人の欲も無限
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その後、バラム先生が教室を去ったあとも、私は放課後の事を考えていて、心ここにあらずな状態が続いた。
カルエゴ先生から何回叱られたことか。
それでも考えてしまう。
準備室に呼んだということは、他に聞かれたらマズイ話。
人間と悪魔、そして使い魔と主人の関係なら聞かれたくない内容はいくつもあるけど、問題は二人きりということ。
今のこの訳のわからない感情でバラム先生と会うのはいけない気がする。
だからといって行かないわけにはいかない。
どうしたらいいのか考え、私はある事を思いつく。
放課後。
私は入間くんにベッタリのアズくんとクララちゃんを引き離して準備室へと向かう。
二人きりという空間に問題があるなら増やせばいい。
入間くんにバラム先生は噂みたいな悪魔じゃないと知ってもらういい機会でもあるから。
よくわからないまま引っ張られている入間くんはアタフタしてる。
私はその場に立ち止まり、周りに誰もいないことを確認してから入間くんの耳元でコソッと事情を説明した。
勿論私自身の感情は伏せて。
バラム先生に準備室に呼ばれたこと、良い機会だから入間くんにもバラム先生を知ってもらいたいということを話す。
アズくんから聞いている噂と今日教室で見た見た目のせいか、少し不安そうな入間くん。
「大丈夫。凄く優しい悪魔だからきっと兄さんとも仲良くなれるよ」
自信を持って口にすれば、安心したのか入間くんは笑みを浮かべ頷いてくれる。
私の言葉を心から信じてくれているのが伝わって嬉しい。
本当に私は、入間くんが兄さんで良かったと思う。
準備室の前まで来ると、私は扉をノックする。
中からバラム先生の返事が聞こえて入れば、入間くんがいた事に少し戸惑っていた。
私だけでも緊張していたから、もう一人人間が増えれば無理もない反応。
「兄さん、じゃなくて、入間くんも連れてきてしまったんですが大丈夫でしたか?」
「少し驚いたけど大丈夫だよ。人間が二人もなんて夢みたいだ。今魔茶を淹れるから座っててね」
近くの椅子に二人座ると、バラム先生が魔茶を淹れてくれる姿を見詰めた。
横をチラリと見れば、入間くんの口元に笑みが浮かんでいる。
自分の力で溢さないように、慎重に淹れるその姿を私も最初に見たときは同じ反応をしたなと思い出し私まで口元が緩む。
バラム先生が淹れてくれた魔茶を受け取り早速本題かと思いきや、バラム先生はジッと入間くんを見ていた。
「えっと、どうかしましたか?」
「あ、ごめんね。触りたいなと思って」
入間くんの言葉にまさかの返し。
皆が嫌がる触り癖がようやく見られるのかとワクワクしながら入間くんの反応を待つと「いいですよ」と了承してくれてガッツポーズをしたくなった。
バラム先生はヒョイッと入間くんを持ち上げると椅子に座り、自分の膝の上に乗せる。
頭に手を置いたりと触りまくるバラム先生。
これを皆毎回されて嫌がっているのかと思うと逆に羨ましい。
私なんてロビン先生の授業で一方的に抱きしめただけで、触りたいなんて一度も言われてないのに何で初対面の入間くんにだけ。
モヤモヤとしだす自分の気持ちをブンブンと頭を振ってかき消す。
羨ましいなんて思ってはいけない。
嫉妬なんてしちゃダメ。
私のこれは恋とは違うんだから。
「先生、お話があって呼ばれたんじゃ……」
「あ、そうだった」
今の言い方は少し拗ねた感じになってしまったけど、二人の世界みたいな空気を出されたら誰だって拗ねるよね。
私を呼んだ理由は使い魔としてのバラム先生の名前についてだった。
今日のロビン先生の授業で名前がないと不便だと思ったようだ。
確かに、バラム先生と他の悪魔達の前で呼ぶわけにはいかない。
名前は私が決めていいと言ってくれたけど、今も膝の上に乗せた入間くんを触っているのが気になる。
最初はバラム先生の触り癖が見れるとワクワクしたけど、今はモヤモヤして嫌だ。
また私は嫌なんて考えていた。
恋じゃないと思いたいのに、勝手に気持ちが膨らんでいくみたい。
今は使い魔としてのバラム先生の名前を考えなくては。
一時の感情に流されてはダメ。
こんな環境の中にいるから気持ちが不安定なだけ。
自分の膨らむ感情を無視して名前を考える。
「あの、バラム先生……」
「あ、ごめんね。つい触り過ぎちゃったね」
私が心と脳内で戦っている間にようやく入間くんは開放され、モヤモヤが少し落ち着いてようやく名前を考えられるようになった。
どんな名前がいいだろうかと考えたとき、ふと思い出す。
「決まったかな」
「ピーちゃん、はダメですか」
今日バラム先生が使い魔になりきってくれた時の鳴き声が、私の脳裏に浮かんだから提案してみたけど却下だろうな。
ピーちゃんなんて可愛らしい名前、やっぱりダメだよねと思っていたら「いいね」なんてまさかの返事。
「いいんですか?」
「君が決めたんだからいいに決まってるよ」
ニコッと笑みを向けられた瞬間、細い糸で繋ぎ止めていた感情が一気に溢れ出す。
この好きの気持ちが本当に恋なのかわからないけど、もし一時の感情だとしても、今の私にはこれが本物。
悪魔が自分の欲を一番に考えるなら、私も自分の欲を一番に考えてもいいよね。
手に力を込めると、私は今の自分の欲を口にする。
「先生、私の事も触ってください」
「え! いいの!?」
恥ずかしさで顔を伏せながらコクリと頷けば、私の体はバラム先生に持ち上げられ膝の上に乗せられた。
先生は大きいから入間くんの時も全身を包み込む形になっていたけど、私の場合は更に小柄だから覆い被さられているという表現のが正しく感じる。
躊躇なく入間くんと同じ様にするのをみると、先生にとって私は他の生徒と同じということなんだろう。
当然だと思うし、今はそれでいいと思ってるはずなのに、気づけば言葉が勝手に出ていた。
「先生、好きです」
「え、それはどういう……」
少し戸惑ったように尋ねる先生。
私は誤魔化すように「使い魔になったピーちゃんの姿が可愛らしくて」と誤魔化した。
その言葉で先生の表情が緩むけど、私の心臓は今も高鳴り続けてる。
なんだか一つ欲を口にしたら、更にと求めてしまうみたいで怖い。
真っ赤になった顔を見られないようにずっと伏せていたけど、そういえばと入間くんもいることを思い出し視線を向ける。
いつも通りお花がパッと咲いたような笑顔を見せてくれた入間くんだけど、今までの会話も全て聞かれていたと思うと恥ずかしい。
私の欲はまだまだ先なのに、今でこの調子だと少し不安になる。
でも先ずは、バラム先生に私を意識してもらうのが最初の課題になりそう。