MyTeacher
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リタ
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今日はカルエゴ先生の機嫌が頗る悪いらしく、殺気と圧が普段以上。
皆も気づいているようで、下手に刺激しないように口を噤んでいる。
いつもなら騒がしい教室も、今日ばかりは静寂。
なんて続くはずもなく「エギー先生シワシワー」と、自分の眉間を指差し騒ぐクララちゃんをアスモデウスくんが止めるが、ギロリとカルエゴ先生の視線が二人を突き刺す。
これは雷が落ちると皆が思ったとき、何故かその視線は私へと向けられた。
「リタ、話がある。ついてこい」
突然呼ばれて動揺する。
何かしてしまったのだろうかと考えていると「早く来い」と呼ばれ慌てて後をついていく。
無言なのが尚更怖い。
一体どこに行くのかと思えば、カルエゴ先生の足が止まった先は準備室。
ここに居る悪魔はただ一人。
カルエゴ先生はノックもせず勢いよく扉を開けると、その音に驚いたバラム先生がこちらに視線を向けた。
「カルエゴくんにリタちゃん。どうかしたの?」
「どうかしたのかだと。それは、お前とコイツがよくわかっていると思うが」
全く理解できずバラム先生を見ると、バラム先生も心当たりがないのか私を見た。
見詰め合ったまま少しの沈黙が流れると、カルエゴ先生がズカズカとバラム先生に近づく。
至近距離でギロリと睨みつけるカルエゴ先生。
その理由がわからず困惑するバラム先生。
二人を見ていることしかできない私。
何をそんなに怒っているのかわからないが、カルエゴ先生の言い方からして私にも関係がある内容のようだ。
同じ様に状況が呑み込めていないバラム先生を助けなければと口を開く。
「カルエゴ先生、先生が何をそんなに怒っているのかわかりません。理由を教えていただけませんか」
「理由だと。教師と生徒が授業が終わった後も密会している理由の方が私は知りたいがな」
その言葉で私もバラム先生も全てを理解した。
きっと私とバラム先生の間に何かあるとカルエゴ先生は思っているんだ。
生徒と先生以上の何かが。
実際は違う。
確かに授業が終わったあとも、暫くの間ここで二人きりの時間を過ごす事が多い。
それも、普通に生徒が授業の質問をする以上の時間を過ごしている。
誤解されても仕方がないが、私はただわからないところを聞きに来ていただけ。
確かに普通の生徒ならここまでの時間はかからないが、私は理解力が乏しい。
バラム先生が解りやすく絵本にしてくれてもやはり理解が出来ないところがあり、その場で絵本を読みながら教えてもらうというかなりバラム先生に迷惑をかけてしまう方法で教えてもらっていた。
そのため、普通の何倍もの時間がかかっていたことをカルエゴ先生に説明する。
「状況は理解した。だが、生徒と教師が密室に長時間いるのは誤解を生む」
「そうだね。僕が軽率だったよ」
もう少し他の目も気にするべきであったことを反省するバラム先生。
カルエゴ先生はもう怒っていないのか、さっきまでの殺気や圧は消えていた。
「次からはカルエゴくんにも同席してもらうことにするよ」
「何故そうなる!」
確かに、誰に誤解されるかわからないことを考えればもう一人いたほうがいい。
それもカルエゴ先生なら尚更安心だが、気になって集中できなくなりそう。
本人も現在拒否してるし、無理に頼めば絶対空気が重くなって勉強どころではない。
カルエゴ先生は家庭訪問に来たときに思ったけど、生徒一人ひとりのことをノートに書き留めている程、真面目な教師であり陰湿な悪魔。
普段から怒っているような表情をしていて未だに慣れない。
とはいえ他に頼める様な先生もおらず、カルエゴ先生に頼むしかない。
バラム先生のお陰で少しずつだけどテストの点は上がってきてる。
まだまだ赤点だらけだけど、誤解させないように早めに切り上げるなんてことになれば、点数が下がる可能性も十分にありえる。
「カルエゴ先生、お願いします。私、もっと勉強を頑張りたいんです」
二人の会話を遮り、頭を下げお願いする。
カルエゴ先生にとっては迷惑なことだと思う。
バラム先生にだって、いつも私がわかりやすいように絵本を作ってもらって迷惑を沢山かけてしまっている。
だからこそ、私はテストで応えなくてはいけない。
バラム先生の優しさを無駄にしたくないから、カルエゴ先生の協力が必要なんだ。
「いいだろう。生徒が勉学に励むのを邪魔するつもりはない」
「本当ですか」
「ただし、次のテストで合格ラインに入れ。それが出来なければ誤解を招かない程度の時間の勉強にしろ」
次のテストまであと五日。
前回のテストでは合格ラインより二十点足りていなかった。
残り数日でなんて出来るかわからないけど、私の答えは一つしかない。
「わかりました」
こうして私はテストに備えて、授業が終わったあとは準備室でバラム先生と勉強をした。
勿論カルエゴ先生も一緒。
たまに視線を感じるのが気になったけど、今は勉学に励まなくてはと、バラム先生の話をいつも以上にしっかりと聞いて頭に叩き込む。
自分の理解力の無さはわかってるけど、それでもいつも丁寧にバラム先生は教えてくれる。
同じ質問をしても更にわかりやすく答えてくれて、呆れたり、怒ったりもしない。
そんな様子を見ているであろうカルエゴ先生に、後から何を言われるだろうかと内心ドキドキしていたけど、先生は特に何かを言うでもなく、今日の勉強が終ると静かに立ち上がり準備室を出ていく。
お礼を言いたかったのに言えず、私はバラム先生にお礼を伝えて帰宅する。
普段生徒に厳しく陰湿な面を見せるカルエゴ先生。
そんな先生が何も言わなかった。
もしかしたら呆れて何も言えなかっただけかもしれないけど。
理解力の無さを何も言わなかったのは、イルマくんとバラム先生だけだったから。
「カルエゴ先生、明日も来てくれるかな……」
見てるだけでもイライラさせてしまっていたに違いない。
もしあの話は無しになんてことになれば、私の点数は一気に下がるはず。
なんて不安は意味もなく、翌日もカルエゴ先生は準備室に来てくれていた。
数日後。
今日はいよいよテスト当日。
今までの努力が報われる事を祈りながら、その日のテストを終えた。
結果が返される来週までは、準備室での勉強はお休み。
私は不安で一杯な気持ちを抱えてその日が来るのを待つしかない。
ここ数日はいつも以上に勉強に集中したせいか、学校が終わって直ぐ帰宅というこの状況が落ち着かない。
ベッドに横になってみてもテストの結果ばかりが気になる。
先生二人に協力してもらったのに合格ラインに達してなかったら申し訳無さ過ぎる。
でもその時は、準備室に通うのを辞める機会なのかもしれない。
カルエゴ先生は、先生と生徒が長時間二人きりでなければ問題ないと言っていたけど、ここまでしてもらってダメなら、もうバラム先生に迷惑はかけられない。
バラム先生との勉強を思い出し視界が歪む。
何故私は泣いているんだろう。
思い出せば思い出すほどに涙が溢れて自分の気持ちに気づく。