君の声は、震える鈴の音のようで
名前変更
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巫兎(みこと)
囚人番号:211
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今日からこの南波刑務所に入ることになった女がいた。
女が入るのは3舎6房なのだが、そこの主任看守部長である三葉 キジから聞いていた6房の男二人は、女が入ることを待ち遠しく思っていた。
「キジさんまだかな」
「キジさんの話じゃかなりの美人らしいからな。トロワ、お前変なこと言うんじゃねぇぞ!」
「やだなぁ、僕はハニーくんとは違うんですから。ハニーくんこそ変なこと言って引かせたりしないでくださいよ?」
何時ものように喧嘩が始まりかけたそのとき、房の鍵が開きキジが中へと入ってくる。
その瞬間、二人の喧嘩はピタリと止み、視線は扉へと向けられた。
「ほらアンタ達、喧嘩はおしまいよ!ほら、アナタはこっちに来なさい」
キジの声で扉からひょっこり顔を出したのは、二人のストライクゾーンド真ん中の女だった。
何時もならすかさず口説く二人だが、この時だけは言葉を失い、ただ呆然と立ち尽くすだけだ。
「この子が今日からこの6房に入る巫兎よ!って、何二人とも顔赤くしてんのよ」
キジの声で我に返った二人は、我先にと巫兎の手を取り自己紹介をする。
「綺麗なお嬢さん初めまして。僕はトロワと申します」
「私はハニーと申します」
キラキラとイケメンオーラを輝かせた二人に両手を取られた巫兎はというと、その顔はどんどん青ざめている。
その様子を見ていたキジは、片手で頭を押さえながら溜め息をつく。
そして次の瞬間、巫兎の悲鳴が3舎中に響き渡った。
「キジさん、これって……」
「女に悲鳴を上げられるなんて……」
二人がショックを受けるのも無理はない。
悲鳴を上げた巫兎は今、ガクガクと震えながら房の隅で座り込んでいるのだから。
今までかっこよすぎるが故に悲鳴を上げられたことはあるものの、今回の悲鳴はそれとは全くの別物であり、二人は一体何が起きたのか理解不能だった。
「はぁ……。アンタ達、私の話を最後まで聞いてなかったでしょ」
そう、この6房に美人が来るという言葉には続きがあったのだが、ハニーもトロワもその後の言葉など耳に入っていなかったのだ。
その言葉の続きというのは、巫兎は男嫌い、特にイケメン嫌いということであり、馴れるまではそっとしておくようにとキジは伝えていた。
「なのにアンタ達ときたら……。あれじゃあ尚更男嫌いになっちゃうじゃないのよ!!」
「大丈夫ですよキジさん、女性は誰だってイケメン好きですから」
「そうですよ。私に落とせない女性はいませんから」
「だといいんだけど……。アタシはこの後用事があるから行くけど、取り敢えず巫兎のことは任せたわよ」
ギジが房から離れていくと、トロワとハニーは、今も隅で震えている巫兎へと視線を向け声をかけた。
「巫兎さん」
「そんなに怯えなくても大丈夫ですよ」
二人が声をかけるも、巫兎は振り向かないまま震え続けている。
「ハニーくんが巫兎さんの手を握ったりするからですよ」
「あぁッ?それはお前もだろうが!!」
突然のハニーの豹変した声を聞き、巫兎はとうとう恐怖から逃げるように両耳を手で押さえてしまった。
「あ~あ、ハニーくんのせいで」
「なんだとッ!!もとあと言えばテメェのッ……」
ハニーが言いかけた言葉を呑み込んだため、トロワは不思議に思いながらハニーの視線の先を見ると、そこには、隅で今も震えている巫兎の背があった。
その背を見た二人は言い合いをやめると、お互いに顔を見合せる。
「今日は喧嘩は無しだ」
「そうですね、ギジさんからも巫兎さんのことを頼まれたことですし」
二人の意見は一致したらしいが、どうしたら巫兎が怖がらずに話してくれるのかわからず、取り合えず声をかけまくる二人だったが、一向に巫兎は反応を示さない。
口説いてみたり、普通に声をかけてみたりと試してみるが、どれも返事はなく、遂に為す術を無くした二人は座り込んでしまう。
