事件は、慌ただしくも幕を閉じる
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巫兎(みこと)
囚人番号:211
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ここ、南波刑務所の娯楽室では、一時間という短い自由時間で皆が集まり遊んでいた。
今日娯楽室にいるメンバーは、娯楽室を作ることを提案した13舎13房のウノ、5舎8房のチィーとリャン、そして、そんな3人を監視するのは、13舎13房の看守である巫兎。
「今日は2人か、ウパはどうしたんだ?」
「ウパは今日、猿門さんとの手合わせがあるので来ないそうだ」
「てかさ、そっちも今日は一人なわけ?」
「ああ、俺以外皆ゲーセンに行くんだとさ」
そんな3人の会話をソファで座りながら眺めていると、たまには巫兎も遊ばないかとウノに誘われたが、看守として3人を見張らなければいけない立場のため、巫兎は誘いを断った。
娯楽室にはダーツやビリヤードといったものがあり、正直遊んでみたい気持ちはあったものの、もし遊んでいたことを13舎の主任であるハジメに知られれば後が怖い。
「んじゃ、今日は俺も巫兎ちゃんと休ませてもらおっかな」
「貴様はいつもサボっているだろう」
「まーね!ま、つーことだから二人でたまには遊んだら?」
二人だけだと遊ぶ物も限られてしまうが、折角の自由時間に娯楽室に来てなにもしないのも勿体無いと思った二人は、二人でもできるビリヤードで遊び始める。
そしてウノとリャンがビリヤードで遊んでいる間、巫兎はただその姿を眺めていると、不意に横から声をかけられ視線を向ける。
「巫兎ちゃんってさ、いっつも見てるだけだけど暇じゃないの?」
すっかり存在を忘れてしまっていたが、今日はチィーもいることを出す。
ソファはまぁまぁ大きくはあるのだが、何だかチィーとの距離が違い。
「暇かって聞かれたら暇よ。でも、私は看守だから、暇だからって仕事をしないわけにはいかないわ」
「真面目だね~」
真面目と言われれば真面目なのかもしれないが、13舎の主任はあの双六 一。
真面目でその上何でもこなしてしまう、そんな上司の元にいれば真面目だって移ってしまう。
「普通よ、それに、アナタのところの主任だって真面目じゃない」
「まぁそうなんだけどさ、こっちには不真面目な看守もいるわけだし」
「あー、猪里さんね」
5舎の副主任である八戒 猪里は、主任である猿門とは違い、よくサボってばかりいる。
そう考えると、上司が真面目でも5舎のように不真面目になる者もいるようだ。
まぁあのサボり癖は入った当初からだと猿門から聞いているが。
「あの人に比べたらアンタは凄いと思うよ。でもさ、心配なんだよね」
心配と言うチィーの言葉に首を傾げると、そういう真面目な人は俺が見てきた限り無理をするからだと言われてしまった。
「真面目過ぎるんだよね、皆さ、もう少し肩の力抜いてもいいと思うけどね」
「何言ってんのよ。囚人のアナタ達が変なことしないように私達看守は見張ってんじゃない」
肩の力を抜く、そんなこと考えもしなかったが、この仕事についてから、ずっと仕事のことで頭が一杯だったかもしれない。
だからと言って、肩の力を抜くなんて今更どうしたらいいのかわかるはずもない。
「俺達がいないところでもさ、アンタみたいな真面目な性格な人は、いっつも仕事のことばっか考えてんだよね」
「ッ……!」
図星をつかれ、こいつエスパーなんじゃないかと思ったその時、突然背後から手が回されると抱き締められてしまった。
一体誰なのかと顔だけ後ろへ向けると、そこには、ウノの姿がある。
「ウノ、一体どうしたの?って、わッ!?今度は何!?」
今度は前からの衝撃に視線を戻すと、腰の辺りにリャンが抱きついている。
「ちょっと二人とも、どうしたのよ!?」
「あー……これ飲んじゃったみたいだな」
そう言ってチィーが手にした小さな空の小瓶、一体何が入っていたのか聞くと、返ってきた言葉に巫兎は言葉を失った。
「今、何て言ったの……?」
「だからさ、これ、惚れ薬なんだよね~」
「いやいやいや!!何でそんな物がここにあるのよ!?」
「俺が持ってきたから」
チィーは此処へ来る前は薬剤師であり、趣味は新薬開発と植物研究だ。
その腕は此処の看守さえも認めるほどであり、惚れ薬を作れても可笑しくはない。
「何でそんなもの勝手に作ったりしたのよ!!」
「まぁなんつーか、面白そうだったからさ」
「後で猿門さんに報告させてもらいますからね」
「ゲッ……」
