宛先は誰にも知れず
名前変更
名前変更お話にて使用する、夢主(主人公)のお名前をお書きくださいませ。
【デフォルト名】
巫兎(みこと)
囚人番号:211
※囚人番号は固定となります。
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今日も5舎は平和、と思いきや、5舎の看守である猪里と猿門がある一枚の紙を険しい表情を浮かべ見つめていた。
「おい、これって……」
「間違いなくラブレターってやつッスね」
看守室にて、巫兎が落としていった一枚の紙、そこには、いつも側にいてくれて、支えてくれてありがとう、恥ずかしくて言えなかったけど、大好きだよと書かれている。
だが、相手の名前は何処にも書かれておらず、巫兎が好きな男が誰なのかはわからない。
「あーっ!!巫兎の好きな奴って誰なんだー!!」
「キーキー騒いだところでどうしようもないし、本人に聞くのがいいんじゃないんスか?」
「あ?ならお前が聞いてこい!」
「俺はパスで」
巫兎の好きな男が誰なのか気になるものの、二人には聞く勇気がなく、しばらく紙とのにらめっこは続いた。
好きな女に好きな人がいると知っただけでもショックは大きいが、その相手を知ったところでどうしようもなく、逆に何故そんなことを聞くのかと巫兎に怪しまれかねない。
運が悪ければ、自分の気持ちが巫兎に知られてしまうかもしれないというリスクもある。
そんなことを考えていた二人の元に、巡回を終えた巫兎が戻ってくると、猪里と悟空は慌てて何事もないふりをする。
「えーと……あ!あったあった」
そう言いながら巫兎はあの紙を手にすると、そっと自分のデスクの引き出しに仕舞い、休憩室へと行ってしまう。
巫兎が行ったことを確認すると、二人はほっと胸を撫で下ろすが、まだ問題は残っている。
「やっぱ猪里、お前が聞いてこい」
「イヤッスよ!俺の気持ちが巫兎に知られたらどうするんスか!?」
「その時は潔く散ってこい」
この瞬間、猿門が猿ではなく鬼に見えた瞬間だった。
だがその時、猪里はいいことを閃き猿門に提案する。
それは、囚人に頼んで巫兎から聞き出してもらうという方法だ。
最初は、囚人に頼むなんてと猿門は納得しなかったが、考えても他にいい案がでず、渋々ながら囚人に頼むことになったわけだが、その相手に選ばれたのは5舎8房だ。
「わかりました!猪里さんの頼みなら聞きませんが、猿門さんの頼みなら」
「そうですね。ボクも猿門さんの頼みなら協力しましょう」
言葉にどこかトゲがあるものの、猿門の頼みならと、囚人番号2番のリャン、58番のウパは頷く。
5舎8房にはもう一人囚人がいるのだが、何故呼ばないのか、それは、何となくリャンもウパもわかっており聞くことはなかった。
「今日の鍛練は巫兎に任せてある、お前ら頼んだぞ」
「んじゃ、よろしくな~」
二人が房を去った後、巫兎が囚人達を迎えに来ると、演習場での鍛練が開始された。
そしてその頃の猪里と猿門はというと、猪里は相変わらずサボって何処かへと姿を消し、猿門は仕事をしているものの、その手は先程から動いていない。
「アイツら、巫兎に上手く聞き出せたかな……。って、今は仕事に集中だ!!まったく猪里の奴、後から説教だな」
そして猪里はというと、一人休憩室の椅子に座り新聞片手に、競馬を聞いていた。
「あー!!また負けちまった!!」
叫びながらイヤホンを外すと、猪里は天井を見上げ、巫兎の事を考えた。
一体巫兎の好きな相手は誰なのか、それを知ったところで自分に勝ち目がないことはわかっている。
巫兎は猪里より遥かに若い女であり、猪里は巫兎にとっておじさんみたいなもんだ。
「俺じゃあ恋愛対象にすら見られてねぇんだろうな」
ぽつりと呟いた言葉はどかこか悲しげで、静かな休憩室で消えてしまうと、猪里は再びイヤホンをつけ競馬を聞く。
5舎の看守二人を恋に落とした巫兎だが、見た目は普通で特別可愛いわけでもない。
美人かと聞かれれば、特別美人というわけでもなく、その辺にいるような普通の女なのだ。
なら何故、そんな巫兎に看守二人も恋に落ちてしまったのかというと、彼女の外見ではなく中身だった。
「あれ?ここに置いといた書類がねぇ……」
「あ、それなら片付けておきましたよ」
こんな風に巫兎は、色々なことに気を回し、自分の仕事だけでなく皆の手伝いをしていた。
最初は、真面目なんだなと思っていた猿門だったが実際は違った。
「ん?アイツ何してんだ?」
もう勤務時間は終わりだというのに、宿直で残っていた猿門しかいないはずの5舎に巫兎の姿がある。
何をしているのかと思えば、どうやら他の看守から引き受けた資料の整理をしているようだ。
自分の仕事でもないのに、残ってまで他の看守の仕事をする巫兎がよくわからず、猿門は看守室へと入り声をかけた。
「何で自分の仕事でもねぇのに引き受けてんだよ」
「猿門主任……。う~ん、何でですかね、自分でもわかりません」
「は?」
巫兎の返事に、猿門は更に巫兎のことがわからなくなる。
「でも、人のお役に立てるのは嬉しいですから」
そう笑顔で言う巫兎に、猿門の胸が高鳴った。
何で高鳴ったのか、この時の猿門にはわからなかったが、巫兎のデスクに置かれた資料を半分持つと自分のデスクへと運ぶ。
「え?あ、あの」
「二人でやった方が早いだろ」
「ですが、猿門主任は宿直で……」
「どうせいつも問題ねぇから暇なんだよ。わかったら手ぇ動かせ」
巫兎は柔らかな笑みを浮かべると、はい、と返事をし、二人で資料を片付けていく。
「あん時はわかんなかったが、今ならわかる」
そう、あの時から猿門の気持ちに変化が現れたのだ。
人のために頑張る巫兎の姿を見たあの瞬間から。
ただの仕事真面目だと思ったら、皆のいないところで一人頑張っていたあの姿を知ったあの日から、猿門は巫兎に惹かれていった。
そして猪里も、猿門と同じく巫兎の頑張りを知っている一人だった。
猪里が宿直の日、一人残って頑張る巫兎の姿を見た。
だが、面倒なことを自分からやろうなんて思いもしない猪里は、そんな巫兎に声をかけることはない。
そんな巫兎の姿を、猪里が宿直の日には毎日目にし、また今日も残ってんのかくらいにしか思ってなかった猪里に変化を与えた。
「お前ってさ、何で毎日そんな面倒なことしてんだ?」
今まで関わろうともしなかった猪里だが、その日は何の気まぐれなのか、気づくと声をかけていた。
そんな猪里に、巫兎は笑みを浮かべると、人のお役に立てることが嬉しいんですと答える。