4章 長い1日
名前変更
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倉山 紅那(くらやま くれな)
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「お疲れ様です。では行きましょうか」
「はい」
工藤邸に向かう車内では、今日ジンと会ったことを話した。
勿論、泣いたことや安室さんに慰めてもらったことは内緒。
恥ずかしいし関係のないことだから話さなくても問題はない。
ジンとの接触で私が一番気にしていることは、きっと赤井さんも今頭に浮かんでいるはず。
「平然を装ったつもりですが、もしかしたら変に思われたかもしれません」
「そうですね。倉山さんは思っていることが顔に出やすいですし」
自分ではそんなつもり無かったんだけど、沖矢さんにそう思われているということは、もしかしたらジンに違和感を与えてしまったかもしれない。
もし目をつけられて、コナン君や皆の事が知られてしまったらと考えると不安になる。
「そんな顔するな。俺が命に変えても守ってやる」
「赤井さん……」
その声は沖矢さんなのに、その言葉は赤井さんと重なる。
何故ならその言葉は、赤井さんが哀ちゃんに言ったセリフだから。
ついそのシーンが浮かんで彼の名を口にしてしまった。
きっと蘭ちゃんがコナン君と新一が重なって見えるときも、こんな感じだったんだろうなと今ならわかる。
でも私が不安なのは自分の身じゃなくて、皆に危険が及ぶこと。
そんな私の気持ちに気づいていたのか「心配いりませんよ」と沖矢さんの口調に戻して言う。
それ以上の言葉はなく、ただその一言を。
それが赤井さんらしくて何故か安心できる。
長い言葉で語らない、不器用だけど優しい、そんな彼を私は好きになったんだ。
「あれ? こっちって工藤邸とは逆方向じゃ……」
「今日は夕食が作れませんでしたので、一緒に外でディナーでもと思いまして。倉山さんは明日、ポアロの仕事は休みだとうかがったのでゆっくりできますし」
まさかの食事のお誘い。
そして私が明日休みなのは今日沖矢さんに伝えるはずだったのに何処から情報が漏れたのか。
大体コナン君辺りが梓さんか安室さんに聞いて教えたんだろうけど。
しばらく車を走らせ着いた先は、ディナーと呼ぶに相応しいレストラン。
こういった場所なら、前に安室さんからプレゼントされたドレスが合うんだろうけど、今は仕事帰りで持ってるはずもない。
なんか沖矢さんしっかりした服装だなとは思ってたけど、普段着の私では一緒にいる沖矢さんに恥をかかせてしまう。
「あの、やっぱり――」
「こちらをどうぞ」
よくわからないまま差し出された箱を受け取ると、沖矢さんはウエイターを呼び、私は別室に連れて行かれる。
ここまで来るとなんとなくデジャブで予想はできていたけど、箱を開けたらやっぱりドレス。
これは着ろということなんだろう。
着替えて沖矢さんのいる席にいくと「とてもよくお似合いですよ」と言われて恥ずかしくなる。
「あの、このドレスって」
「私からのプレゼントです。少し遅くなりましたが就職祝いとして受け取ってください」
夕食が作れなかったと言っていたけど、まさか最初からこのつもりだったんじゃ、なんて考え過ぎだろうか。
この世界の男性は、こんなにホイホイと女性にドレスをプレゼントしていただろうかと疑問に思いながらもお礼を伝えて受け取る。
好きなキャラからのプレゼント、嬉しくないはずがない。
人生でドレスなんて着たことなかったけど、この世界に来てまさか2回も着ることになるとは。
そんな幸せを噛み締めながら食事をしていたときだった。
女性の悲鳴が聞こえると三人の男が現れて、その内の一人は女性に銃口を突きつけている。
「動くんじゃねえ!! 死にたくなかったらお前らの持ってる財布と宝石を全部ここに出せ」
