先の未来は二人の秘密
名前変更
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【デフォルト名】
巫兎(みこと)
囚人番号:211
※囚人番号は固定となります。
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13舎13房には、囚人番号25番のニコという特異体質の持ち主がいる。
未知の病気や食物アレルギーを多数持ち、他人の動きを伝染されたようにそっくりに真似できる。
そのため、日常的に多くの薬を服用しており、毒薬の類が効きにくい。
過去にスラム街でドラッグのバイヤーをしていたところを逮捕、保護され、注射と薬を嫌がり脱獄を繰り返してきたが、現在は本人の好む味の飲み薬で対処しているため、むしろ投薬の時間が一番の楽しみとなっている。
そんなニコには、今誰よりも大好きな存在がいた。
「巫兎ちゃん、来たよ!」
「ニコくんいらっしゃい。じゃあ、今日のお薬を用意するから、そこのベッドで横になっててね」
「はーい」
医務室は普段、御十義 翁が診察や治療などをしているのだが、最近忙しいらしく、そんな翁の手伝いを巫兎がしてくれている。
巫兎は見た目が可愛くその上優しいため、囚人や看守から好意を寄せられることも少なくない。
そしてニコも、秘かに巫兎を想う一人だ。
だが本人は、恋愛などしたことがないため、巫兎に向ける好きと他の皆に向ける好きの区別ができていない。
そのため、この二人が恋愛に発展するということはなく、お互いに好きと言い合ってはいるものの、それを恋愛としてとは思っていない。
そして巫兎は、ニコのことを弟のような存在として見ており、この二人が恋愛に発展することはまずないだろうと、ニコと同じ13房の囚人は思っている。
「はい、今日の投薬はこれでお仕舞い!後はこの薬を決まった時間にいつも通り飲んでね」
「うん!あ、あのね、巫兎ちゃん」
「どうかした?」
「えっと、もう少しここにいてもいいかな……?」
そんな風に聞かれたら断れるはずもなく、今は誰もいないからいいよと巫兎は甘くなってしまう。
そんな巫兎の言葉にやったーっと喜んだニコは、嬉しそうに巫兎に抱きつく。
「ニコくん、そんなに強く抱き締められたら苦しいよ」
「あっ!ごめんなさい……」
しゅんとするニコを今度は巫兎が抱き締めると、ニコの好きな薬の匂いが巫兎の白衣からしてくる。
甘くて美味しそうな匂いだが、こうして巫兎に抱き締められていると、その匂いは安心の匂いへと変わる。
「巫兎ちゃんって不思議だね。薬の匂いがするのに、巫兎ちゃんにこうされてると安心する」
「ふふっ、そう?」
「うん!僕だけのって感じで嬉しい!」
ニコは自分で思ったことを口に出しているが、それは、巫兎だからということに気づいてはいない。
そして巫兎も、ニコの素直な気持ちをただ受け止めているだけであり、その言葉に本人すら気づいていない意味があることを知らない。
「巫兎ちゃんありがとう!じゃあ、僕戻るね」
「うん!また明日も忘れずに来てね」
「はーい!」
ニコは医務室を出ると、13房へと戻り、先程あったことを皆に話していた。
巫兎を抱き締めたことや抱き締められたこと、薬の匂いが安心したことなどを13房の皆に話す。
「不思議だよね、巫兎ちゃんって!」
「いや、そこまでペラペラと自分の感情が言葉で出てくんのに、何で気づかねーんだよ……」
ウノの言葉にどういう意味、と首を傾げるニコ、やはり自分の言っている言葉が示す意味を理解していないようだ。
一緒の房の仲間だからこそ、ニコ自身が気づいていないことにも気づいてしまう。
確実にこの感情は恋であるとわかるものの、それを教えることができないのには意味がある。
それは、巫兎には何の脈もないということだ。
ウノは普段人の癖などを見ているため、人のことはよく見ている方だ。
だからこそわかってしまう、巫兎がニコを見る瞳は恋愛ではないことくらい。
そんな結ばれるかもわからない恋に気づかせることは、ニコを傷つけることにもなりかねない。
だからこそ、迂闊にニコに教えるわけにはいかないのだ。
「あっ!!」
「どうしたんだ?」
「お薬を医務室に忘れてきちゃったみたい。ジューゴくん、鍵開けて!取りに行ってくるから!」
「ああ」
牢獄の鍵を意図も簡単にジューゴが開けると、じゃあ行ってくるねと嬉しそうにニコは房から飛び出していった。
