3章 ポアロの仕事は思った以上
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倉山 紅那(くらやま くれな)
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「彼女がお世話になっています。私は大学院生で沖矢 昴といいます」
「彼女! やっぱりそうなんですね」
誤解の連鎖が止まらず溜息が漏れそうになる。
彼女ってそっちの意味じゃないのに、これじゃあ誤解が更に膨らんでしまう。
「では倉山さん、車へ行きましょうか」
沖矢さんは私の手を掴むと強引に車に連れていき、乗るように促す。
誤解を解きたいところだが、あのままいたら安室さんが沖矢さんに探りを入れてきたかもしれない。
取り敢えず今は大人しく車に乗り、梓さんの誤解は明日解くことにする。
工藤邸に着くまでの短い時間の車内で、私は沖矢さんに梓さんが誤解していたであろうことを話す。
「きっと付き合っていると思われたかなと。でも明日には誤解であることを話すので安心してください」
「そのままでいいんじゃないでしょうか」
その言葉に何故か尋ねると、その方がこれから暮らすうえで説明が簡単だかららしい。
確に、トリップしてきたと説明するわけにもいかないから、恋人で一緒に住んでいるという設定なら誰に説明するのも簡単。
でも、少年探偵団や蘭ちゃん達は、沖矢さんが工藤邸にお世話になってることを知ってる。
私と沖矢さんが付き合っているなら、工藤邸で同棲するなどおかしな話だ。
そのことを話すと、沖矢さんは問題ないという。
すでに話しがついていて、私が工藤 有希子さんの知り合いという設定になったとか。
なんだか沖矢さんはいつも私が知らないところで動いている。
トリップについて調べてくれていたのも、コナン君に聞くまで知らなかった。
どうやらコナン君との話しで、これから私をどういう方法で工藤邸に住んでいることにするかという話だでたらしく、そこで思いついたのが私と沖矢さんが恋人関係で同棲をしているという設定。
工藤邸で暮らす理由は、有希子さんと私が知り合いで、二人が恋人関係だと知った有希子さんが、恋人とは一緒に暮らした方が良いと言い出し、二人を一緒に工藤邸に住まわせることにしたというのが全ての設定。
ちなみに有希子さんにはコナン君が連絡をして了解を得たらしい。
「じゃあもしかして、さっきのは全て誤解させるためにわざと……」
「勝手にすみません。でも、ポアロの彼女は狙い通り私達を恋人だと思ってくれたようですね」
設定があれば確かに説明に悩む必要はなくなるけど、沖矢さんはいいんだろうか。
少年探偵団と蘭ちゃんとは会うこともあるだろうし、きっと私とのことを聞かれたりするはず。
私の恋人役をやらせるのはやっぱり申し訳ない。
それに、一緒に住んでいる理由は適当に誤魔化せば何とかなるだろう。
「折角色々考えていただいたのに申し訳ないんですが、私は演技だとしても、沖矢さんと恋人のフリはできません」
「何故ですか? これ以上の方法はないと思いますが」
「迷惑をかけたくないんです。フリだとしても、私なんかの相手を沖矢さんにさせてしまうのが申し訳なくて」
安室さんと梓さんを見ていたからだろうか。
美男美女でお似合いで。
でも私は違う。
可愛いというわけでもなければ美人というわけでもなく、スタイルも普通で平凡な見た目。
でも沖矢さんは、素顔でも、変装をしていても、どちらでもかっこよくて女性を惹き付ける。
そんな人が、私みたいな女の恋人役なんて本当はしたくないに決まってる。
そもそも釣り合わない。
私は演技でも、沖矢さんのことを恋人なんて言えない。
「何故迷惑だと思う。俺はそんな風に思ってはいないんだがな」
伏せていた顔を上げ横を見る。
真っ直ぐ前を向いて運転しているのは沖矢さんで、変声機の電源も切られていないのに今の口調は赤井さんだった。
「そうですよね。そうしない方のが沖矢さんの迷惑になるかもしれませんし、必要なことですよね」
この演技をするのは、沖矢さんにとっても必要なこと。
私のせいで、周りが沖矢さんに私との関係を迫るかもしれない。
なのに私は、自分が沖矢さんと釣り合うかどうか。
沖矢さんが嫌かどうかで判断していた。
そんなことを話していると、工藤邸に着き車が止まる。
シートベルトを外してドアに手をかけたとき、突然肩を掴まれ後ろに引かれると、私の上半身は沖矢さんの逞しい胸板に当たる。
「今日からアナタは私の恋人ですからお忘れないように。それと、あまり自分の価値を下げてはいけませんよ」
「は、い……」
肩から手が離れると「では家の中に入りましょうか」と言われ、二人車から降りる。
その後は会話もなく、私は帰ってすぐにそそくさとお風呂に入り、先程のことを思い出しては顔を熱くさせた。
突然肩を掴まれて引き寄せられたことにも驚いたけど、耳元であんなこと言われたら赤面するに決まってる。
恋人のフリは私にだけ関係があるものではなく、沖矢さんが私のことを人に説明するときにも必要だということはわかった。
でも、耳元で恋人宣言をするなんて、沖矢さんは恥ずかしくないんだろうか。
私なんて今も心臓が煩いくらい高鳴って、顔もずっと熱いのに。
結局落ち着くまでお風呂に入っていたら、普段より長めの入浴になってしまったけど、お陰でサッパリした。
つい好きなキャラ相手に意識してしまったけど、これはお互いのこれからに必要な設定。
本当の恋人になったわけではないんだから、私が意識しすぎているだけ。
それに演技でもなければこんな嬉しいことないんだから、楽しまなきゃ損。
私の変な意識は無くなり、お風呂を出て下に降りていくと何やらいい香りがしてきた。
「今日はゆっくりとお風呂に入られていたんですね。今シチューが出来たところですから、一緒に食べましょう」
「お腹が空いていたので嬉しいです。ありがとうございます」
用意された二人分のお皿にシチューを入れてテーブルに置く。
仕事終わりでお腹が空いていたので、早速「いただきます」と言いパクリと食べた。
「んー、シチュー美味しいです!」
「お口にあってよかったです」
「肉じゃがもそうでしたけど、沖矢さんお料理上手ですよね」
確か沖矢さんは、最初の頃は有希子さんにメイクで沖矢昴の姿にしてもらって、料理も教わっていたはず。
元々色々できるキャラだとは思ってたけど、料理や子供も意外と好きだということがわかって、女性の高感度は上がったはず。
私は元々赤井さんが好きだったから気持ちは変わらないけど、この2つの要素が増えたことで更なる魅力になったんだよね。
と、漫画でのシーンを思い出す。
赤井さんと沖矢さんが登場する巻は、いつも気分ごとに変えて公園に持っていき、ベンチで読んでいたことがなんだか懐かしく感じる。
まだこの世界に来てそんなに長くは経っていないのに。
「食器は私が片付けますので、倉山さんはゆっくり休んでください」
「すみません。ではよろしくお願いします」
今日は沖矢さんの言葉に甘えて、私は自室に行くとベッドに横になる。
明日はマスターと梓さんが出勤で安室さんがお休み。
ようやくマスターに挨拶ができる。
テレビでも登場した回数は少ないけど、人気があるキャラや重要なキャラは自然とピックアップされてしまうから、マスターの登場シーンは必要なかったんだろう。
なんて、名探偵コナンのアニメのことを考えながらその日は眠りについた。