魔術のような恋をした
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翌日。
考えとは裏腹に、私はカルエゴ先生を避け続けていた。
前から来たら慌てて隠れたり、カルエゴ先生への用事は他の先生にお願いしたり。
なんでこんなに意識してるのかわからなくて悩んでいたとき、偶然イルマくんと話すバラム先生を見かけ立ち止まる。
二人の会話が終わり、バラム先生が一人になったのを確認すると、近づき声をかけた。
相談したいことがあると話せば、準備室に招き魔茶を淹れてくれる。
「相談って、カルエゴくんのことですよね」
「ぷはっ! な、なんでわかったんですか!?」
魔茶を飲んでいて急に当てられたものだから、少し吹いてしまった。
でも、なんでわかったんだろう。
もしかしたら告白の話をカルエゴ先生から聞いたのかも。
元同級生で仲がいい二人なら有り得なくない。
恋の話なんてしなさそうに思えたけど、カルエゴ先生もそういう話をしたりするんだ。
そんな考えをまるで読まれたかのように「カルエゴくんの様子がおかしかったので」と言われ、それと告白とどう結びつくのか首を傾げる。
バラム先生の話によると、カルエゴ先生の様子が変わるのは私関連のことが多いらしく、今回私がバラム先生に相談をしに来たことと、先程イルマくんから聞いた私とカルエゴ先生がウォルターパークに行ったという話を合わせて考えた結果、カルエゴ先生が告白をしたんだろうと推測したようだ。
イルマくんから聞いたって事で、何となく私も昨日の事がわかってきた。
きっとオペラさんは、カルエゴ先生と私をくっつけようと策略したんだ。
それなら昨日の件も納得できる。
「それで、リタ先生は何に悩んでるんですか」
「仰っしゃる通り、私は告白をされましたがお断りしたんです。でも、それからずっと意識してしまって」
カルエゴ先生と仲がいいバラム先生だからこそ相談ができる。
初対面のときは、見た目の怖さから少し警戒していたけど、話してみて優しい悪魔だと知ってからは、見掛ければ声をかけたり、私からバラム先生のいる準備室へ行き話をするまでに打ち解けた。
「告白をされて意識をしだすのはよくある事ですよ」
「そうなんですか……」
生き物について詳しいだけある。
悪魔の恋についてもバラム先生は知識があるみたい。
今の感情は一時的なもので、予期せぬことに動揺してるだけだから、自然と落ち着くだろうと話してくれる。
それを聞いて少し安心した。
このまま避け続けるのは流石に失礼だし、他の先生方にも迷惑をかけてしまうから。
私はバラム先生にお礼を伝えると準備室を出た。
暫くはこの感情が落ち着くまで時間はかかりそうだけど、数日もすれば前と同じ様に接することができるだろう。
なんて考えはどうやら甘かったらしく、あれから一週間経った今もカルエゴ先生を避け続けていた。
「バラム先生、話が違うじゃないですか!」
「えっと、この前は言わなかったんですが。告白されたことで意識をしだして、好きになる事も稀にあるんですよ」
バラム先生の事だから、私が更に混乱しないように言わなかったんだろうけど、それでもこの感情が消えないということは、私はカルエゴ先生を好きになっているということなんだろうか。
だとしたら、私は一体どうしたらいいんだろう。
このままカルエゴ先生への用事を他の先生に頼み続けるわけにもいかない。
恋なんて今までしたことがなかったからわからなかったけど、こんなにも相手のことで振り回されてしまうだなんて。
それに、告白されたから好きになるなんて単純すぎる。
今まで苦手だと思っていたくらいなのに、それが恋をした瞬間、カルエゴ先生の全てが輝いて見えてしまう。
「私、魔術にでもかかったんでしょうか」
「一度振った相手ならそう思いたくなるかもしれないけど、それは紛れもない恋ですよ」
他の悪魔から恋だと言われると、現実を突きつけられた感覚だ。
同じ教師で同じクラスの担任と副担任。
避け続けることなんてできるはずがない。
普通好きになったら告白なんだろうけど、私が一度振った相手。
カルエゴ先生の方がすでに私への気持ちが無くなっていたら、今度は私が振られることになる。
考えただけで胸が苦しくなるけど、あの時先生はどんな思いで告白して、どんな気持ちで私の返事を聞いたんだろう。
表情は何時もと変わらなかったけど、私はカルエゴ先生を傷つけていたんじゃないだろうか。
自分も同じ気持ちになって気づいた。
なのに私だけ怯えて何もしないなんて公平フェアじゃない。
「バラム先生、ありがとうございました」
私は準備室を出るとカルエゴ先生を探した。
最近はずっと避け続けていたのに、いざ探すとなかなか見つからない。
バビルスは広いから全部を探すには時間がかかる。
普通ならカルエゴ先生が居そうな場所を探すんだろうけど、私はカルエゴ先生の事を知らなすぎる。
今までは苦手意識しかなかったのに、もっと知りたいと思ってしまう。
やっぱりこんな気持ちは魔術によってかけられているとしか思えない。
そう思うことでこの気持ちを、別の何かのせいにしてしまう自分が嫌になる。
歩いていたはずなのに、足は何時の間にか走り出し、角で誰かとぶつかる。
勢いがあったせいで倒れると思ったのに、腰に回された手が私の体を引き寄せ支えてくれた。
「カルエゴ先生……」
こんな至近距離で見たのは初めてだ。
やっぱりカルエゴ先生はキラキラ輝いていて、私の潤んだ瞳が視界を歪ませる。
「大丈夫ですか?」
「好きです……。私にこんな事言う資格はないと思いますが、私はカルエゴ先生のことを——」
私が言い終えるより先に「粛に」と言われ、言葉を飲み込む。
やっぱり迷惑に決まってる。
振っておいて今更なんだと思われただろう。
でも、言わずにはいられなかった。
久しぶりに聞く先生の声はどこか優しく感じて、なんであの時告白を断ってしまったんだろうと後悔してしまう。
「ごめんなさい。今のは忘れ——」
「好きです。私のこの気持ちは変わりません。リタ先生の返事を聞かせていただけますか」
カルエゴ先生は狡い。
私の言葉を遮って自分が告白をするなんて。
返事なんてわかってるくせに。
「私も、カルエゴ先生の事が好きです」
腰を支えていた腕は背に上がり、私の体はカルエゴ先生と密着する。
抱きしめられるぬくもりが心地よくて目を閉じれば、溜まっていた涙が大粒の雫となりぽたりと落ちる。
歪んでいた視界が先程よりクリアになり、顔を上げれば優しい笑みを浮かべるカルエゴ先生がいた。
近づく距離に瞼を閉じると唇が重なり、最近あった胸の苦しみが一瞬にして消えていく。
私も先生の背に手を回し、キュッと抱きしめる。
この時間がずっと続けばいいのにと思いながら。