また皆で笑いたい
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リタ
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私の通う悪魔学校バビルスには、位階というものがある。
一から十まであるこの位階が悪魔の評価であり魔界の全て。
でも中には、生まれつき魔力が少ない悪魔がいる。
私が入った魔具研究師団の部長であるキリヲ先輩がまさにそうだった。
そんな先輩の野望は魔具の力を使って、魔界の位階制度を廃し、平等な世界にすること。
その言葉を聞いたとき私は、この師団に入りたいと思い入団した。
私の友達である、入間くん、アズくん、クララちゃんも誘い、計四人の新たな入団にキリヲ先輩はとても喜んでいた。
「そういえば、リタちゃんは何でうちの師団に入ってくれたん?」
まだ他の三人が来ていない時に不意に尋ねられ、一瞬言葉に詰まる。
私は人間だから魔力なんてない。
そんな自分と似たものをキリヲ先輩から感じた。
だけどそれ以上に私が惹かれた理由がある。
「キリヲ先輩の野望が叶った世界を見たくなったからです」
悪魔にとって位階は自身の価値で、先輩だろうと位階が低ければ馬鹿にだってされる。
キリヲ先輩は三年生だけど2。
一年生で1か2が普通の中で、三年生でこの位階だと周りからの扱いは酷いものだ。
最初に先輩と出会った日、私はそれを実感した。
あれは、先輩が荷物を運んでる際に他の悪魔とぶつかった時。
ぶつかった相手も最初こそ先輩だと思ったものの、位階を見た途端「何だ2かよ」と言って去っていく。
先輩は一人で散らばった荷物を拾っていて、私も駆け寄り手伝う。
「酷いですね。手伝いもしないで行っちゃうなんて」
「仕方ないんよ。僕は位階が低いから」
柔らかな笑みを崩さない先輩。
私の方があの悪魔に怒りを感じていた。
先輩も荷物で前が見えてなかったかもしれないけど、相手の悪魔も他の悪魔と話しながら歩いていて前を見ていなかった。
お互い様のはずなのに、謝ったのは先輩だけで相手の悪魔は謝罪も手伝いもしないで去っていった。
位階があるからこんな扱いをされる悪魔がいるなら、そんなものない方がいい。
私も位階はキリヲ先輩と同じ2だけど、一年生ということや、遥かに目立つ入間くん達といるからこんな扱いを受けたことはないけど、目の辺りにすると酷いものだ。
だからこそ、キリヲ先輩の野望が叶う世界が見てみたい。
「僕の野望に興味があるんやね」
「はい。私に何か手伝える事があったら言ってくださいね」
人間である私には野望なんてないけど、少しでもキリヲ先輩の野望が叶うお手伝いができるなら協力したい。
優しいキリヲ先輩が望む世界なら、きっと皆が笑顔になれる。
そんなこんなでやってきたのは師団披露。
入団した一年生のお披露目会ということで、前夜祭、本祭、後夜祭の三日間行われる行事イベント。
会場は一から三年塔と中庭で、催し物や出店で賑やかになるらしい。
一年生は本祭で家族も見に来るため、皆張り切っている。
勿論私達も出し物をするわけだけど、他と比べて範囲は狭いスペース一角。
周りの悪魔達が「物置師団」何て言ってるけど、キリヲ先輩の作った魔具などをこの狭いスペースに置いたらまさにその通りになってしまった。
悔しくて見返したいけどいい方法も思いつかず、皆で意見を出し合っていると、不意に入間くんが「花火」と言った。
確かに花火ならインパクトもあるし、空ならスペースも関係ない。
「そうと決まればお泊り作業の申請やな」
こうして泊まり込みでの花火制作が始まったわけだけど、本物の花火を知っているのは人間である私と入間くんだけ。
他の三人は知らないから、見てないものを作るということにキリヲ先輩は苦戦している。
説明だけでは限界があると思っていたとき、入間くんが初恋メモリーという人間界の漫画を持ってきた。
きっとアメリ会長から借りてきたんだろう。
皆は見たことのない漫画を不思議に思っていたけど、その巻にある花火のページを入間くんが開いて見せると「キレイだね」と皆が口を揃えて言う。
この絵を参考に花火作りを開始すると、大きな爆発音。
視線を向ければキリヲ先輩が吐血していて「大丈夫ですか」と驚き声をかける入間くん。
「僕には断絶があるから怪我はしてへんよ」
「断絶?」
「見せた方が早そうやね。そこ、触ってみて」
入間くんが手を伸ばすと、そこには見えない壁のような物ができていた。
クララちゃんも体当りするけど弾かれてしまう。
これはキリヲ先輩の家系能力であり、この断絶のお陰で怪我をせずに研究ができていると話してくれた。
その後、完成した花火を暗くなった空に打ち上げると、小さな光の華が夜空に咲く。
師団披露ではもっと大きな花火を打ち上げなくてはいけないけど、取り敢えず完成は見えてきた。
ここで一旦作業は終了となり、そろそろ就寝。
と思いきや枕投げが始まった。
チーム分けは、アズくんとクララちゃん。
入間くんとキリヲ先輩。
余った私は離れた場所で見学してようかなと思ったんだけど、キリヲ先輩に突然腕を掴まれて「リタちゃんは僕達と同じチームでもええ?」とアズくんチームに尋ねる。
「ええ、構いませんよ」
「リタち覚悟してね」
余裕のあるアズくんとやる気十分なクララちゃん。
私まで参加する形になったけど「勝手に決めてしもたけどよかったやろか?」とキリヲ先輩に聞かれ「やるからには勝ちましょう」と言って二対三の勝負が始まった。
入間くんは枕を見事に交わし、キリヲ先輩は魔具を使って枕を飛ばす。
クララちゃんは枕をどんどん家系魔術で量産して、アズくんは入間くんに枕を全力投球。
ワイワイと楽しいお泊り会。
人間界でこんな風に過ごしたことなんてなかったなと考えていた瞬間、私めがけて枕が飛んでくる。
当たると思った枕は、私の目の前で何かにぶつかり下に落ちた。
「勝負中に考え事しとったら危ないで」
キリヲ先輩が断絶で助けてくれたんだとわかった時、私の鼓動が小さく跳ねる。
白熱した戦いは暫く続き、終わった頃には皆ヘトヘトになって布団の上に倒れていた。
流石にそろそろ寝なければと明かりを消したとき、光で照らされたクララちゃんの顔が浮かび上がり「悪魔怪談」なんて言うものだから入間くんと驚いていると、後ろに気配を感じ振り返る。
そこには吐血しているキリヲ先輩がいて、今度はクララちゃんも一緒に驚くとアズくんが明かりを付けてくれた。