それはきっと、また巫兎と会う理由ができたからに違いないと思いながら13房の囚人はニコを見送った。
「巫兎ちゃんとまた会えるなんて嬉しいなぁ!医務室が近かったらいいのに」
そんなことを思いながら医務室につくと、ニコニコと笑みを浮かべながら扉に手をかけた。
すると、中に巫兎以外の誰かがいるのか、男の声が聞こえてくる。
聞き覚えのある声に、少し扉を開けてこっそり中を覗くと、そこには5舎の看守である猪里の姿があった。
「猪里さん、医務室にサボりに来るのはやめてください!」
「今の時間はいつも誰もいねーしいいだろ、ここなら主任にも見つからずにすむからな。それに、いい女もいるしな」
「ッ……からかわないでください!!」
そう言いながら顔を真っ赤にしている巫兎の姿を目にすると、ニコの胸が傷む。
自分には見せたことのない表情に、モヤモヤとしたモノが胸の中で広がる。
今までに感じたことのない感情に、どうしたらいいのかわからず中へ入れずにいると、医務室から出てきた猪里と目が合った。
「あれ?お前、13舎の囚人じゃねーか」
猪里の言葉で、医務室から巫兎が出てくると、薬を取りに来たのねと、ニコを中へと入れてくれる。
「じゃーな」
「もうサボっちゃダメですよ!」
行ってしまう猪里の背に声をかけた後、巫兎は医務室へ戻ると、さっき忘れていった薬をニコに手渡した。
だが、何故か顔を伏せたままニコは元気がなく、どうしたんだろうかと巫兎は心配する。
「何かあった?」
「……胸が、痛いんだ……」
「え!?もしかして病気!?待ってて、直ぐに翁さんを呼んでくるから!」
ニコは、呼びに行こうとする巫兎の腕を掴むと、首を横に振った。
「違うんだ、この痛みは病気じゃないよ」
「でも……」
「僕にはわかるんだ。きっとこの痛みと向き合わなきゃ、この痛みは消えないんだって」
巫兎は、ニコの言っている言葉の意味がわからず首を傾げてしまうが、どうやらニコは少しずつ、自分の気持ちに気づき始めたようだ。
それが更に自分を苦しめる結果になろうとも、向き合わなければきっと後悔する。
「僕、巫兎ちゃんのこと大好きだよ!」
ニコリと笑みを浮かべ言われると、巫兎は私もだよと答えてくれる。
きっとその好きには、ニコの想いと同じものはないに違いない。
もやもやとする感情を抱えたまま13房へ戻ると、そんなニコの様子が可笑しいことは直ぐに皆が気づいた。
「なんかあったのか?」
「ニコらしくねーぞ」
「悩みがあんなら俺達に話してみろって!」
「ジューゴくん、ロックくん、ウノくん……」
自分では理解できない感情だが、3人なら何かわかるかもしれないと、さっきあったことや今の自分の気持ちを素直に伝える。
するとウノが何かを決心したのか、何時もより真剣な表情をニコへと向け口を開く。
「ニコ、その気持ちの意味を教えることはできるが、その先はお前次第になる。今より辛くなるかもしれねー、それでも知りたいか?」
今より辛くなるかも知れないというウノの言葉に、内心怖くもあったが、ニコは自分の気持ちを知りたいという気持ちを変えようとは思わなかった。
「この気持ちは知らなきゃいけないことだと思うから、もしそれで今以上に辛くなったとしても、僕は知りたい!」
ニコの言葉に、ウノはわかったと頷くと、ニコのその気持ちの意味を教える。
そして、巫兎にはニコと同じ気持ちはないだろうということも話した。
辛いかも知れないが、それを知ってどうするかはニコ次第だからだ。
「そっか、これが恋、なんだね……」
「ああ。で、ニコはどうすんだ?」
「そんなの決まってるよ。巫兎ちゃんに僕の気持ちを伝えに行く!!」
「ちょっ!?待て待て待て!!俺の話聞いてなかったのかよ!?」
そう、ウノはしっかり伝えたはずだ、巫兎はニコに恋といった感情を抱いていないということを。
それを知っていながら想いを伝えに行くなど自爆行為でしかない。
「ちゃんと聞いてたよ」
「なら何でそんな結論になんだよ!?」
「だって、これが恋なんだってわかったら、気持ちを伝えたくなっちゃったんだもん。それに、気持ちを伝えなきゃ前には進めないから」
今までに見たことのないくらい真剣な表情で言われ、ウノは一瞬驚いた後口角を上げた。
「まっ、後はニコが決めることだしな、したいようにしてこい」
「うん!ありがとう、ウノくん!」
そう言い飛び出していったニコの背は何時もより大きく見え、ニコは前に進んでいく。
この行動がどんな結果をもたらすのかは、この後の二人にしかわからない。