おかしな告白二つ
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「触り癖はバラム先生の癖でして、生き物と見れば見栄えなく触るんです」
これは皆逃げたくなるのに納得していたら、バラム先生は入間くんの背を撫で首を傾げたかと思うと、突然入間くんを担いで「君たちは教室に戻ってなさい」とだけ言い残し、慌てて何処かへ行ってしまった。
その後、入間くんからこっそり聞いたんだけど、どうやら入間くんの背に羽がない事に気づいて職員室に駆け込まれたらしい。
他の先生たちの前で服を捲られたものの、何とかアリさんのお陰で助かったと聞いてホッとする。
アリさんは、入間くんが指にはめている悪食の指輪という魔力を溜めるための魔具。
最初は黒煙の物体がお腹を空かせて叫び、サリバンさんの膨大な魔力を与えたことで落ち着いた。
それが今では喋りだし、細身のスラッとし体型に一つ目がついた悪食の指輪の化身みたいな存在になっている。
指輪が喋りだした理由をサリバンさんなら何か知ってるかもしれないと思い話したみたいだけど「指輪は喋らないよ」と言われ、オペラさんとサリバンさんに心配されたと前に話していた。
元々悪食の指輪は魔力を溜める魔具。
サリバンさんの魔力が溜め込まれているから、それを使い入間くんは魔術が使えている。
アリさん自身も、自分みたいな存在が過去にあったなどの事実がなければ他の悪魔の前で姿は表したくないというため、見せて証明することもできず、知っているのは、入間くんと同じ人間だからという理由で姿を見せてくれた私だけ。
そんなアリさんのお陰で、何とかバラム先生や他の悪魔に人間だとバレずに済んだみたいなんだけど、話はそこで終わらず、その後色々あり魔歴の準備室に連れて行かれた入間くんは、バラム先生の優しさに気が緩み、自分が人間であることを話した。
最初は驚いていたバラム先生だったけど、あまりの警戒の無さや甘さに入間くんにお説教をしたとか。
空想生物が好きなバラム先生にとって、人間は貴重で弱い存在だと思っているらしく、入間くんが人間だとバレないか心配してくれている。
そんな話を聞かされ、私もバラム先生と話してみたいなと思い入間くんに相談すると、一緒に準備室に行こうという事になった。
見た目は怖い先生だったけど、入間くんが気を許して人間であることを話してしまうくらいの相手なら、きっと優しい悪魔に違いない。
なんて思っていたら、会いに行くより先にバラム先生が問題児クラスの教室に現れた。
隅に隠れているバラム先生の存在に気づき「なんでバラム先生が居るんだ」と周りが騒ぎ始めると、そこに担任であるカルエゴ先生がやって来て、バラム先生と向かい合う。
どちらも見た目に圧があり、空気が重くなるのを感じていると、お互いが拳を前に出し上下にゴツンとぶつけた。
何やら仲の良さそうな雰囲気に生徒たちが声をかけると、二人は元バビルスの生徒で同級生だと知る。
教室内が賑やかな空気に変わると、私は入間くんに腕を引かれバラム先生の元へ連れて行かれた。
「先生、どうしてここに?」
「君が人間だとバレてないか心配で。ところでその子は?」
「僕と同じ人間の女の子なんです」
驚くバラム先生の声に皆の視線が集まる。
慌てる先生の様子を見ていて、私はクスッと笑みを溢した。
その後、私と入間くんが改めて準備室を訪れると、テストで困っていた私達のために先生が作ってくれた絵本が手渡された。
一つの絵本を入間くんと二人読み終えれば「わかりやすい」と声を揃えて言う。
バラム先生が描いてくれた絵本はわかりやすく「まだまだ不正解の方が多いけれど、更新してるね」なんて入間くんと話してたら「更新?」とバラム先生は首を傾げた。
「自分がどんどん新しくなってきてるというか」
「うんうん、だから辛くなくて、むしろ──。って、何故メモを?」
「いや、面白い生体だな……と」
絵本を読まれて嬉しいのか「これ、作るの大変だったんじゃ」と入間くんが言えば「魔界を知ることは君達の身を守るためにも必要なことだよ」とバラム先生は言い、他の教科の本も作ってるからちゃんと読むように念を押された。
バラム先生の絵本に加え、アズくんにも教わりながらやってきた終末テストは無事赤点回避に成功。
そのお礼を伝えたくて入間くんと二人先生の元へ向かう途中、前を走っていた入間くんが誰かとぶつかった。
