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リタ
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♡─ス・キ・魔─♡
入学式が迫っていた頃、突然理事長に入学する生徒の追加を二名頼まれた。
それも、一人は理事長の孫。
きっとあの理事長にそっくりに違いない。
もう一名は他の悪魔の要望らしいが、ついでだからと一緒に頼まれた。
どこの阿呆悪魔かは知らんが、どちらも問題を起こすようなら即処分対象にするだけのことだ。
最初はそんな気持ちでいた。
思った通り、入学早々イルマは問題を立て続けに起こし、あろうことか私を使い魔として召喚した。
契約は一年。
それまで解除不可能となり、私は寝込むほどのショックを受けた。
職場に復帰してみれば、突然使い魔召喚シールで呼び出され、騒がしいのが更に増えていた。
その時一人だけ、唯一大人しい奴がいたのを覚えている。
イルマばかりに気を取られていたが、もう一名注意すべき悪魔がいた事を思い出す。
すると、アイツ等は召喚解除もせずその場から逃げ出し、私は売店員に捕まった。
そんな不愉快な事もあったある日。
問題児クラスの教室にシチロウがやって来た。
生徒の一人が私とシチロウの関係を尋ねてくると、シチロウが元バビルスの同級生だと答える。
何やら不快な考えをしている奴等がいるのを直感で感じ取り、頭を鷲掴みにしたあと、シチロウが何をしに来たのか聞こうとしたが、何故かシチロウの視線は私の後ろにあった。
そのまま私の横を通り過ぎたので振り返れば、笑みを浮かべながら、いつの間にか来ていたもう一人の注意すべき悪魔、リタを持ち上げている。
「シチロウ、そいつを知ってるのか」
「うん。僕の可愛い子供みたいな存在だよ」
その言葉にピクリと眉が上がる。
シチロウに子供がいるどころか、そういった関係の悪魔がいる話は聞いたことがない。
自分の子供だとハッキリ言わないところをみれば、仲の良い生徒が出来た程度なんだろうが、シチロウにそういった関係の生徒ができるのは珍しい。
「あくまで『みたいな存在』ですから」
シチロウの触り癖から逃れたそいつは、私の前にグッと近づき念を押すように言う。
「わかっている。こいつに子供がいて、俺が気づかないわけないからな」
何を必死になっているのか。
その後もいろんな表情を見せたかと思えば考えることを諦めたのか、リタはシチロウにここへ来た理由を尋ねる。
それは私も知りたかった内容だ。
「君の事が心配でつい来ちゃったんだよね」
その言葉にまたも悩むこいつは一体何をそんなに考え込んでいるのか。
大人しい奴だと思ったが、コロコロと変わる表情に心の中でフッと笑う。
「これから授業だ。悪いなシチロウ」
「ううん。僕も突然来たりしてごめんね。じゃあまたね」
シチロウが教室を去ったあと、リタに視線を向ける。
それに気づいたのか目が合ったが、直ぐに逸らして「お前等席につけ」という言葉で騒がしくなった教室内を静める。
再び視線がリタを捉えると、また何かを考えているようだ。
その様子に口元が緩みそうになるのを耐えた。
何故こんなにもこいつのことが気になるのかわからないが、放課後にシチロウから話を聞くことにして授業を始める。
放課後。
シチロウが普段いる準備室を訪れると魔茶を出され、一度飲むと本題に入る。
勿論内容は、シチロウとあいつの関係について。
「君がそんなことを気にするなんて珍しいね」
「問題を起こされたら面倒だからな」
理由はそれだけのはずだったんだ。
だが、シチロウの一言で変わった。
「僕、リタちゃんの事が好きみたいなんだ」
思いもしない返答。
相手は生徒。
シチロウもその事はわかっているはずであり、わかっていながら言っているのだと理解すると頭が痛くなる。
教師と生徒が恋愛など問題しかない。
ここでこいつに釘を差しておく必要がありそうだ。
「やめておけ。相手は生徒だ」
「そうだね。でも、悪魔にとって欲は第一だ」
こいつとの付き合いは長いが、今までに見たことのない真剣な目だ。
確かに悪魔にとって欲は第一。
その欲を満たそうとするのは自由だが、この件に関しては認めることができない。
「欲以前にお前は教師だ」
「そうだね。でも、なんで君はそんなに僕を諦めさせたいの」
理由なんて決まっている。
常に厳粛でなくてはならないからだ。
だが何故、私はこんなに必死になる。
これはシチロウの欲でありこいつの問題。
なのに俺の心に何とも言い難い感情が渦巻く。
「カルエゴくん、もしかして君もリタちゃんのことが好きなの?」
その言葉で、胸の霧が晴れたような感覚になる。
厳粛であるべきだとか、面倒事になりそうだからだと言った言葉は全て都合のいい言い訳でしかなく。
ただ私は誰にも奪われたくなかったんだ。
厳粛であるべきこの私が、まさか生徒一人に振り回されることになるとは。
「どうやらそうらしい。シチロウ、悪いが俺も欲は第一だ」
挑発的な笑みを浮かべ、準備室を出ようと扉を開ければ、そこにリタがいた。
「なっ……! いつからそこに」
驚く俺の腕を掴むと「話があります。来てください」と、返事も聞かず学校の裏庭へと引っ張って行かれる。
「おい、さっきの話を聞いていたのか」
「は、はい!」
やはり聞かれていたようだ。
だが丁度いい。
シチロウに奪われる前に、俺がこいつを奪う。
自分の欲を満たすためにはどんな手段も厭わない。
「あの——」
「聞いたからには覚悟しておけ。生徒が相手だろうと、悪魔は自分の欲が第一だからな」
ニヤリと笑みを浮かべ、俺はその場を後にした。
ただ興味を惹かれた対象に過ぎなかったはずが、まさかこうもあっさり恋なんて感情に変わるとは。
厳粛を絶対としていた俺がこのザマでは示しがつかんが、悪魔としての示しならつけられる。
ここからが本当の勝負だ。
粛々とな。
《完》