また皆で笑いたい
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リタ
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「悪魔怪談懐かしいなぁ。昔先輩等とやっとったことがあるんやけど、吐血ばかりしてよう怒られとったわ」
先輩という悪魔がどんな悪魔なのかはわからないけど、キリヲ先輩の表情を見る限り良い先輩なんだろうなと思う。
なんて話をしていたら、キリヲ先輩のス魔ホの着信が鳴り出ていってしまった。
私達はワイワイと騒ぎながら、キリヲ先輩が戻ってくると眠りにつく。
お泊り会も終わり、無事に花火も完成した師団披露前夜祭。
本祭のことで先輩に聞きたいことがあったんだけど姿が無くて、準備を入間くん達に任せて何処へ行ったのか探す。
三年塔まで来たところで疲れて一息つこうとしたとき、バランスを崩し壁に手をついてしまう。
すると音がなり現れたのは隠し部屋。
なんでこんなところにと疑問はあるものの中に入ってみると、そこにキリヲ先輩はいた。
驚いた様子の先輩に声を掛ければ、この隠し部屋が前の魔具研の先輩達が使っていた場所だと教えてくれる。
その頃は、かなり危ない物も作っていたらしく、ここで隠れて研究をしていたみたいだけど今はガラクタばかりの墓場と化していた。
「こっちに来てみ」
呼ばれてついていくと、木の箱などが置かれた空間があった。
暗くてよく見えない中、先輩は大きな布で覆われた壁の前に立つと紐を引く。
布はバッと上に上がり光が差し込む。
透明なガラスの向こうには、中央広場と本祭開始を知らせるための鐘まで見える。
「あんぽんたーん」
突然叫んだ先輩にアタフタしていると「特殊なガラスやから聞こえへんよ。向こうからは壁に見えるし」と言われ中央広場を見る。
確かに誰も私達に気づいていない。
「ここから見たら、誰が高位階で誰が低位階なんかちぃっともわからん。みぃんな同じ、差ぁなんかあらへん」
私はその言葉で再びガラスの向こうへと視線を向け、キリヲ先輩が話してくれた野望のことを思い出す。
ここから見た眺めの様に、皆が平等になればと思っていたとき、私はキリヲ先輩の手を掴み「特賞を取りましょう」と言っていた。
弱小だからこそ特賞を取ったら、高位階の皆もビックリするはず。
学校の皆にキリヲ先輩の努力を証明する。
それこそが、キリヲ先輩の野望に近づくことになるんじゃないかと思ったから。
先輩は一瞬驚いた顔をしたけど、直ぐにニコリと柔らかな笑みを浮かべ「凄いこと言いよるなぁ」と言う。
自分でもそう思うけど、こんな景色を見せられて先輩の野望を知っていたら、やっぱりその野望に近づきたいと思ってしまったから。
「ほんまとんでもない野心家や。君と僕は……ほんまにお揃いなんやな」
首を傾げる私に「なんでもないよ。さっ、もう行こか」とキリヲ先輩は言い、二人で入間くん達の元へ戻る。
この部屋の事は二人だけの秘密と約束をして。
それから本祭まであと少しとなったところで、花火の設置も完了して、アズくんが段取りを再度説明してくれる。
作戦名は即撃必勝。
狙うは学校中央広場の注目。
皆が集まり前夜祭終了と同時に鳴る本祭開始の鐘。
これが鳴り終わった瞬間に花火を打ち上げる。
要はスタートダッシュでだしぬいて、あとの本祭は小さめの花火を定期的に打ち上げてアピールするということ。
インパクトもあるし魔界にはない花火ならきっと注目も集まるはず、なんて思っていたら、クララちゃんがすでに点火。
「馬鹿モノ! 早く消せ」
「水ッ! 水ッ!」
「ダメ、打ち上がっちゃう」
皆で慌てて地面に伏せるけど、何故か打ち上がるはずのものが打ち上がらない。
「空砲? お前というヤツは……! 玉が入ってないならそう言え」
