染め上げたのは恐怖か愛か
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「魔界だとどうなのかわかりませんが、これでも二十六です」
「人間世界の方だと確かに大人だね。でも、君のその容姿なら問題なく入れるよ」
サラッと子供扱いされた気がするけど、この容姿が少しは役に立つみたい。
元の世界じゃなんの役にも立たなかったけど。
サリバンさんの提案で、私が魔界に来た原因がわかるまではサリバンさんのお屋敷でお世話になることが決まった。
設定としては、私はサリバンさんの親戚の子供。
両親が亡くなり身寄りがなかったため、サリバンさんが引き取ることとなりバビルスに転入させた。
これが流れということに決まったけど、元の世界の私の人生と重なっていてなんだか複雑。
「そうと決まれば転入手続きと学校で必要な物を揃えなくちゃね! 行くよオペラ。と、その前に」
ずっと何も言わずに立っていたから気にはなっていたけど、オペラさんというみたい。
女性なのか男性なのかわからないその悪魔を見ていたら、バシャッと上から液体をかけられた。
「人間の匂いを消す香水をかけたからこれで大丈夫。じゃあまた後でね」
「では、私も失礼致します」
オペラさんは表情一つ変えずに言うと、サリバンさんと共に行ってしまう。
私のせいでなんだか申し訳ないなと思いながらも今あったことをバラムさんに話すべく、入間くんと再び準備室へと戻った。
バラムさんは話を聞いて安心したみたいだけど、それでも危険とは隣り合わせだからと心配してくれる。
バビルスに通うことになったなら魔界についての勉強も出来る。
知識をつけることで危険を避けることも可能になるから頑張るようにと言ってくれた。
確かに私はまだ魔界を知らない。
これから大変な毎日になりそうだけど、協力者がいてくれることが心強い。
その後、入間くんは授業を受けに行き、私は準備室で入間くんを待つことになった。
その間、バラムさんに魔界のことを教わったりしていたのだが、何故か膝の上に乗せられて頭を撫でられている。
どうしてこんな状態になっているのかはわからないが、癖なのかバラムさん本人は全く気にせず説明を続けていた。
大人なのに、膝の上に乗せられて頭をなでなでとか恥ずかしすぎる。
バラムさんが大きいから違和感ないみたいになっているが、私はこんな事をされる年ではない。
バラムさんの年齢はわからないけど、私よりは年上に見える。
子供っぽい私と違い、見た目も中身も大人という雰囲気が伝わってきて緊張してきてしまう。
「あの……。恥ずか……しい、です」
「あ、ごめんね。癖でつい」
頭を触る手が止まりホッとしたのも束の間。
その手は私の背を撫でた。
「な、何ですか!?」
「驚かせちゃったね。でも、本当に人間は皆羽がないんだね」
悪魔はこんなにも軽く触れたりするものなんだろうか。
バラムさんは生き物が好きで、その中でも空想上の生物とされていた人間を信じ興味があった悪魔。
そんな興味の対象が入間くん以外に現れたら、空想生物学の教師としてだけでなくバラムさん個人からしても調べずにはいられないんだろう。
それでも、これだけ触り癖が激しいとこっちは驚くし、何より心臓が持たない。
悪魔とはいえ男性にこんなに触られれば緊張だってする。
「ごめんね、言ったばかりなのに」
「寝ぼけてましたが私も最初バラムさんの髪を何も言わずに触ってしまったのでこれで御互い様ということで」
「うん。僕も次から気をつけるね」
暫くの間バラムさんと話しているとあっという間にお昼を迎えたが、まだ午後の授業があるから入間くんが来るには時間がある。
何て考えていたときふと思い出す。
自分が朝から何も食べていないことを。
意識すると急にお腹が空いてくるけど、恥ずかしいからお腹の虫だけは鳴らないでと思っていた私に「お腹空いたよね」と気遣ってくれるバラムさんの一言。
人間の私でも食べられそうな物を探しに食堂に言ってくると言うバラムさんだけど、それだと準備室には私一人になる。
不安そうにする私にバラムさんは「ここにはほとんど誰も来ないから」と言い残し行ってしまった。
