また皆で笑いたい
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リタ
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「凄いこと言いよるなぁ。ほんまとんでもない野心家や。君と僕は……ほんまにお揃いなんやな」
僕が彼女に惹かれたんは、単に位階が同じやからやと思うとったけど、それは違うかったんやな。
君は僕と同じで魔力が少のうて、そして同じ様に野心家や。
自分と似た君やから僕は惹かれたんやと思うと、彼女とここから見る光景が更に楽しみで、その時の絶望する彼女の表情が早く見とうなる。
僕の気持ちも知らんと首を傾げる彼女に「なんでもないよ。さっ、もう行こか」とゆうて二人でイルマくん達の元へ戻る。
この部屋の事は二人だけの秘密と約束をして。
それから本祭が近づいてきたところで、僕は用事があるゆうて花火を持ち出しあの隠し部屋に運ぶ。
これを設置したら全てが終わる。
ガラスの向こうの悪魔達を見て、絶望に染まる事を想像する。
リタちゃんにはこの特等席から僕と一緒にその光景を見てもらうんや。
彼女の絶望する表情だけは、僕がしっかり見たらなあかんのやから。
それからしばらくして、僕は作戦を決行した。
僕の魔力を溜め込んだ首の魔具を破壊して一気に開放する。
学校を断絶とゆう箱に閉じ込めて、あとは断絶を使って皆を中央広場へ誘導。
本祭開始の鐘が鳴ったら中央広場を爆破。
自分の子供の悲惨な姿を見た親達は更に絶望する。
「おっと、そっちはあんな。間違えたら断絶で誘導してあげる。さしずめネズミの迷路」
皆纏めて爆破するんや。
花火でキレイに。
そしてその光景は彼女も一緒に見なあかん。
だから、ずっと彼女の位置は把握しとった。
都合よくイルマくん達とも別れてくれて、後は君をこの場所に誘導するだけ。
でも、やっぱり気づいとるみたいやな。
ここへ向かう為だけの道を用意して、間違った道は断絶で塞いどるゆうんに、彼女は真っ直ぐここへ向かって来とる。
僕が姿を消して花火まで消えて、それでこの断絶や。
君だけが知っとるこの場所に向かうんが普通やろな。
放送でサプライズ言われて皆が楽しんどるんは予想外やけど。
「着いたみたいやな」
視線を向ければ、隠し部屋の扉が開き入ってきたのは彼女。
いつもと違う僕の姿に驚いとるみたいやけど、楽しみはこれからや。
「来てくれたんやね。君が着やすいように断絶を無くしたりしたんやで」
「この断絶、やっぱり先輩のだったんですね。何故こんなことを。それにその花火……」
「せやね、リタちゃんには話したろ。僕の生まれた時の話」
彼女に近づいて、僕はこれまでの事を話し始める。
僕の家系であるアミィ家のことや悪童の園に入れられた事。
そこで唯一声をかけてくれた子の事を話していたら、当時の記憶が思い出されて感情が押さえられへん。
「あの表情が頭から離れへんのや。彼女の絶望した表情が……っ。何度も何度も」
「せん、ぱい……?」
「不思議やったんよ。周りが失望の表情で僕を見る度に、僕の胸はきゅっとした」
リタちゃんの声は耳に入らなかった。
興奮した僕の感情は誰にも止められへん。
そして今、再びあの表情を見る事ができるんや。
「彼女のおかげでこの感情が何か気づいた。あの時の絶望する彼女の表情を見て、僕はめちゃめちゃ興奮した」
僕はリタちゃんの両肩を掴み床へと押し倒された。
勢い良くぶつかった背が痛むのか彼女の表情が歪む。
その表情もええけど、絶望に染まった彼女の顔はきっと僕を更に興奮させてくれるはずや。
「おっと、話の続きしよか」
彼女の上から退き、今回のことに繋がる過去の話をする。
きっかけは過去の師団披露。
今より幼かった僕は、悪名高きバビルスの魔具研究師団の噂をきき、師団披露なら学校を開放してるからと潜り込んだ。
そこで出会ったのが兄さんやった。
自分のせいで大事な物を失くした子がいて、ツノがキレイやゆうてた事があったから片方あげた事を話した。
「彼女……すごぉく嫌な顔してた。絶望の表情に興奮するなんて異常なことやてわかってます。僕は壊れてるんや。せやけど——」
