おかしな告白二つ
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今日、私はずっと違和感を感じていた。
原因は、同じ問題児クラスの入間くんの様子がおかしいこと。
私と入間くんは、ここ、悪魔学校バビルスで二人だけの人間。
その事を知るのは、理事長であり入間くんを両親から買い取った悪魔、サリバン理事長と、そのᏚᎠであるオペラさん。
そして、空想生物学担当教師のバラム先生の三人。
二人だけの人間ということや同じクラスという事もあり、私と入間くんは普段一緒に行動する。
入間くんに懐いてるクララちゃんや、一度入間くんに負けてから従属したアズくんも交えて四人でいる事が多いのだが、今日の入間くんには何処か違和感を感じる。
アズくんやクララちゃんは気付いていないのか普段通りだけど、何かがおかしい。
そう私が一番最初に感じたのは、一時間目の授業を終えた後のこと。
いつもの様に四人で次の授業を行う教室へ移動していたとき、前からバラム先生がやって来て私は入間くんの後ろに隠れた。
バラム先生が挨拶をする中、私だけは入間くんの背に隠れたまま見ようとさえしないのがいつもの事。
「それじゃあ、僕は行くね」
バラム先生の言葉で入間くんの背からチラリと覗けば、去り際に視線が重なる。
いつもは目が合っても困り顔をされるのに、今日は優しげに目を細め笑いかけてくれたことに鼓動が高鳴る。
私がこんな態度だから、きっと嫌な子だと思われているに違いないと思っていた。
だから苦笑いを浮かべられるんだって。
私がバラム先生を好きなことは入間くんしか知らない。
気持ちがバレたとは考えにくいけど、あんな笑みを見せてくれたのは最初に顔を合わせたとき以来だ。
「リタちゃん大丈夫」
「う、うん」
入間くんが困り顔で私を見てくる。
毎回バラム先生と遭遇する度に盾にされていたんじゃ、入間くんだって困るよね。
私は入間くんの背から離れ「いつもごめんね」と言えば「バラム先生怖いもんね」と言われた。
何故か悲しそうな入間くん。
今はアズくんやクララちゃんもいるから、私がバラム先生を好きなことを知られない様にそう言ってくれてるんだろうけど、それにしては演技とは思えないくらい悲しげな瞳や声に違和感を覚えた。
その後、気になった私が入間くんを観察していていくつかの違和感を覚えた。
アズくんやクララちゃんへの対応のぎこちなさ。
一番の決め手は、入間くんが頼みを断った事。
言い方は悪くなるけど、入間くんは凄くお人好しで、頼まれた事を断ることができない。
少なくとも今までに断ったところなんて見たことがない。
放課後。
普段なら、入間くん、アズくん、クララちゃん、私の四人で帰るのに、入間くんは今日用事があるからと三人で帰るように言って教室を去ってしまった。
やっぱりおかしいと思った私は、自分も用事があると二人に伝えて入間くんの後を追う。
どこに行くんだろうかと思っていたら、入間くんが入っていったのはバラム先生のいる準備室。
何か悩みごとがあって相談しに行ったんだろうか。
今日は様子もおかしかったし、友達として力になりたい。
私も準備室に入ろうと扉の前に立つけど、バラム先生を目の前にする勇気がなくてノックすらできない。
友達が悩んでいるのにそんなこと考えている場合じゃないと首を左右に振り、私はノックすると扉を開けた。
二人の驚いた視線が向けられ、何よりバラム先生に見られていることが恥ずかしくて耐え難い。
それでも逃げ出すわけにはいかないと、後退りそうになる足を前に進め中へと入る。
「リタちゃん、どうしてここに……」
「入間くんの様子が今日一日おかしかったから、何か悩みがあるんじゃないかと思って」
入間くんの言葉に答えている間も、何故かバラム先生は笑みを浮かべながら微笑ましそうに私たちを見てる。
もしかして、私が入間くんを好きだと誤解されたのかもしれない。
だとしても、普段からバラム先生を避けているのは私。
バラム先生と会う度、入間くんに引っ付いていたんじゃそう思われたって無理はない。
好きな悪魔に誤解されるのは嫌だけど、今は入間くんの方が優先。
「僕の事を心配してくれたんだね。ありがとう」
「お友達なんだから当然だよ」