「わたし知らないよー」
アズくんとクララちゃんの会話で私と入間くんは首を傾げる。
消えた花火は何処へいったのか。
用事があると言って居なくなった先輩と何か関係があるんだろうか。
もしかしたら先輩が持ってるのかもしれないと思い皆で手分けして探したけど見つからず「先輩を信じて僕達は待とう」という入間くんの言葉で私達は待つ事にした。
だが先輩が戻ってくる様子はなく、本祭開始も近づいてきたので再度探しに校内に入る。
私と入間くん達で別れて探していたその時、突然の揺れが襲う。
一体何だったのかと思ったとき、周りにいた悪魔達が見えない何かにぶつかる姿が視界に映る。
よくわからないけど、一度入間くん達と合流した方が良さそうだと思ったとき、私も見えない何かにぶつかった。
手を伸ばし触れてみると、そこには透明な壁のようなものがある。
この能力、私は知っている。
まさか先輩がと思ったとき、フとあの隠し部屋が脳裏に浮かぶ。
もしかしたらあそこにいるかも知れないけど、向かおうにも壁のせいで身動きが取れない。
「ビックリしたかな。これはサプライズだから、上手く隙間を通って中央広場に来てね」
放送から流れた声はダリ先生のもの。
周りの悪魔は隙間を見つけて中央広場を目指していくけど、これはサプライズなんかじゃない。
何だか大変な事になっていると感じ、隙間を見つけて三年塔を目指そうと透明な壁に手をつきながら進む。
とはいっても、これじゃあ三年塔に着くまでに時間がかかってしまう。
それでも方法がない以上仕方がないと進み続ける。
次は一体何処に壁があるのかと慎重になりながら進むけど、何故か壁は最初の一枚以外に私の前に現れることはなかった。
ぶつかることを覚悟で一気に三年塔まで走ればスムーズに到着。
まるで私がこの場所に向かっていることに気づいてガラスを消していたように思える。
これが先輩の仕業なら早く止めなくてはと隠し部屋に入れば、そこにはキリヲ先輩がいた。
いつもの丸眼鏡はしておらず、片髪は上げていていつもの先輩と雰囲気が違う。
無くなった花火の玉は大きな機械の上に置かれていて光を放っている。
やっぱり先輩が持ち出したんだ。
「来てくれたんやね。君が着やすいように断絶バリアを無くしたりしたんやで」
「この断絶、やっぱり先輩のだったんですね。何故こんなことを。それにその花火……」
「せやね、リタちゃんには話したろ。僕の生まれた時の話」
先輩は私へと近づくと、自分のこれまでを話し始める。
キリヲ先輩の家系であるアミィは、鉄の防壁と恐れられる魔界でも有数の名家。
その魔力保有量も魔界で指折り。
そんな中で、キリヲ先輩の魔力は少なく生まれた。
先輩は悪童の園に入れられた。
幼少の悪魔を徹底管理し育成する矯正教育初頭学校。
園でも家でも皆に失望されたけど、そんな先輩にも笑いかけてくれる子がいた。
彼女も成績がいい方ではなく、よく二人で過ごしていた。
「キリヲくんにはいい所沢山あるよ。ツノの形もきれいだし、あとおっとりしてる」
「それ褒めてる?」
彼女は自分のお守りであるおばあちゃんの形見の耳飾りをキリヲ先輩に見せた。
大切な宝物だと言って。
「やめて! 返して」
「うるせぇな。雑魚が強者に逆らうなよ。魔力テスト、ビリとブービーが」
同じ園に通う悪魔が彼女の耳飾りを奪い、高いこの場所から崖の下の川に投げた。
キリヲ先輩が断絶でなんとか耳飾りが落ちるのを防いでホッとした。
まだ幼かった先輩の断絶は、その一瞬の気の緩みで砕け、耳飾りは川へと落ち、その後、彼女は園を辞め先輩は残った。
「この弱肉強食の魔界で理不尽な力に屈する彼女を見て、僕は実感した」
背を向けた先輩の顔は見えないけど、苦しそうに言葉を発するその背が震えているのがわかる。