紡ぐ言葉は幸せ笑顔
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巫兎(みこと)
囚人番号:211
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今日はロックの鍛練に付き合い5舎に来ていた巫兎だったが、見学のはずが大和に無理矢理付き合わせれてしまっていた。
ついた早々グランド100周など、普通の男にだってできなそうなことが女の巫兎にできるはずもなく、巫兎は5周もしないうちに地面に倒れてしまった。
息をきらしながら視線だけを向けると、大和とロックは今もまだ走り続けている。
今でもう二人は20周もしており、それでも二人平気な顔をして走り続けている。
そんな二人とは対照的に、巫兎はもう走ることはできず、呼吸を落ち着かせてからベンチへと座り、二人が走る姿を眺めていた。
「凄いなぁ、ロックくん」
皆大和の鍛練には音を上げるというのに、ロックは嫌がりつつも鍛練をこなしている。
そんな姿はかっこよく見え、気づくとロックを目で追ってしまっていた。
「アイツ、根性はあるからな」
「ッ……!」
突然聞こえた声に視線を向けると、いつの間にか来ていた5舎主任、悟空 猿門の姿がそこにはあった。
猿門が来たことに気づかない自分は、どれだけロックしか見えていなかったのだろうかと恥ずかしく感じ頬が熱くなる。
「おい、顔が赤いみてぇだが大丈夫なのか?」
「は、はい!大丈夫です!!」
大袈裟なくらいに慌てて胸の前で手を振りながら言うと猿門は、ならいいんだがと言い、再び視線をロックへと戻し口を開く。
「様子を見に来たんだが、いつも通り真面目に鍛練してるみてぇだな。だが、今日はお前まで一緒なんて珍しいじゃねぇか」
「まぁ、私は見学だけのはずだったんですけど……」
「大和のことだ、どうせ無理矢理付き合わされたんだろ」
猿門の言う通りで苦笑いを浮かべると、女のお前にはキツかったんじゃねぇかと、猿門が巫兎を心配してくれる。
普段は厳しい人のように見えるため、まさか気にかけてくれるとは思わず、巫兎は内心驚いてしまう。
「そうなんですよね。やっぱり私はお二人についていくことができず今の状態です。でも、今も鍛練を続けているロックくんは凄いなって改めて思いました」
体も大きくしっかりとしていて、13房の中では一番男らしい体だと言えるロックだが、それはこういった鍛練の成果でもあるのだろうと感じる。
暫くして猿門が仕事へと戻ってしまうと、一人残った巫兎はロックを見詰めていた。
巫兎の瞳に映るロックはいつもかっこよく、そんなロックに惹かれない訳がない。
「何であんなにカッコイイのよ……」
同じ房で毎日顔を合わせているのに、いつ見てもカッコイイなんて思う巫兎はかなりの重症だ。
そんなことを考えていると、ロックが100周目走り終え、巫兎の元へと近づいてくる。
「お疲れ様」
「はぁ~、今日もマジ疲れたぜ!」
「でもロックくん凄いよ!100周走りきっちゃうんだもん!」
流石に100周も走れば全く疲れないなんてことはなく、ロックの服は汗で張り付き、額から流れている汗は頬を伝い地面に落ちていく。
それでも、いつも通りの笑顔を巫兎に向けるロックはやっぱり凄い。
演習場では、100周走り終えたばかりだというのに、今もピンピンしている大和の姿があるが、あれは例外と考えていいだろう。
「まぁ、俺が100周走れたのは巫兎のお陰かもしんねぇけどな」
「え?」
「あー、あれだ!巫兎が見てるって思ったら、情けねぇところは見せらんねぇからな!」
ニッと笑みを浮かべ言われた言葉は、巫兎の頬を熱くさせ、巫兎は隠すように顔を伏せる。
深い意味はないとわかってはいるが、そんな風に言われたら、鼓動だって高鳴り出してしまうのは仕方のない現象だ。
「鍛練を終えた後は食堂で昼食だ!ロックくん巫兎くん、二人ともついてきたまえ!」
すると、そんな二人の元へ大和が来たため、3人で食堂へと向かう。
訓練をした後の二人のお腹は空腹のようだが、ベンチで座っていただけの巫兎は、二人が食べる量のご飯は確実に食べられないだろう。
鍛練を最後までしていたとしても、あの量は誰も食べられる気がしない。
そもそも大和の場合は持参の米俵を1俵まるっと一人で食べてしまうのだから、一体大和の胃袋はどうなっているのだろうかと不思議だ。
「いただきまーす!!うめー!!やっぱ運動の後は飯ダよなぁ」