入間くんの表情は何処かぎこちなくて、それ程までに悩んでいたんだと胸が痛むのと同時に、力になりたいと思ったとき「僕はこれから用事があるから、二人はここでゆっくり話していくといいよ」と笑みを浮かべ言うバラム先生。
去り際に私を見て「頑張ってね」と言われ、誤解されてると確信する。
準備室には、私と入間くんの二人きり。
入間くんの表情は暗いままだけど、私達にじゃなくバラム先生に相談しに来たということは話しにくい内容なんだろう。
無理に聞くのは良くないと思い、私は明るく振る舞おうと普段通りに言葉をかける。
「バラム先生がいたから緊張しちゃったよ」
「苦手な悪魔と顔合わさせてごめんね」
私は首を傾げる。
今は二人きりだからそんな風に言う必要なんてないのに。
少しでも重い空気を軽くできればと「入間くんには話したでしょ。私がバラム先生の事を好きだって」なんて改めて口にすると恥ずかしいけど、無駄ではなかったみたい。
入間くんは伏せていた顔を上げたかと思うと驚いた表情を浮かべてる。
まるで初耳といった感じに見えるけど、もしかしたら記憶喪失だったり。
それなら様子がおかしかったことも頷ける。
本人から聞いたわけじゃないから断定はできないけど、確かめる方法はある。
「私がバラム先生を好きになった理由覚えてる?」
黙ってしまう入間くん。
やっぱり記憶がないんだ。
悩みの原因がわかったところで少しでも思い出す切っ掛けになればと、一度入間くんに話したことがある、あの日の事を思い出しながら話す。
あれはまだ、私がバラム先生のことを知らなかった頃。
テストの日と終末日が近づいてきて、クラスの皆は勉強に必死になっていた。
終末日は、人間世界でいう夏休みのようなもの。
その前にテストがあり、赤点を取ったものは補習で終末日が潰れる。
なんて聞かされたら如何なるかは明白。
普段勉学などしない生徒まで必死になって勉強を始める。
私と入間くんはという、小テストでさえ点数が一桁というとんでもない結果をだしているわけで、クラスの中でも非常にマズイ状況。
魔界の文字は読めても、悪魔ではない私達には言葉の意味が理解出来なかった。
アズくんに勉強を教わるも、何を言っているのか理解ができず二人で愕然としていたとき、一冊の本が突然喋りだし問題を出し始めた。
内容は人間に関するもの。
私と入間くんは同時にスラスラと問題を答え全問正解。
クラスの皆も驚く中、私と入間くんはその本の表紙を見る。
書かれていたのは「空想生物学問題集」の文字と、問題を作った悪魔、バラム・シチロウの名。
「次の授業は魔歴。お二人が百点をとられた教科です。ここは、魔歴を極められてはいかがでしょうか!?」
アズくんの言葉で私と入間くんは魔歴を極めるため、アズくん、クララちゃんと共に魔界歴史の教室へと向かう。
魔歴担当はダリ先生だと聞きちょっと安心した。
ダリ先生はいつもニコニコしてて楽しい事が好きな悪魔だから、雰囲気的にも声をかけやすいし質問もしやすそうだ。
なんて思いながら扉の前まで到着したところで、突然教室から数名の生徒が飛び出してきた。
アズくんが何事だと尋ねれば、出てきた悪魔の一人が「ダリ先生が悪周期で、かわりにバラム先生が」と答える。
バラムという名は、先程私と入間くんが解いた問題集の著者。
教室の中を覗けば誰もおらず、青褪めたアズくんは「バラム先生は少し特殊でして。我々も今回はやめておきましょうか?」と何だか乗り気ではない。
そんなアズくんとは逆に入間くんはやる気らしく「大丈夫だよ。せっかく来たんだし。僕、バラム先生の授業うけてみた──」言い終わるより先に入間くんの体は蔦に捕まり宙へと浮く。
「うれしいなあ。やる気のある子は大歓迎だ」
声がした方を見れば、そこには、金属のマスクに長い白髪の悪魔がいた。
私やアズくん、クララちゃんも蔦に捕まり、他に捕まっていた悪魔達も一緒に席に座らされる。
バラム先生の授業が開始するも、話は人間についての事ばかり。
周りの悪魔達は「テストに関係ねー」と興味なし。
魔界で人間の存在を信じている者は変り者扱いされるみたいだから、それ程信じていない悪魔は多いということ。
ここに人間二人いるんだけどね、と思っていたら、蔦がアズくんを持ち上げバラム先生の元へと運ぶ。
再び戻されたアズくんに「撫でられてたみたいだけど大丈夫?」と声をかける。