「待て。それのどこがおかしいんだ」
兄さんは僕のそれを元祖返りだとゆうた。
その血をより濃く継いだんやて。
魔具研の同類と一緒に、この魔界を元の混沌に戻す。
それが兄さんの野望だと教えられ、僕はそれを受け入れた。
それから兄さんは、たまに会っては沢山の物や知識を僕に与え、僕がバビルスに入学してしばらく経った頃にゆうた。
「魔界の秩序である位階を消すぞキリヲ」
それを聞いてゾクゾクした。
位階なんて階段があるから、みんな目上の者に従ってしまう。
でも、階段を崖にしてしまえば、まさしく混沌カオス。
「で、まずは、位階魔界の象徴バビルスを潰すってなったんやけど、花火の爆発なら派手やしキレイやわ」
俯いてしまった彼女の顔が見たい。
イルマくんやクララちゃん、アズくん。
大切な皆が壊れて失くなっていく様子を彼女は最後まで見てられるんやろか。
でも大丈夫や。
僕はそんな君の姿を側でずっと見てるから。
絶望していく君を一人にはしないから。
そのためにこの場所に招いたんや。
なのに顔を上げた彼女はちぃとも絶望してへんかった。
「よし、決めた」
「ちょちょっちょお待って! これだけのこと突きつけられて、なんで絶望せぇへんの!?」
花火を乗せた機械の前に、その辺にある木箱を積み上げていく。
一体彼女は何をしようゆうんや。
「絶望したって、いいことないじゃないですか」
そう言った彼女はへらりと笑った。
この状況で、こんな現実つきつけられて笑みを浮かべるなんてありえへん。
リタちゃんは木箱に乗り、上に置かれていた花火を両手で掴む。
熱で焼ける掌は痛いはずやのに、そんなの気にせずゆうたんは「私は先輩が好きで、今も気持ちに変わりはありません」やなんて。
ほんまなんなんやこの子は。
利用されて大切なもん壊されかけとるのに、そんな僕を好きやなんてありえへん。
それに『今も』ってなんやねん。
彼女は最初から僕のこと好いてくれとって、それがこの状況でも変わらへんゆうんか。
「なにゆうてるん……。ムリや、返し」
彼女にたいした魔力が無いことは知っとる。
どんなに諦めないゆうたところで何も出来はせぇへん。
大人しくその花火を返してここにも断絶をはらな死ぬだけや。
「先輩、退いてください」
「ちょお待て、そっちは外——。まさか、阿呆なっ」
なんでそんな無駄な事するんや。
サリバン並みの魔力がなければ僕の断絶は破れへん。
君の絶望の顔を見るはずやったんに。
何で君は落下してんねん。
無意識に手を伸ばしかけた時「パンドルーラ」と叫び花火を投げる彼女。
学校を覆っていた断絶を砕き、花火は夜空に花を咲かせた。
そんな状況に驚く暇もなく、気づけば僕は断絶で彼女を助けとった。
意識を無くした彼女は、空中にはられた断絶の上で眠っとる。
僕はその横に座り溜息を吐く。
長年溜めてきた魔力が一瞬で無駄になったんや。
あとちょっとやったんに、皆笑顔になってもうてるやん。
そんな僕はなんで彼女のことを助けてるんや。
計画を台無しにされて絶望する顔も見れへんなったゆうんに。
言いたい事は山程ある。
でも、そんな気持ちよさそうに眠っとったら言えへんわ。
「完敗やわ」
花火の火の粉はサリバンによって外に弾かれ、もう終いやなと思った僕は彼女を隠し部屋へと運んで魔界警備局が来るのを待つ。
少しの間床に寝かせた彼女を見てたんやけど、あの言葉の意味を聞けへんのは残念や。
君のゆうた『好き』の意味はなんやったんやろ。
落下する彼女に手を伸ばしかけて、最後に助けたんは何でやろ。
彼女の絶望する顔が見たかっただけのはずやのに、自分でも気づかへん別の感情があったんやろか。
「わからへんことだらけや」
今回はおあずけになってもうたけど、君の言葉の答えも僕の感情も、いつかわかるんやろか。
魔界警備局に連行されながら考えるんは彼女のことばかりやった。
ほんま、最初からずっと不思議な子やわ。
でも、これで終いやない。
まだまだ僕等の計画は始まったばかりや。
一つ今回の計画で不思議やったんは、彼女の笑顔や気持ち良さそうに眠る姿に胸がきゅっとした事。
今までにはなかった感覚やわ。
やっぱり彼女は不思議な子や。
《完》