さんは沖矢さんに近づき挨拶をする。
朝食の時も、私の前で二人並んで食べている。
その光景が嫌だと思ってしまうのはきっと、好きなキャラが小川さんを好きになってしまったらって考えてしまうから。
恋愛は自由だから何も言えない。
もし私が沖矢さんに恋をしていたなら、少しは言える理由になったかもしれないけど、私のキャラを思う気持ちは恋愛とは違う。
「倉山さんは今日、何かご予定はありますか?」
「いえ、とくには」
「でしたら今日、一緒に阿笠さんのお宅に来ていただけませんか?」
沖矢さんからのお誘い、断る理由などなく即答で頷く。
「沖矢さんが行くなら私も行きたいですー」
「では3人で行きましょうか」
何となく予想はしてたけど小川さんも来ることになり、朝食を済ませてしばらくした後阿笠邸に向かう。
そこには少年探偵団の皆もいて、小川さんに気づいた皆は誰なのか尋ねてきた。
すると小川さんはニコリと笑みを浮かべ沖矢さんの腕に抱きつくと、恋人だと言う。
「昴の兄ちゃんの彼女はこっちの姉ちゃんじゃなかったのかよ」
「もしかして二股ですか?」
「えー! 紅那お姉さんかわいそう」
子供達がムッとした視線を沖矢さんに向けていると「彼女の冗談ですよ」と言いその場は収まった。
事情を知らない小川さんは私を睨んでいたけど、子供達に一緒に遊ぼうと引っ張られて私は中へと連れて行かれたので、とくに聞かれたりはしなかった。
後から何か言われるんだろうなと思うと溜息が出そうになるけど。
小川さんは逆ハーを目指してるわけだから、私みたいなのは邪魔者でしかないはず。
「紅那お姉さんと一緒にゲームしたかったんだ」
「昨日は一緒に遊べませんでしたからね」
「だから昨日昴の兄ちゃんに、姉ちゃんを連れてきてくれって頼んだぜ」
今日沖矢さんが私を阿笠邸に誘った理由がわかったところで、皆と交代しながらゲームをする。
その間、コナン君と哀ちゃんは参加せずに見ているだけ。
途中で歩美ちゃんが小川さんを誘いに行ったけど「私は大丈夫ー」と断られていた。
子供達よりイケメンといった感じで、沖矢さんやコナン君にベタベタとしている。
コナン君は子供だけど、実際は高校生探偵の工藤 新一。
イケメンの逆ハーを狙う小川さんにとってはコナン君もターゲートなんだろう。
少し向こうの様子が気になるけど、今は誘ってくれた子供達と遊ぶのを楽しむ。
ゲームは好きで小さい頃にやってたけど、20代になってからはなかなかやる機会もなくなって今や子供達に本気で負けてしまうほど弱くなっていた。