大和撫子も恋をする
名前変更
名前変更お話にて使用する、夢主(主人公)のお名前をお書きくださいませ。
【デフォルト名】
巫兎(みこと)
囚人番号:211
※囚人番号は固定となります。
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「御馳走様です。お菓子まで御馳走ていただきありがとうございました」
丁寧にお礼を伝えお辞儀をすると、少し遅くなってしまったが大和のいる演習場へと向かう。
訓練時間も限られているため、もう少しで舎へ帰る時間となってしまうのだが、着物では走ることすらできず気持ち早足になる。
少しゆっくりし過ぎてしまったようだが、このまま向かえばまだ間に合う。
だがその時、背後から声をかけられ立ち止まり振り返ると、そこには5舎主任看守である猪里の姿があった。
「やっぱり巫兎じゃねぇか、今日はどうしたんだ?」
「今日は主任様に書類を届けに来たのですが、その帰りです」
「ほんと、真面目だよな。んじゃ、今から13舎に帰るって訳だな」
「いえ、今からは」
ここで訓練をしている大和の様子を見に行くと伝えようとしたのだが、突然猪里に腕を掴まれグイグイと引っ張って行かれてしまう。
「あ、あの、猪里さん……?」
「今日は真面目なアンタに、サボり方ってのを教えてやるよ!」
「えっと、私はこれからまだ用事が……」
そんな巫兎の声は届かず、猪里に連れていかれた巫兎は、どうサボるのかを猪里から教えてもらうこととなってしまった。
そして、時間はあっという間に過ぎてしまい、解放された時にはすでに13舎へ戻る時間をとうに過ぎていた。
こんな時間になってしまっては、大和はすでに13舎へ戻ってしまっただろう。
「早く戻って主任様とヤマト様に謝罪しなくては」
足早に5舎の通路を歩いていると、前から来る人物に巫兎は驚きの表情を浮かべる。
長い黒髪を揺らしなが巫兎の方へと歩いてくる人物は大和であり、何故まだ5舎にいるのかと不思議に思う。
「ヤマトさん、どうしてまだ、ッ!?」
巫兎が尋ねようとしたその時、目の前まで近づいてきた大和はそのまま巫兎を腕の中へ閉じ込めてしまった。
一体何が起きたのかわからず巫兎は固まってしまうが、逞しい体が着物越しでもわかり鼓動が高鳴る。
男性にこんなことをされるのは勿論初めてであり、抱き締められていると気づいたときには顔が真っ赤になり口をパクパクとしてしまう。
「探したぞ」
「え……?」
耳元で聞こえた言葉に首を傾げると、なかなか現れない巫兎を探していたことなどを話始める。
それを聞いた巫兎はようやく理解した。
「もしかして、ずっと探してくれていたんですか……?」
「ああ、決まっているだろう。私の訓練を見ると約束していたのだから」
きっと訓練を終えた後直ぐに探してくれていたのだろう。
私を抱き締める体は汗で濡れており、どれだけの間探し回ってくれていたのか直ぐにわかってしまう。
「すみませんでした、訓練の様子を見に行けず。それに、ご心配までお掛けしてしまって……」
「気にするな。それにしても不思議だな、こうして私の腕の中に巫兎がいると思うと、何故たが安心する」
囁くような甘い声が耳元で聞こえ、巫兎の色白な肌はみるみる桜色から真っ赤な紅へと変わっていく。
深い意味が無いことはわかっていながらも、胸の高鳴りは収まらず、それどころか加速してしまう。
「あの、ヤマト様……。その……そろそろお放しいただけますか……?」
このままでは心臓が壊れてしまいそうで、ようやく放れてもらうが、まだ熱い自分の顔を見られないように大和に背を向ける。
「何故背を向けているんだ?」
「き、気にしないでください!」
「そうか、ならば気にしないことにしよう!だが急がねば、先輩にお叱りを受けることになりそうだ」
そう言うと、大和は背後から巫兎を持ち上げそのまま姫抱きにし走り出す。
突然の大和の行動に、誰かに見られたらと恥ずかしく思う反面、このままでいたいなんて思ってしまう
。
「や、ヤマト様!?」
「着物では走れないだろう、こうした方のが早くつくからな!」
頬や体がまたも大和の逞しい体に触れ、見上げれば大和の顔が直ぐそばにある。
息遣いすらも聞こえる距離、そして、頬をピトリと大和にくっつけると、鼓動の音が聞こえ心地いい。
走っているのに鼓動は落ち着いており、自分の鼓動とは違うことがわかる。
走ってもいない巫兎の鼓動は騒がしく、この高鳴りの意味を理解することは今の巫兎出来なかった。
「巫兎」
「は、はい……!」
突然名を呼ばれ慌てて返事をすると、君の鼓動は早いのだなと言われ、巫兎の顔は耳まで真っ赤になったのは言うまでもない。
ただ今は、この時間がずっと続くこと、そして、今の自分の顔を見られないように祈るばかりだ。
《完》