「優しいね」と言ってみた
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リタ
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※リタは人間で問題児クラスの生徒。
■鈴木 入間
驚いた表情を浮かべ、頬をほんのり色づかせながら「ありがとう」と言葉が返ってくる。
入間くんは人間でも優しい人だと思ったから「優しいね」って言っただけなのに。
私の知ってる人は皆冷たかった。
家族、友達と呼べるのかもわからない人達に教師、皆が私に冷たい。
それが当たり前で、魔界に来てからも何も変わらない。
ただ人間界から魔界に変わっただけだと思っていた。
実際悪魔は冷たかったから。
なのに、そんな私にただ一人だけお日様のような暖かさを向けてくれる人がいた。
助けなんて求めてないのに、彼はいつも手を差し伸べてくれる。
私だけではなく他の悪魔にも。
こんなにお人好しな人間を私は知らない。
「僕よりリタのが優しいと思うよ」
ニコリと笑みを浮かべながら言う言葉は真っ直ぐ私の胸に届く。
嘘のない言葉。
だからこそ私は驚いた。
そんな言葉言われたことがあっただろうか。
無表情の私が周りから言われるのは「冷たい」や「気持ち悪い」だ。
私からしてみれば、嘘偽りの言葉に笑顔を向けることのが理解できないし気持ちが悪い。
でも不思議。
彼の言葉は真っ直ぐで私の胸にストンと落ちてくる。
だからだろう。
私が彼の前でだけ表情を変えることが出来るのは。
「ありがとう」
笑みを浮かべる私を見た入間くんが固まる。
たまに表情を緩ませるといつもこの反応をするから面白い。
彼と出会えたことは私にとって大きな変化を与えてくれた。
■アスモデウス・アリス
普段入間くんと二人で話す私を敵対視してるアスモデウスが、今日はどうしたのか私を褒めてくれたうえに普段と違い親切。
そんな彼を見て「なんか今日、優しいね」なんて口にしたら「怪力魔獣に優しくするわけがないだろう」なんて返ってきた。
勿論『怪力魔獣』というのは私のこと。
人間の私に魔力はないから魔術は使えないんだけど、何故か魔界に来てから馬鹿力になった。
大型魔獣を持ち上げて投げ飛ばせるくらいに。
魔界で過ごすうえで力は自分の身を守るために必要ではあるけど、周りの女悪魔を見てると自分が女らしくない事を実感して嫌になった。
だから私はこの馬鹿力を極力使わないようにしてるけど、皆の前で何度か使ってるからクラスメイトは知っていてアスモデウスも例外じゃない。
気づけば頬に涙が伝っていた。
こいつの前で泣きたくなんてないのに涙が溢れる。
怪力女が泣いたところで可愛くなんてないし、こんなことで泣くなんて更に馬鹿にされるだけだってわかってるのに、ハッキリ突きつけられた言葉に涙が止まらない。
私は普通の人間の女で悪魔より遥かに弱い。
怪力だからって悪魔や魔獣が怖くないわけじゃない。
溢れ続ける涙を必死に拭う私の前にハンカチが差し出された。
「つかえ。それと……すまなかった」
顔はこちらに向けず言われた謝罪の言葉。
泣いているのを見ないようにしてくれてるんだろうか。
「ありがとう」
お礼を伝えて受け取ったハンカチで涙を拭き取ると「女の涙は武器というが本当のようだな」と呟かれ首を傾げる。
アスモデウスは私の手を掴み「イルマ様が待っている。急ぐぞ」と言って歩き出す。
前を歩く背、揺れるピンクの髪。
視線を下に向ければ私の腕を掴むアスモデウスの手。
私に触れるアスモデウスの手はいつも優しくて不思議。
他の悪魔は私が怪力だから強く掴んでも大丈夫と思っているのか加減なんてしないのに、アスモデウスはいつも私に優しく触れる。
今も掴まれている腕は痛くなくて、腕を振っただけで離れてしまいそう。
まるで女の子扱いされているみたいで頬が緩む。
アスモデウスは慕ってる入間くん以外に興味なんてないから、この優しさに深い意味なんてないってわかってる。
それでも嬉しくて、こういうところが私がアスモデウスを嫌いになれない理由なんだと思う。
普段冷たいくせにたまに優しくて。
嫌いと思った回数と同じくらい好きと思った。
その優しさが入間くんに向けるものとも他の悪魔に向けるものとも違うように思えるのは、そうあったらと思う自分の願望。