巫兎に向けたさっきの笑顔以上に幸せそうに笑うロックを見て、ご飯に負けた気がし、巫兎は肩を落とす。
だが、ロックの気持ちはわかる。
ここ、13舎の料理を作るのは見習いシェフのシロであり、元囚人だ。
だがその腕前は、食べることが大好きなロックの舌さえも満足させるものであり、本当に美味しいのだ。
他の舎からも、13舎の料理は美味いと評判であり、その評判は伊達じゃない。
「おいし~い!やっぱりシロが作る料理は最高だね!」
「だよな!!」
何だか悔しくはあるが、今のロックの笑顔は巫兎では作り出せないものだとわかる。
この笑顔は、美味しいものを作り出す人にしかさせられない笑顔だ。
そんなことを考えていると、巫兎とロックの目の前に置かれたのは何故かフルーツパフェだった。
「サンキューな、シロ!」
どうやらシロに巫兎とロックが話していた声が聞こえていたらしく、嬉しくなり持ってきてくれたようだ。
「でも、なんでフルーツパフェ?」
「ああ、なんか最近盛り付けに凝ってるらしいぜ」
「言われてみると、上に乗っかってるフルーツが、わざわざお花の形にカットされてる!」
勿論フルーツパフェも美味しくて、同じく目の前で美味しそうに食べるロックの姿を見ていると、存在をすでに忘れかけていた人物の声が耳に届く。
「やはり日本男児まるもの白米だな!!」
「ふふ、大和さんは白米があれば何でも食べれそうですよね」
「いや、私にも食べられないものはあるぞ」
大和に食べられないモノ、それは初耳であり、二人の会話を聞いていたロックも耳を傾ける。
「大和さんの食べられないモノってなんですか?」
「それはだな、モノだ!!」
巫兎もロックもその言葉に首を傾げる。
そのモノがなんなのか聞いたはずなのだが、返事がモノでは反応に困ってしまう。
「あの、そのモノを知りたいんですけど……」
「だから言っているだろう、モノだと。流石の私もデスクや本などは食べられないからな!はっはっはっ!!」
声を上げて笑っているが、それを大和は本気で言っているのだから苦笑いを浮かべるしかない。
「大和さんの言うモノって……」
「物の方だったみてぇだな」
そんな会話もありながら昼食を済ませた3人だったが、大和に連れられ房へと戻ると、待っていた皆が出迎えてくれた。
どうやら皆は大和の事だから、巫兎にもあのハードな訓練をさせたのではないかと心配をしてくれていたようだ。
「ははは、正解。でも、私は直ぐにダウンしてベンチで休んでたよ」
「だよな!あれは男の俺らでも音を上げちまうし」
「でもでも、ロックくんは凄かったんだよ!ついて早々グランド100周を最後まで走りきったんだから!」
巫兎が得意気に話すと、何故か3人は驚きの表情を浮かべていた。
「どうかした?」
「いや、いつもなら100周前にはバテてたからさ」
「だよな」
「そうそう!僕らは序盤でバテてたけど、ロックくんはいつもギリギリまで頑張って、それでも100周は走りきれたことないんだよね」
3人の言葉で、今度は巫兎が驚きの表情を浮かべる。
今回初めてロックの訓練の様子を見に行ったが、平気そうに見えたためいつものことなのだと思っていたからだ。
「やっぱ好きなヤツに見られてると頑張れるもんなのか?」
「え?」
「ッ、バカ、ジューゴ!!」
「ジューゴくん、それは言ったらダメなやつだよ!」
好きなヤツ、それはこの場合ロックと巫兎のことと考えるのが普通だろうが、それはないだろうと考えを振り払う。
だが、そんな巫兎の瞳に映ったのは、真っ赤に顔を染めたロックの姿であり、その体は恥ずかしさのせいなのかフルフルと震えている。
「これって、期待しちゃってもいいのかな……」
小さな声で呟いた巫兎の言葉は、今も騒いでいるジューゴ達の声で掻き消され誰にも聞こえることはなく、巫兎はロックへと近づいていく。
目の前まで来た巫兎の存在に気づきロックは顔を上げると、ロックに負けないくらいに顔を赤く染めた巫兎の姿がそこにはあった。
そして、そんな巫兎から紡がれた言葉に、ロックは嬉しさのあまりに巫兎を力強く抱き締める。
そんな二人に気づいたジューゴ達は、一体何があったんだと驚きの表情を浮かべていたが、ロックと巫兎の幸せそうな笑みを見たら予想はついてしまう。
「なんかしんねぇけど、上手くいったんじゃねーか?」
「ああ、そうみたいだな」
「これが両想いなんだね!」
そんな3人の会話は巫兎の耳に届いており、恥ずかしくて仕方がないのに、ロックの腕はまだまだ緩められそうにない。