そんなことよりも、今はウノとリャンを引き離すことが先決だが、しっかりと抱きついたまま放してはくれない。
「巫兎、俺、いつも近くにいたのに自分の気持ちに気づいてなかったみたいだ」
「そのまま気づいてくれなくてよかったんだけどね……」
「巫兎さん、私のこの感情は恋なのでしょうか!」
「いや、気の迷いだよ……。二人ともしっかりして!!これは薬のせいなんだってば!!」
そんな巫兎の言葉は恋をする二人の耳には届かず、恋は盲目と言うがまさに言葉通りだ。
「チィー!!アナタが作った薬でしょ、何とかして!!」
「そうしてやりたいんだが、看守も無しに囚人が刑務所の中を彷徨くわけにもいかないだろ」
珍しく正論を言われ、この場合、巫兎が自由に動けなければどうすることもできないことになる。
どうしたものかと考えていると、突然二人は喧嘩を始めてしまった。
「ウノ、さっさと巫兎さんから離れろ」
「やだね、巫兎は俺のとこの看守だし、離れんのはそっちだろ」
このまま二人とも放れてくれたらいいのだが、そんな考えは甘かったらしく、突然リャンの手が巫兎の頬へと添えられた。
「巫兎さん、俺だけをその瞳に映してください」
「ッ……!!」
告げられた言葉に、不覚にも鼓動が高鳴ってしまい、目の前のリャンから目が逸らせなくなる。
こうして間近で見るリャンは本当に女の人のように綺麗で、少しずつ近づく距離に唇が触れそうになったその時、背後から伸ばされた手が額に添えられ、上へと向かされてしまう。
すると、目に飛び込んできたのはウノの顔だった。
またも違い距離に頬が熱くなるのを感じていると、耳元で甘く囁かれた。
「巫兎は俺だけ見てればいーんだよ」
ウノの言葉で更に巫兎の胸は高鳴り、もうどうしたらいいのか混乱状態だ。
近づく距離にまたも何もできず、あと数センチで唇が触れそうになったその時、巫兎は顔を横へと向け拒んだ。
「何で逸らしちゃうのさ」
「それは巫兎さんが貴様の事を好きではないからだ」
「ちげーよ、巫兎は照れてるだけだっつの!」
勿論巫兎はウノが好きではないわけでも、照れているわけでもない。
ただ、惚れ薬という存在を思い出したのだ。
忘れかけてしまっていたが、今二人が巫兎へ向けている感情は本当の二人の気持ちではない。
だからこそ、巫兎はちゃんと拒まなければいけないのだ。
「二人とも、私から放れて」
少し強い口調で言うと、二人は渋々ではあったがようやく巫兎なら離れてくれた。
そしてチィーに薬を作ってもらうことができ、その薬を早速二人に飲ませる。
「あれ?俺何してたんだっけ?」
「私は今まで何を……」
どうやら二人は惚れ薬を飲んだ後の記憶はないようだが、無事いつもの二人に戻ったことに安堵する。
「どうだった?たまにはこういうのも息抜きになるんじゃない?」
「もしかしてチィー、わざとやった……?」
どうだろうねと言うチィーの心は読み取れないが、何とか一件落着といったところで喉が渇き、近くにあったグラスを手に取り口へとつける。
「あっ!!巫兎ちゃんそれ」
チィーが声をかけた時にはすでに遅く、グラスに入っていた液体は空になっている。
「おい、あのグラスには何が入っていたんだ?」
「もしかして俺とリャンが飲んだっつー惚れ薬とか?なら俺大歓迎!!」
「いや、あれは……」
チィーの話も聞かず、ウノが巫兎に抱きつこうとすると、綺麗に決まった回し蹴りがウノにヒットし壁へと吹っ飛ばされた。
その光景にリャンが言葉を失っていると、巫兎の瞳がいつもと違うことに気づく。
いつもは優しい目をしているのにたいし、今はまるで嫌なものでも見るかのようだ。
「私に近づかないでください」
「チィー、巫兎さんが飲んだのって……」
「惚れ薬とは逆で嫌いになる薬」
その後、巫兎が3人を嫌うため薬を飲ますことができず、3人ともボロボロになりながら何とか巫兎に薬を飲ませ元に戻すことができた。
だが、こちらも同じく薬を飲んだ後の記憶はなく、気づいたときには3人がボロボロになっており、何があったのかと首を傾げている。
「いや、なんつーか、巫兎って強いんだな……」
「え?」
「あの蹴りはなかなかでしたよ……」
「え?え?」
苦笑いを浮かべるウノに、何やら頷くリャン。
一体なんのことなのだろうかとチィーに尋ねようとすると、何故かビクッと肩を跳ね上がらせ、ごんなさいごめんなさいと念仏のように唱えだす。
「なんかスゲートラウマになってねぇか?」
「あのクズにはいい薬だ」
その後、チィーが作った2つの薬は危険物として没収されたのだが、その後その薬が何処へいったのかは知られていない。