その場にいた客は言われた通りにテーブルに置くと、犯人達にスマホも取られてしまう。
「ここは彼らの言う通りにしましょう」
沖矢さんの言葉に頷き、私も財布とスマホを差し出す。
でも、私が渡したのは新のスマホだけ。
旧のスマホはまだ鞄の中に入っている。
何とか席まで戻って鞄からスマホを取り出したいのに、犯人達に一箇所に固まるように言われて身動きが取れない。
このレストラン高級そうだし、来ているお客さんは皆さっき高価な宝石を出していた。
きっとそれを狙っての犯行なんだろう。
犯人の一人がお店の電話を床に叩きつけ壊している。
スマホを取り上げた理由と同じで、自分達が逃げる時間を稼ぐために違いない。
「返して!! それは母の形見なの」
「うるせえ!!」
一人の女性が隠し持っていた宝石を必死に守ろうとするが、男に突き飛ばされて床に倒れてしまう。
「こりゃいい宝石だな。高く売れそうだ」
私は男が宝石を見ている隙に女性へと駆け寄り大丈夫か声をかけると、女性は「お母さん……っ」と泣いている。
この女性にとってあの宝石は母親の形見。
宝石の価値をお金でしか測れない強盗にこのまま盗まれていいはずがない。
私が蘭ちゃんの様に強くて、コナン君みたいに色んなことが閃く人間だったら良かったのに。
わかっていたことだけど、私は本当に無力だ。
「すみません。そちらの人質にされている女性ですが、どうやら持病があるようなので私に見させていただけませんか」
顔を上げると、声の主は沖矢さん。
一体何をするつもりなんだろうかと思っていると、自分が医者であると嘘をつき犯人を油断させようとしているみたいだ。
見たところ、銃を持っているのは人質女性といる男一人。
沖矢さんなら男に近付ければ、女性を助けて男から銃を奪い取ることも簡単なはず。
それに女性が死んで客がパニックになれば、逃げ出そうとする人も現れて男達三人ではどうすることもできなくなる。
「いいだろう」
予想通り犯人が沖矢さんに近付いていき銃が下ろされたその瞬間、犯人は沖矢さんにその女性を突き飛ばす。
思いもしない行動に驚いた私の腕を犯人は掴み自分へと引き寄せる。
「あとは無事逃げれれば問題ねーんだよ。今度はアンタに俺達が逃げるまでの人質になってもらうぜ」
私は男に銃を突き付けられ犯人達とレストランを出る。
外には車が止めてあり、その中に乗せられると車が走り出す。
誰かが警察を呼ぶとしても、スマホがないから時間がかかる。
それに、警察が現場に到着しても犯人達が何処に逃げたのかわからなければどうにもならない。
外には人があまりいなかったから、この車の特定も難しいはず。
名探偵コナンの世界に来てから初めての事件。
こんな経験したくもなかったのに、挙句にこれで私は死ぬんだろうか。
でも、その方がいいのかもしれない。
私はこの世界に本当はいない存在で、いても皆を危険に晒すだけ。
何もできないのに皆の秘密だけは知ってる私なんていない方がいいに決まってる。
あれからどのくらい経っただろうか。
車が止まると、私は男達に廃墟となった倉庫の中へ連れて行かれた。
捨てられた私の身体は地面にぶつかりドレスは黒く汚れる。
折角沖矢さんから貰ったプレゼントだったけど、好きなキャラから貰ったプレゼントを纏って死ねるなら、きっとそれは幸せなこと。
俯く私に「運が悪かったな」という男の声と、銃のカチャッという音だけが聞こえる。
そして次に聞こえたのは、大きな銃声だった――。
運が悪かったなと男は言ったが、それは私じゃない。
本当に運が悪いのは、こんな厄介な私と関わってしまったこの世界のキャラ達だから。
「そこまでだよ」
銃で撃たれたはずなのに痛みもなく、不思議に思いながら伏せていた顔を上げ声が聞こえた方を見る。
そこにいたのは、小さな探偵さんと駆け付けてきた警察。