人を思い人を想う
名前変更
名前変更お話にて使用する、夢主(主人公)のお名前をお書きくださいませ。
【デフォルト名】
巫兎(みこと)
囚人番号:211
※囚人番号は固定となります。
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「それがね、今日13舎に書類を届けに行ったの!」
「ああ、それで13舎の看守に会ったんだ。確か双六 一だっけか?」
「うん!主任に感謝だよ」
ハジメとの秘密を持てたのも、全ては巫兎に書類を頼んだ犬士郎のお陰だ。
「犬ちゃんって変わったよね」
「え?」
「だって前だったら、職務に私情を持ち込むなって怒ってたんじゃないかな?犬ちゃん真面目だし」
言われてみればそうかもしれないと思った巫兎だが、恋は犬士郎もしているため、わかってくれているのだろうと自分の中で納得する。
そんな会話をムサシと交わしたあと看守室へと戻ると、そこに犬士郎の姿はなかった。
「あー、そう言えば、今日は午後から会議だとか言ってたっけ」
会議と言えば、各舎の看守は勿論、犬士郎が想いを寄せる看守長もいる。
きっと犬士郎も浮かれて帰ってくるのだろうなと想像すると、巫兎の口が緩む。
やはり恋をするもの同士、犬士郎が嬉しいと巫兎も自分のことのように嬉いと感じてしまう。
「私も何か恋のお手伝いできたらいいんだけどなぁ」
今回犬士郎がしてくれたように、自分も犬士郎の恋を応援したいと思うのだが、相手が看守長ではそれも難しく、そもそも、ただの看守である巫兎では看守長と会う機会すらない。
何かないかと考えていると、扉が開く音にハッとし視線を向ける。
「仕事もせず何をしている」
「あ、主任、お疲れ様です」
どのくらいの時間考えていたのか、会議を終えた犬士郎が看守室へと戻ってきた。
「お疲れ様です、ではない。何をサボっているのかと聞いている」
「えっと、どうしたら主任の恋を応援できるかなと考えてまして……」
「ッ……!!人の心配より自分の恋を考える方のが先ではないのか」
顔を真っ赤に染めながら言われた言葉に、巫兎はまたも考える仕草をする。
何故こんなにも犬士郎の恋のことで考えているのか、自分でもよくわからないのだ。
勿論、今回の件のお礼というのもあるのだが、人の恋でこんなにも人は考え悩めるものだのだろうか。
「貴様……いい加減に仕事をしろっ!!」
「は、はいっ!!」
犬士郎に怒られ、巫兎は慌てて資料を手にすると整理を始める。
やはり犬士郎の真面目は変わっておらず、巫兎はそのあとテキパキと仕事をこなしていった。
それからようやく休憩時間となったのだが、犬士郎はまだやることがあるらしく、先に巫兎は休憩室へと向かう。
「お前も休憩か」
「は、はい!」
休憩室の扉を開くとそこにはハジメの姿があり、予想していなかったことに驚き動揺してしまう。
鼓動を高鳴らせながら椅子に座るが、ハジメの存在が気になり休憩どころではない。
折角の二人きりというチャンスだというのに、何を話したらいいのかわからず考えていた時、今日の13舎でのことを思い出し口を開く。
「あの、13房の囚人はあの後は脱獄はされませんでしたか?」
「ああ、そうだったらどれだけいいか……」
「お察しします……」
ハジメの表情を見れば言わずともわかってしまい、ストレスも凄いのだろうなと同情してしまう。
だが、こうして秘密を話せるというのは、何だか特別な感じして、ハジメには悪いが巫兎は嬉しいと感じていた。
それから13房のことや仕事のこと、色々な話をハジメとしていると、休憩室の扉が開かれ犬士郎が中へと入ってくる。
「主任、お疲れ様です」
「ああ。随分と話が弾んでいるようだな」
「はい!」
犬士郎がいるため、13房の脱獄の件の話はできなくなったが、仕事のことや車のことなど、ハジメと巫兎は驚くほど話が弾んだ。
今まで仕事のことで話す機会はあったものの、こうして話すのは初めてであり、一度話し出してしまうと好きな人を目の前にしていても自然と言葉が口から出る。
「ふふ、仁志くんってお家でもそのままなんですね」
「ああ。アイツに何度車を壊されたことか……」
仁志というのはハジメの弟であり、同じく南波の看守をしている。
巫兎と犬士郎と同じ4舎の看守であり男なのだが、髪は2つ結びのツインテール、そして、服装はロリータファッションという女装癖がある看守だ。
ハジメとは似ていないというのが初対面の正直な感想だが、ハジメに似て頑丈であり、コンクリートにぶち当てられても平然としていたりと、やはりハジメの弟だと納得してしまう。
「おい、そろそろ仕事に戻るぞ」
「え?あっ!もうこんな時間!?」
「ヤベッ!話に夢中で時間忘れちまってた」
犬士郎に言われ視線を時計へと向けると、すでに休憩時間終了間近となっており、巫兎はハジメと別れ、犬士郎と4舎の看守室へと向かう。
ハジメとあんなに長く話したのは初めてで、巫兎は心が踊る気持ちで看守室へと向かう足が弾む。
「双六 一とは上手くいっているようだな」
「そう見えますか?ふふ、今日は沢山話しちゃいましたし、これも全て主任の、ッ!?」
お蔭だと言いかけたその時、巫兎の目の前に手が伸ばされ、その手は音を響かせ壁につく。
前を塞がれ立ち止まると、巫兎は驚きの表情を浮かべながら横を見る。
すると、何故か殺気を放つ犬士郎の姿があり、どうかされたんですかと巫兎は声をかけた。
「私が、お前と双六 一との恋に協力した……」
「はい、なので私は主任に感謝を」
「感謝、か……。今の私の心は醜い、お前と双六 一が仲良く話している姿を見て、私は喜ぶことができなかったのだから……」
「え……?」
犬士郎の様子が可笑しく、話している言葉も巫兎には理解ができず、ただ黙って犬士郎の言葉を聞くことしかできない。
ただわかるのは、犬士郎が辛そうだということであり、その原因は自分なのだろうということだけだ。
「すまない。私はどうかしていたらしい、今のは忘れてくれ」
前を塞いでいた手がゆっくりと退けられ、歩き出す犬士郎の背に声をかけたかったのだが、巫兎の口から声は出ず。
ただ、犬士郎の辛そうな表情を思い出すと、胸がズキンと痛み切なさを感じる。
何も出来ない自分の無力さを感じながら、巫兎は犬士郎の後を追い、看守室へと向かった。
《完》