人の欲も無限
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リタ
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「先生は、私に何かしたわけではないですから、怖がる理由はありませんよ」
「そうなんだけど。皆は僕の事を怖がってるから……」
少し寂しそうに見えた瞳。
私は自然と手を伸ばし、バラム先生の手に触れる。
まだ緊張しているのかビクッと体を揺らしたけど、髪の間から覗く瞳が私と合う。
「先生は優しくて素敵な悪魔です。見た目ではなくて、私は中身が一番大切だと思います」
先生は目を見開いたあと、つけていたマスクを外した。
露わになった口の半分は裂け、鋭い牙は剥き出しになっている。
最近のものではない事はなんとなくわかるが、見るからに痛々しい。
マスクで隠していたのはこれなんだとわかったけど、何故見せてくれたのか聞けば「君ならどんな僕の姿も受け入れてくれる気がしたんだ」と柔らかな笑みを向ける。
悪魔なのに悪魔らしくないバラム先生に、私はクスリと笑みを溢す。
バラム先生の事を少し知ったところで、その日私は人間であることを知る悪魔と使い魔を同時に手に入れた。
その翌日。
私はまたもカルエゴ先生に呼ばれた。
着いた先は外で、そこには緑の髪をした悪魔の姿。
昨日と同じくカルエゴ先生はその悪魔に私を任せて行ってしまう。
まるでデジャブ。
明るく元気のいいこの先生の名はロビン先生。
使い魔学教師である先生のもと、私は使い魔との触れ合いをすることになった。
確か入間くんがそんなことをしたと話していたけど、私は使い魔がいなかったから参加しなかったことを思い出す。
使い魔が出来たことで、皆とは少し遅れた授業ということなんだろうけど、私の使い魔はバラム先生。
同じ先生同士ならいくら見た目が違っても気づかれてしまいそうだけど、かといって使い魔を出さないことには授業は進まない。
このまま悩んでいても仕方がないため、私は使い魔を召喚する。
バラム先生なら状況を理解して上手くやってくれることを信じて。
「鳥の使い魔だね。じゃあ早速これを使って遊んでみて」
渡されたのは円盤型のフリスビーらしきもの。
これを投げて遊ぶんだろうけど、その前にバラム先生に事情を説明しなくてはと、パタパタ宙に浮く先生を両手で優しく掴んで自分へと引き寄せる。
ロビン先生に背を向け、こっそりと手短に事情を説明すれば直ぐに理解してくれた。
先生にこんなワンちゃんみたいな事をさせるのは申し訳ないから、ササッと終わらせようと円盤を投げる。
バラム先生は華麗に空中でチャッチして私の元に届けてくれる。
言葉を話すわけにもいかないから「ピー」と鳴き真似をしているのが申し訳ないのに可愛くて癒やされてしまう。
その後、ロビン先生の指示通りいろんな事をして遊ぶと、ようやく終了の言葉をもらえて授業は終った。
終始バラム先生の鳴き声が上がる度に癒やされてしまったけど、私のせいで迷惑をかけてしまったことを謝罪する。
先生は怒った様子もなく、それどころか「こうして遊ぶのも楽しかったよ」なんて言ってくれて、その可愛さにキュンとしてしまう。
元の姿は大きくてガッチリしてるから男って見た目的にも思うけど、今のバラム先生は小さな鳥の姿。
「リタちゃん!?」
「あ、ごめんなさい。つい可愛くて」
先生を両手包み込むようにして自分の胸へと引き寄せると、私はキュッと抱きしめていた。
鳥の姿だから表情はよくわからないけど、声の感じからして驚いている。
突然こんな事をされれば人間に触る事を緊張してる以前に、驚くのは当然の反応。
今日アズくんにバラム先生の事を聞いたら、触り癖が激しい先生だと言っていたけど、今の所私は先生から触られたことは一度もない。
空想生物学教師なわけだから、人間なんて触りたい対象だと思う。
緊張が無くなれば触ってくれるんだろうかと考えたとき、顔がカッと熱を持つ。
「顔が赤いみたいだけど疲れたかな?」
「そうみたいです。先生、今日はありがとうございました」
召喚を解除し、先生が元の場所へと戻ったあと私は自分の頬を両手で触る。
さっきの自分の考えだと、バラム先生に触られたいと思ってるみたいだ。
確かに皆が嫌がる触り癖がどんなものなのかは気になるけど。
「そうだよ。触られたいんじゃなくて、皆が嫌がるなんてどれほどなのか気になるだけ」
そのはずなのに、何故か私の鼓動はドキドキと煩く脈打つ。
まるで恋をしてるみたいだけど、悪魔に、それも自分より年上の先生を好きになるはずがない。
先生が言ったように遊んで疲れたのかなと思いながら、私は教室へと戻ると使い魔との仲を深める為の授業だったことを入間くんに話す。
バラム先生がバレない様に使い魔のフリをしてくれたからロビン先生に気づかれずに済んだと、皆に聞こえないようにコソッと伝えれば「よかったー」と安心してくれた。
私が人間だと知られて、結果的に入間くんまで人間であることがバレる形となってしまったのが申し訳ない。
アズくんからバラム先生について色々聞いたらしく、入間くんの中でバラム先生は危ない悪魔という認識になっているみたい。
本当は凄く優しい悪魔だから誤解を解きたいなと思っていたら、突然私以外の皆が悲鳴を上げた。
どうしたのかと皆の視線の先を見れば、教室の隅でバラム先生が私をジッと見ていた。
流石にあれは怖いよね、とは思うものの「あれバラム先生だよな。生徒捕まえて実験してるっていう」なんて皆が噂だけで怖がっているのが聞こえて何だか悲しい。
本当は凄く優しい先生なのに。
「シチロウ、何故お前がここにいる」
「ごめんね突然来て。皆を怖がらせちゃったね」
教室にやってきたカルエゴ先生と話すバラム先生。
私の使い魔召喚の儀式でも親しそうに名前を呼び合っていたのを思い出していると、一人の生徒が二人の関係を尋ねた。
「僕達、元バビルスの生徒で同級生なんだ」
皆が心の中で同じことを思ったに違いない。
カルエゴ先生に仲のいい悪魔なんていたのかと。
二名ほどその心の声がカルエゴ先生に聞こえたらしく頭を掴まれている。
痛そうだなーと見ていたら、いつの間にか私の側に近づいてきていたバラム先生が皆に聞こえないように声をかけてきた。
今日の放課後、前に行った準備室に来てほしいという内容。
どうやらそれを伝えに態々来てくれたみたいだけど、直ぐ隣にバラム先生がいるのを意識すると全身が熱くなる。
私は一歩だけ横にズレると「わかりました」と顔を伏せながら頷く。
これで顔は見られてないはず。
赤くなっているであろう顔なんか見られたら、意識してますと言ってるようなものだ。
「え……。私、意識してるの……?」
「ん? 何か言ったかい」
「い、いえ、何でもありません」
やっぱり私は可笑しい。
他の悪魔とは何ともないのに、何でバラム先生にだけこんな感情を持つのか。
バラム先生が優しいから。
唯一サリバンさんやオペラさん、入間くん以外で人間であることを知ってる悪魔だから。
他の悪魔と違う理由ならある。
なのにどの理由もこの感情に当てはまらない。
まだ出会って数日なのに、バラム先生のいろんな姿を見て惹かれてる。
子供が大人に憧れたりするのはよくあること。
恋愛感情と一緒にしてはいけない。
私のこれは恋ではない。