魔術のような恋をした
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リタ
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何故こんな事になったのか。
私は現在カルエゴ先生と二人でウォルターパークにいる。
カルエゴ先生とは、同じ悪魔学校バビルスのクラスを受け持っている。
とはいっても私は副担任で、カルエゴ先生は担任兼教師筆頭も任されるほどの優秀な悪魔。
そんな方と何故こんな状況になったかといえば、事の始まりは昨日に遡る。
通路を歩いているとイルマくんに声をかけられ、オペラさんから預かったという紙を渡された。
イルマくんは、問題児クラスの生徒であり、サリバン理事長の孫。
そんなサリバン理事長のSDがオペラさんなんだけど、そんな彼が私になんの用事だろう。
不思議に思いながら紙を開けば「明日、ウォルターパークへ行きましょう」と書かれていた。
時間と現地集合ということも一緒に記載されているけど、ウォルターパークは、魔界有数の大型レジャー施設。
行くとも言っていないし、オペラさんとは話した事すらないのに突然のお誘い。
断りの手紙を書いてイルマくんに渡してもらおうと思ったけど「拒否は受け付けませんので」と最後の行に書かれており、私に選択肢はなかった。
翌日、紙に書かれた時間にウォルターパークに来てみると、オペラさんではない見覚えのある悪魔の姿が見えた。
相手も私に気づいたらしく「何故リタ先生がこちらに?」と尋ねられたので、私は事情を説明する。
「くっ……余計なことを」
「どうかされましたか?」
眉間の皺が濃くなったのを見て声をかけると、カルエゴ先生は片手で頭を押さえながら「いえ、なんでもありません」と言う。
カルエゴ先生が一人でウォルターパークなんて来ないだろうから誰かと一緒なんだろうけど、どちらの待ち人も来る様子はなく気不味い空気が流れる。
「あの、オペラ先輩なんですが。多分来ないと思います」
「え、何か聞いてるんですか?」
一方的に誘っておいて来ないとは失礼過ぎではないだろうか。
そもそも、何故カルエゴ先生はそんな事を知っているのかと疑問に思う。
「私もオペラ先輩に誘われたんです」
カルエゴ先生までオペラさんに誘われていたとは思わなかったけど、まさかその伝言を伝えるためだけにここにいるんじゃないだろうか。
前にバラム先生から聞いた話だと、オペラさんはバラム先生とカルエゴ先生の先輩だと言っていた。
とはいってもいいように使われていたみたい。
今もその過去があって断れず、私が来るのを待ってくれていたんだろうか。
そう考えるとオペラさんが招いた事とはいえカルエゴ先生に申し訳ない。
「すみません。それを伝える為に態々待っていてくださったんですよね」
「いえ、そういうわけでは……」
「何かお詫びをさせてください」
私はカルエゴ先生の腕を引きウォルターパーク内にあるドリンクを購入し差し出す。
近くのベンチに座り二人ドリンクを飲むが、間が持たない。
同じクラスを受け持つ教師同士とはいえ、正直私はカルエゴ先生の事が少し苦手。
いつも不機嫌そうで笑った顔など見たことがなく、怒っているイメージが強い。
とくに自分が怒られたりしたわけではないけど、そういった光景を見かける事が多くて自然と苦手になっていた。
折角ならお詫びはウォルターパーク内にあるドリンクをと思い勢いのまま中に入ってしまったけど、カルエゴ先生はこういう騒がしいのは苦手そう。
早く飲んで出たほうがよさそうかなと思っていたのに「折角ですし、少し見て回りませんか」なんて言葉がかけられて反応ができなかった。
こういう場所は苦手そうに思えたんだけど、意外とそうではなかったということなんだろうか。
二人だけでなんてどうしたらいいかわからないけど、カルエゴ先生の言うとおり折角だし少しくらい見て回るのもいいかもしれない。
私はカルエゴ先生の言葉に頷くと、まずどこに行くかを話した。
初めて来たけど沢山のアトラクションやお店があり、問題児クラスの皆が来たらきっとはしゃぐんだろうなと想像して口元が緩む。
「あ、あそこのお店、甘々たっぷりパンケーキなんていうのがあるみたいですよ。カルエゴ先生は甘い物って大丈夫ですか?」
私は甘い物が大好きな事を話すと、先生は「食べられます」と言ってたけど、どこか顔が引きつっているように見える。
もしかして無理してるんじゃないかと思ったけど、カルエゴ先生がそんな事をする理由はない。
ただの気のせいだろうと思いお店に入ると、私は二人分のスイーツを注文する。
テラスに運ばれてきた、見るからに糖分たっぷりなパンケーキ。
私は瞳をキラキラと輝かせ、パクリと口に頬張る。
「んー、美味しい! あれ、カルエゴ先生は食べないんですか?」
「いえ、いただきます」
小さく掬い口の中に入れたカルエゴ先生に「美味しいですよね」と尋ねれば頷いてくれたけど、やっぱり違和感を感じる。
顔色も良くないみたいだし、理由はわからないけどやっぱり無理してるんじゃないだろうか。
「何だか食べたりないのでカルエゴ先生のも貰っちゃいますね」
ヒョイッとお皿を取ると私はパクパクとカルエゴ先生の分まで食べて完食した。
気のせいかもしれないけど、もし甘い物が苦手だったらと考えたから。
二人お店の外へ出ると、近くのベンチに座る。
そこで思い切って甘い物が苦手なんじゃないかと尋ねれば、カルエゴ先生は一瞬口を噤むと「はい」と認める。
やっぱりと思うのと同時に、なんで本当の事を言わなかったんだろうと疑問が浮かぶ。
普段私が見ているカルエゴ先生からは考えつかない行動であり、今はプライベート、尚更隠す必要はない。
「何故そんなことを」
「私が貴方のことを好きだからです」
少し躊躇ったあと言われた言葉に、私の思考が停止する。
聞き間違いでなければ「好き」と言われたと思うけど、カルエゴ先生が私のことを好きなんてあるはずがない。
表情もいつもと変わらず眉間に皺を寄せている。
もしこれが本当の告白だったとしたら、こんな平然とした態度でハッキリ言えるだろうか。
それも、眉間に寄せた皺を深めながら。
「もしかして、オペラさんに言うように言われたんですか。だとしたら流石に——」
「違います。私は自分の気持ちをそのまま貴方に伝えただけです」
さっきの言葉がカルエゴ先生の本心からのものだとわかると、みるみる私の顔に熱が集まる。
私はカルエゴ先生をそんな風に見たことはなかったけど、カルエゴ先生は違ったということなんだろうか。
だとしても、好かれるような事をした覚えはない。
「ごめんなさい……」
私に言えるのはこの一言だけだった。
カルエゴ先生は静かに「わかりました」と言い、そこからは気まずくなってしまったので、私から「そろそろ帰りましょうか」と切り出した。
寮に帰ったあと思い出すのはカルエゴ先生からの告白の事ばかり。
断った時点で終わったことなのに、思い出しては顔が熱くなる。
こんな時は、早く眠って気持ちを切り替えようと布団に入り眠りについた。
明日にはきっといつも通りに戻っているだろうと信じて。