「ハニーくん、他に何か方法はないの?」
「あったらとっくにしてるっつぅの」
ギジには、私に落とせない女性はいないと言ったものの、ここまでしてなんの反応も示さないようでは、ハニーもトロワもどうすることもできない。
「あーッ!!考えたって仕方ねぇ!」
「え?ハニーくん、何するつもり!?」
ハニーは突然立ち上がると、隅で耳を塞いでいる巫兎の腕を掴んだ。
突然のことに巫兎は伏せていた顔をバッと上げると、思った以上近くにハニーの顔がある。
そして、それはハニーも同じであり、思った以上に近い距離に鼓動が高鳴り熱くなる顔を隠すように逸らすと、そのまま口を開く。
「怖がらせて悪かった……」
小さな声で呟くように漏らした言葉はいつもの猫被りなんかじゃなく、ハニー自身の言葉だった。
その素直すぎる言葉に、トロワは驚きの表情を浮かべている。
だが、巫兎からの返事はなく、やっぱり駄目だったんだろうかとハニーが視線を向ける。
すると、そんなハニーの心からの言葉は巫兎にも伝わったらしく、巫兎の表情は笑みへと変わっていた。
その美しくも可愛い笑みに、少し離れた場所にいるトロワの鼓動も脈を打ち、間近で見てしまったハニーは顔を真っ赤にさせている。
笑顔を向けてくれた、ただそれだけのことで、こんなにも胸を掻き乱されるこの感情は正しく恋をした瞬間だった。
「で、何で今度はアンタ達二人が隅で丸くなってんのよ!!」
用事を済ませ6房へと戻ってきたギジが目にしたのは、何故かハニーとトロワが隅で丸くなり、その様子を不思議そうに見つめる巫兎の姿だった。
「一体何があったのよ!」
「キジさん……僕、胸が痛いんです……」
「これが愛の痛みなんだな……」
「アンタ達、全然意味わかんないわよ」
そんなこんなで新しい囚人が入り色々あったわけだが、それから数日が過ぎた頃には、トロワもハニーも巫兎を見れるまでに成長していた。
だが、相変わらず巫兎は声をかけても返事はしてくれず、まだあの悲鳴以外の声を聞けていない。
それでも少しずつ変化はあり、返事はしてくれないものの反応は示してくれるようになり、表情も色々と見せてくれるようにまでなっていた。
「巫兎さん、今日は何色の…………」
トロワが巫兎に何か言いかけるも、言葉は途中で終わってしまう。
不思議に思った巫兎は首を傾げ言葉を待つが、その続きは聞けぬまま、トロワは何故か部屋の隅で肩を落とす。
「何故なんだッ!何故僕は巫兎さんに下着の色を聞くことができないんだッ!!」
「情けねぇなトロワ」
「なんだい、ハニーくんには聞けるっていうのかい?」
「ああ、そんなの簡単だぜ!」
そんな話をしているなんて知りもしない巫兎は、一体何を二人は話しているのだろうかと見つめていた。
すると、今度はハニーが巫兎へと近づき口を開く。
「巫兎、アンタの下…………」
トロワと同じくハニーまでもが言葉を途中で止めてしまい、続きの言葉がなかなかハニーの口からは出てこない。
「あー……アンタの……そのだな、あれだ!あれ!」
あれだけで言葉が通じるわけもなく、巫兎の頭には沢山のハテナマークが浮かんでいる。
そんな巫兎の可愛い姿を前にして、下着の色は何かなど聞けるはずもなく、ハニーはトロワの元へと戻ると肩を落とした。
「無理だ、聞けねぇ……」
「簡単だとか言っておいて、結局ハニーくんも聞けないんじゃないか」
「うっせーな!!お前だって聞けねぇだろうが!!」
二人壁に片手をつくと、大きな溜め息を漏らし肩を落とす。
「一体あの子達は何やってんのよ……」
そんな様子を扉から見ていたキジは、やれやれといった様子で呆れていた。
好きな人相手にそんなこと簡単に聞けないのは普通であり、好きな相手にすでに聞くような質問でもない。
「それ以前に、好きな相手じゃなくても普通はそんなこと聞けないわよ」
気になって様子を見に来たキジだが、まぁ問題なくやっているようなのでとくに声をかけることなくその場を去る。
そして、房の中の3人はというと、トロワとハニーはまだ隅で落ち込んでおり、巫兎はそんな二人の様子を心配そうに見つめていた。