顔を上げれば、そこにはバラム先生。
髪がバッサリと切られて別の意味で怖いように思えたけど、私と入間くんが前に話していた更新という言葉。
その何気ない言葉に勇気をもらい、他者に近づくだけじゃなく、近づいてもらえる努力をしようと思ったと話すバラム先生。
髪が長すぎるのが怖いのかなと思い切ったみたいだけど、それが私には可愛く見えてしまう。
私達が赤点を回避して、学年で真ん中の順位にまで上がったことを話せば凄く喜んでくれた。
どんな悪魔よりも優しく生徒思いで、私は次第にバラム先生に惹かれていった。
「それで気づいたら、もう好きになってた」
同じ人間であり信頼できる入間くんだからこそ話せた私の気持ち。
最初にこの話しをしたとき入間くんは「応援するよ」と言ってくれた。
なのに今は固まったまま。
やっぱりこれくらいじゃ記憶は戻らないかなと思っていたら、突然椅子から立ち上がった入間くんが私の前に立つ。
「僕は、リタちゃんが好きだ」
真剣な瞳でそう言われれば、その好きが友達としてのものじゃない事くらいわかる。
今までそんな素振りを見せたことなんてなかったから、なんて言えばいいのかわからない。
記憶がないからこんなことを言っているのか。
それとも、最初から入間くんは私の事をそういった思いで見続けていたんだろうか。
「その感情は恋じゃないよ」
「僕はこれを恋だと思ってる。リタちゃんの事がずっと好きだった」
思考が上手く回転しない。
ずっと友達だと思ってたのに、その気持ちが記憶をなくしたこが原因でないとしたら、私はそんな相手に自分の好きな悪魔の話をしていたことになる。
これ以上考えることも、この場にいることも耐えられなくなった私は、呼び止められる声も聞かずに準備室を逃げ出した。
翌日。
あの後、家に帰ってからも考えたけど、やっぱりわからなかった。
私の気持ちは勿論決まってるけど、入間くんはどうしてしまったんだろう。
何度思い返してもそんな素振りを感じたことはなくて、自分が鈍感なだけなんだろうかとさえ思えた。
教室へと向かう足が重くなるのを感じていると、背後から声をかけられ振り返る。
そこにはバラム先生がいて、初めて先生の方から声をかけてもらえたことが嬉しいのに、直視出来ず顔を逸らしてしまう。
昨日の入間くんとのことで誤解をされてるかもしれないのに、自分の気持ちを伝えることもできないなんて情けない。
そんな私の顔を上げさせたのは、突然腕を引かれたから。
私の身体はバラム先生の腕の中に収まったかと思うと、耳元で聞こえたのは「好きだよ」の言葉。
状況が全く理解できずいろんな感情がぐるぐる巡り、私はその場から逃げ出し教室へと駆け込む。
肩で息をする私を見てニコニコしている入間くん。
一体誰のせいで昨日悩んでいたと思ってるのか。
「入間くん、昨日の──」
「あ、あれは無かったことにして。それよりも、何かあった?」
昨日のは一体何だったのか、先程まで顔を合わせることに気まずささえ感じていたのに、今目の前にいるのは何時もの入間くん。
告白はやっぱり、昨日の記憶を無くした状況が言わせたものだったんだろう。
入間くんのことは一安心だけど、また新たなことが私を悩ませる。
バラム先生からの突然の告白。
好きと言われたのは嬉しいけど、昨日の入間くんのこともある。
明日になって入間くんみたいに無かったことにしてなんてバラム先生から言われたら立ち直れない。
「実は、バラム先生から告白されたんだけど理由がわからなくて……」
「本人に直接聞いてみなよ」
簡単に言ってくれるものだ。
でも確かに、本人に聞くのが一番早い。
私は覚悟を決めて教室を飛び出す。
途中カルエゴ先生とすれ違い「何処へ行く」と言われたが無視。
ホームルームが始まる時間でも関係ない。
私はあの、問題児が集まるクラスの生徒なんだから。
たまには問題児なことをしたっていいよね。
準備室の扉をノックもせずに開ければ、そこにはバラム先生の姿。
鼓動を高鳴らせ、さっきの言葉の理由を尋ねる。
明日になったらなかったことにされないか。
バラム先生もおかしくなってしまったのか確かめるために。
「うん。先ずは昨日話せなかったことを説明するね。実は──」
真実を知ったとき、私はどんな表情をしていたか自分ではわからないけど、告白の返事だけは変わることはない。
バラム先生は私の言葉を聞くと抱きしめた。
先程より更に強く。