4章 長い1日
名前変更
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【デフォルト名】
倉山 紅那(くらやま くれな)
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「倉山さん大丈夫?」
「うん。でも、なんでコナン君がここに……?」
警察署で事情聴取を受ける為にパトカーに乗ると、一緒に乗ったコナン君が詳しい事を話してくれた。
私が犯人に連れて行かれたあと、沖矢さんは私のもう1つのスマホを鞄から取り出し警察に電話をした。
どうやら私のもう1つのスマホが鞄にあることに気づいていたらしい。
スマホで連絡したのは、警察とコナン君。
旧と新両方に教えてもらった皆の連絡先を登録しておいたのは正解だった。
なかなか鞄に近付ける隙がないまま人質にされたから意味がなかったなと思ったけど、スマホの存在に沖矢さんが気づいてくれていたことで役に立っていたようだ。
その後、直ぐにレストランに到着したコナン君は、発信機で私のいる場所を確認した。
「ちょっと待って。発信機って?」
「えっと、沖矢さんに渡しておいたんだけど、犯人達がレストランに入ってきたときに万が一を考えて倉山さんのドレスにつけたみたいなんだ」
まさか沖矢さんが発信機を持ち歩いていたとは知らなかったけど、そのお陰で私の位置がわかって助かった。
でも一つ疑問が残る。
私はあの時俯いていたから見てないけど、確かに発砲音が聞こえた。
なのになぜ私は無傷なのか。
「それは赤井さんだよ。人目につかないように隠れて、犯人の銃に弾を当てて弾き飛ばしたんだ」
「え、じゃあ赤井さんは今どこに?」
「警察に銃を所持してるのを見られたら危ないからね。もうあの場所からは離れたと思うよ」
あの時私を助けてくれたのは赤井さんだと知って、私は一気に涙が溢れだした。
その様子に驚いたコナン君がオロオロしてたけど、私の涙は止まらない。
あの時、本当に私は死んでもいいと思っていた。
なのに、今は死にたくないと思う。
皆の迷惑になることはわかってるけど私は皆と離れたくなくて、こんなにもこの世界を、キャラを、私は好きになっていたんだと思い知る。
その後警察署で事情聴取を受けたあと、私とコナン君を高木刑事が送ってくれることになったんだけど、外に出たら何故か沖矢さんがいた。
多分気付かれないようにあとをついてきていたんだろう。
高木刑事と別れ、私は助手席、コナン君は後部座席に乗り沖矢さんの車で送ってもらう。
「今日はありがとうございました」
「いえ、倉山さんが無事でよかったです」
「赤井さん凄く心配してて、ボクがレストランに着いた時なんて――」
コナン君の言葉を遮るように、沖矢さんの片目が開眼して「ボウヤ」と一言。
その少しの殺気にコナン君はあははと苦笑いを浮かべる。
「沖矢さんありがとう。倉山さんもまたね」
コナン君を探偵事務所まで送ると、車内には二人。
「君はあの時死んでもいいと思っていたのか」
走る車の中で不意に言われた言葉は赤井さんの口調。
私は誤魔化すように、なんのことかわからないといった様子でいると、突然車は道路に横付けされた。
横を見ると沖矢さんは両目を開眼させ、私をジッと見ている。
その瞳はまるで、何もかも見透かしているみたいに思えて、私は観念してあの時何を思ったのかを話す。
皆の秘密を知っている私は邪魔でしかないことや、私がいなくなれば誰も危険に晒さなくて済むこと。
あの時は本当にそう思ってた。
でも今は違う。
コナン君と赤井さんに助けられて、自分は生きているんだと思ったときに溢れた涙は怖さじゃなく、皆といたいという気持ちが私の中に確かにあったから。
「私の存在が、沖矢さんやコナン君にとって厄介なことはわかっています。それでも私は皆さんの側にいたい。側にいることを、許していただけますか……?」
