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「魔関署に連絡をしてみよう。きっと君を保護してくれるはずだから」
帰れるかもしれない方法があるならそうするのがいいに決まってる。
でも私はそれを制止した。
「こんな楽しそうな状況で帰るなんて勿体無くて出来ません」
「君ねえ。魔界は弱い人間にとってとても危険な——」
「わかってます。でも、バレなければ良いですよね」
ニッと笑った私の姿を見たその悪魔は、後に「悪魔らしく感じたよ」と話していた。
普通なら放っておくと思うけど、その悪魔はとても優しくて、魔界で生活できる家とバビルスへの入学手続きまで理事長に頼んでくれた。
その代わり、毎日一回は顔を見せるという条件がつけられた。
一日の出来事を報告するために。
「優しい悪魔なんだね」
「うん。優しすぎるけどね」
私にとっての魔界での家族はその悪魔だけ。
色々過保護なくらい心配してくれるから逆に申し訳なくなる。
その代わりに過度な触り癖は受け入れている。
「その悪魔には話してないの。カルエゴ先生のこと」
「うん。人間が悪魔に恋なんて知られたらお説教されそうだから。はい、次はイルマくんが話す番だよ」
その夜は、お互い眠くなるまで話し尽くした。
イルマくんが魔界に来た理由や、私のここでの生活など様々なことを話し、喋り疲れた私は電話を終えるなり直ぐに眠りにつく。
翌日。
いつものようにイルマくんの家まで迎えにいき、四人で登校していると「なんか二人ともおかしい」とウァラクちゃんが言い出し「確かに。何やら距離が縮まっていると言いますか」なんてアスモデウスくんまで言い出す始末。
こういう時だけ意見が合う二人なんだから。
昨日のことがあるから、確かに距離は縮まったのかもしれない。
少なくても私とイルマくんは、お互いが唯一の人間。
気を許せる相手がいるだけで安心するものだ。
学校に到着し教室に入ると、カルエゴ先生の姿があり、朝から私の心臓は限界を迎えそうになる。
なんて思っていたら、カルエゴ先生の前に誰かいることに気づく。
「あれはバラム先生! 何故この教室に」
「よくわかんないけど、カルエゴ先生とは元バビルスの同級生なんだって」
アスモデウスくんの反応に答えるシャックスくん。
それよりも今、バラム先生って聞こえたんだけど、まさかと思いチラッと見ると目が合った。
逃げないと捕まると思ったときには既に遅く、ニコリと笑みを浮かべて私を持ち上げるバラム先生。
本当になんでここにいるのか。
そもそもカルエゴ先生と同級生なんて聞いてない。
「シチロウ、そいつを知っているのか」
「うん。僕の可愛い子供みたいな存在だよ」
よりによってカルエゴ先生の前で誤解を生むようなことを言われた。
私は慌ててバラム先生から逃れると、カルエゴ先生の前にグッと近づき「あくまで『みたいな存在』ですから」と念を押す。
「わかっている。こいつに子供がいて、俺が気づかないわけがないからな」
カルエゴ先生が自分の事を俺と言うレア体験。
それ程までにバラム先生と仲が良かったとは知らず、自分の身近にこんな頼もしい接点があった事を嘆く。
一目惚れしたことを話して協力を求めたいけど、相手がバラム先生では絶対にダメだと言われるに決まってる。
人間が悪魔に恋なんて考え直した方がいいとか、一時の感情だとか言われそうで話せるはずがない。
つまり、一番カルエゴ先生との接点を作れるバラム先生に協力は頼めないという事。
嘆きたくもなる事実だけど、取り敢えず今は私とバラム先生の関係から話を逸らすことが先決。
これ以上深く聞かれても答えに困るだけだ。
「バラム先生、今日は何故こちらに?」
「君の事が心配でつい来ちゃったんだよね」
更に誤解を生む展開に。
いっそのこと親戚って言えればいいんだけど。
見た目が似てないことは誤魔化せても、鳥でない時点で直ぐに嘘なのがバレて逆にそこまで隠すことで怪しさ倍増しかない。
クラスの皆に誤解されるのは構わないけど、カルエゴ先生にだけはされたくない。
なんとかして話を別の方向に逸らさなくては。
考えてもそんな瞬時に思いつくはずもなく内心あたふたしていると、口を開いたのはカルエゴ先生だった。
「これから授業だ。悪いなシチロウ」
「ううん。僕も突然来たりしてごめんね。じゃあまたね」
バラム先生が教室から去り、これ以上の危機的状況は避けることができホッとしていると、視線を感じ振り返る。
カルエゴ先生と一瞬目が合ったけど、直ぐに逸らされ「お前等席につけ」という言葉で私も皆も席に着く。
見られてた気がするけど気のせいだろうか。
もしくは、私とバラム先生が恋人関係と思い睨まれていたのかもしれない。
真面目なカルエゴ先生の事だから、生徒と教師の恋愛など認めないに決まってる。
確かに私が恋してるのは教師ではあるけど、バラム先生ではなくカルエゴ先生。
計画では、少しずつカルエゴ先生と距離を詰めていき好意を持ってもらい「教師と生徒だろうと恋はするものだ」なんて言ってもらう予定だった。
実際はこんな上手くいかないことくらいわかってるけど、妄想は自由だから。
その日の放課後、私はイルマくん達と帰るのを断りバラム先生のいる準備室へと向かった。
勿論今日の事を注意するため。
心配してくれるのは嬉しいけど、他の生徒もいる前であんな事を言われたら誤解されてしまう。
毎日報告をしているのにどれだけ心配症なのか。
準備室の前まで来て扉をノックしようとしたとき、中から話し声が聞こえ手を止める。
また変な誤解をされたくないし、他の悪魔がいてできる話でもない。
取り敢えず話が終わるまで適当に時間を潰そうかなと思っていると、目の前の扉が開かれた。
「なっ……! いつからそこに」
驚いた表情を浮かべながら言った声の主はカルエゴ先生。
普段なら喜ぶところだけど、今日の事があり誤解されているかもしれないというのに、私からバラム先生に会いに来るというこの状況での遭遇。
もしかしたらカルエゴ先生は、私とバラム先生の関係を聞きにここへ来たのかもしれない。
バラム先生なら私が人間だとバレないように説明はしてくれるだろうけど、私がカルエゴ先生を好きな事を知らない。
もし誤解に誤解を与えているなんてことになっていたら。
そう考えると頭が混乱しだし、私はカルエゴ先生の腕を掴むと「話があります。来てください」と、返事も待たずに学校の裏庭へと引っ張っていく。
勢いで連れてきてしまったけど、この先のことを全く考えておらず立ち止まる。
「おい、さっきの話を聞いていたのか」
「は、はい!」
つい頷いてしまったが、さっきの話というのはきっとバラム先生との会話。
話し声は微かに聞こえていたけど、何を話していたのかまでは知らないのに返事をしてしまった。
何故かいつも以上に怖い顔をしている。
聞かれたらいけない内容だったのかもしれない。
今からでも聞いていないと訂正しなくては。
「あの——」
「聞いたからには覚悟しておけ。生徒が相手だろうと、悪魔は自分の欲が第一だからな」
ニヤリと笑ったカルエゴ先生にドキリとした私を残し、先生はその場を去る。
一体なんのことだかわからないけど、初めて見る悪魔らしい笑みに今も心臓が高鳴り続ける。
何を覚悟するのかわからない私は、しばらくその場に立ち尽くした。