誰も来ないとは言われても、今にも扉が開いたらなんて考えるとドキドキする。
香水がかけられているから人間だとバレる心配はないと思うけど、もし悪魔が来て人間だとバレたらきっと食べられる。
バラムさんみたいに悪魔がみんな優しいわけじゃないだろうから。
なんて今まさに考えていたタイミングで扉が開き、カツカツと大きな足音を鳴らし入ってきたのは知らない悪魔。
それも見るからに怖そうで、目つきも悪いし眉間に皺を寄せている。
「貴様は誰だ。バビルスの生徒ではないだろう」
「あ、えっと、私は……」
なんて答えればいいのか咄嗟のことでわからず、私を睨む視線が怪しいと言っているみたい。
兎に角何か言わなければと口を開き出た言葉は「バラムさんの恋人です」だった。
やっぱり私は運が悪い。
そのタイミングでバラムさんが戻ってきたんだから。
驚く悪魔二人。
何で私はこんなことを言ってしまったのか。
これから通うことになる学校の教師との恋人宣言は問題しかないけど、この悪魔と関わらなければいい話。
今はこの嘘を貫き通す。
状況が理解できていないバラムさんに近づき「お昼を態々ありがとうね」と微笑みかける。
恋人らしく敬語は無くし、バラムさんの腕に抱きつくと椅子まで引っ張っていき座らせる。
「シチロウ、これはどういうことだ」
「いや、僕にも——」
「はい、あーん」
話がこれ以上ややこしくならないようにバラムさんのマスクを手早く外すと、持ってきてくれた食事の一つを口に入れる。
バラムさんは驚いた表情をしてたけど、戸惑いながらも合わせてくれてモグモグと食べたあとマスクを付けた。
事情はあとから話すとして、眉間の皺を深めた悪魔の視線が怖い。
ここに来たってことはバラムさんに話があったんだろうけど、今は早く出ていってほしい。
この恥ずかしい演技をやめるためにも。
この状況で用事なんて話せないだろうから、また改めて来るって事で早く出て行ってと願っていると「友達を連れて来ちゃいました」と言う声と共に、入間くんと他二名の悪魔がやって来て準備室は地獄絵図と化した。
「あの子がイルマちが言ってた転入生?」
「何だかバラム先生と親しいようですが」
入間くんの友達に見られた。
嘘なんてついからきっと罰が当たったに違いない。
でも、今更引き返すことは不可能。
「転入生だと……。まさか貴様は、明日からバビルスに転入してくるリタか」
「な、何故知って……!」
「私が貴様の明日から入る、問題児クラスの担任だからだ」
まさかの担任。
それも「わーい! 私達と同じクラスだ」と元気にはしゃぐ入間くんのお友達の女の子。
つまりここにいるのは、私の明日からの担任とクラスメイトということ。
このままではマズイと思い、バラム先生との関係を説明し直そうとしたとき「生徒と教師が恋人など認めん」などと担任の悪魔が言ったため、私とバラムさんがそういう関係だとその場にいたクラスメイトにまで伝わってしまった。
担任の悪魔は怒って出て行ってしまったけど、私が望んだ出て行くとは全然違う。
入間くんには何故か謝られたあとお友達二人を連れて準備室を出て行き、残された私とバラムさんに気まずい空気が流れる。
「えっと、これはどういう」
「ごめんなさい」
私は事の経緯を全て話すが、流石にバラムさんも困り顔。
無理もない、勝手に恋人にされた挙句他の教師と生徒数名に嘘の恋人情報が広がったんだから。
最初から転入する事を話せばよかったのに、パニックになったとはいえあんな嘘をついてバラムさんに迷惑をかけてしまった。
「今からでも正直に話してきます」
「待って。今話しても信じてもらえないかもしれないから、このままその嘘を貫こう」
確かにあの状況を見たら誰だって嘘を信じてしまう。
私の事情を知ってる入間くんなら説明すればわかってもらえるだろうけど、他はそうもいかない。
「そういえば、私の担任になる悪魔の方がシチロウと呼んでましたが」
「ああ、彼はカルエゴくん。元バビルスの生徒で同級生だったんだ」
つまり、昔からの付き合いの友達ということ。
私はなんてことをしてしまったんだろう。
もしこのせいで二人の仲が悪くなったら謝罪なんかじゃ済まされない。