私が生きている限り情報が漏れない為にも、沖矢さんは私を側に置くしかないことはわかってる。
でも私は、自分の意志で皆といたいと伝えたかった。
返事はYESだとわかってる。
内心では厄介な存在だと思われていても構わない。
ただ私は聞きたい。
側にいることを許される言葉を。
「君の言う通り厄介なようだ。大きな間違いをしているんだからな」
「間違い?」
「君から情報が組織に知られることを避ける為だけに近くに置いているわけじゃない。君が我々と重要な秘密を共有する仲間だからだ。そして俺にとっては……」
言葉の続きを口にすることはないまま、再び車が走り出す。
何を言おうとしたのかわからないけど、思いもしなかった言葉が嬉しくて自然と口元に笑みが浮かぶ。
私はこの世界のキャラにとって邪魔でしかないと思っていた。
側に置くのも自分達の情報が知られないためで、それ以上の理由がなくても構わないと。
ただ側にいることを認めてもらえるだけで十分だったから。
でも、その考えは間違っていた。
私は沖矢さん達に仲間だと思ってもらえていたのに一人でマイナスに考えて、そのうえ自分が死んだ方が皆にとって一番いいんだと勝手に思い込んでいた。
私は無力だけど、秘密を共有する仲間として彼等とこれからも一緒にいたい。
きっと私がこの世界に来たことにも意味があるんだと思いたいから。
工藤邸に帰ったあとは、先にお風呂に入るように言われ脱衣所に向かう。
ドレスを脱ぐと黒く汚れているのがよくわかる。
運良く破れたりはしていないみたいだけど、この汚れは綺麗に落ちないかもしれない。
沖矢さんからのプレゼント、少しでも綺麗になるのなら明日クリーニングに出しに行こう。
私は汚れた体をシャワーで洗い流しながら、今日一日の出来事を思い出す。
ポアロに向かう途中ジンに出会ったり。
レストランに行ったらまさかの強盗、それも自分が人質になるなんてこの世界じゃなければ早々ないことだ。
でも嫌なことばかりじゃなく、沖矢さんとコナン君に強盗犯から助けてもらって、自分がどれだけ皆のことを好きか知るきっかけになり、そして教えられた。
私は沖矢さんとコナン君の仲間であることを。
その言葉を聞いたとき思った。
たとえ無力だとしても、私にできる事をしたいと。
邪魔にだけは絶対になりたくないから、この先黒の組織の人と会うことがあっても今度は取り乱したりしないと強く思った。
短いようで濃厚だった時間は思い出すと長く感じる。
お風呂から出た私は自室へ行き、持ってきたドレスを紙袋に入れた。
前に安室さんとショッピングモールに行ったときに、洋服店でレジの人が服を入れてくれた紙袋。
何かの役に立つかなと思いとっておいたけど、まさかこんなに早く使うことになるとは。
紙袋を机に置くと、鞄から新と旧、両方のスマホを取り出す。
警察署で高木刑事にスマホを貸してもらってから鞄に入れたままだった。
両方のスマホの連絡先を開くと、私は一つの違いを目にして自分の判断はまだまだ甘かったと痛感する。
新と旧で違うことが一つ。
それは、沖矢さんの名前。
新には赤井さんが自ら登録してくれたから赤井秀一。
だけど旧の方には沖矢昴と登録していた。
今回は強盗に取られただけだったけど、もし同じ様な状況で新のスマホを組織に渡していたら、赤井さんが生きていることを知られることになったかもしれない。
スマホが両方取られた場合なら、赤井さんが生きているとわかったとしても旧のスマホで沖矢昴と登録しているから、同一人物なんて疑われる可能性は低い。
赤井さんは私を信じてこの名前で登録してくれたんだから、私はもっと注意しなくてはいけなかった。
できればもう組織の人達には会いたくないけど、私がこの世界に存在する限りきっとまた会う、そんな気がする。
私はスマホを枕元に置きベッドに横になると、もうこんなミスはしないと自分に誓い眠りについた。