禁断の恋をアナタと
名前変更
名前変更お話にて使用する、夢主(主人公)のお名前をお書きくださいませ。
【デフォルト名】
巫兎(みこと)
囚人番号:211
※囚人番号は固定となります。
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「ハジメ、遅かったな」
「遅かったな、だと?」
ハジメの拳が男の頭上に落とされると、男はハジメに連れられ牢へと戻っていく。
去り際に、話し相手になってくれてありがとうと言っていたが、一体あの囚人は何者だったのだろうかと考えていると、そんな私の考えを察した星太郎が口を開いた。
「あの子は囚人番号15番のジューゴくんですよ」
「15番、ジューゴ……。何だか変わった囚人ですね」
先程話す途中だったことを星太郎は巫兎に話始め、あの囚人は脱獄に関しては天才だということや、13房は脱獄の常習犯だと言うことを知ることとなった。
このことは13舎だけの秘密であり、他の者には知られていないようだ。
なんだか凄いところに配属になってしまったなと思いながら、ふと時計へと視線を向けると、すでに時間は休憩時間を越えていた。
「いけない!私、11房の様子を見てきます」
「11房の囚人なら問題はないと思いますけど、よろしくお願いします」
「はい!」
巫兎は看守室を出ると11房へと向かう。
まだ少ししか話してはいないが、99番は、ここにいることが不思議なくらい好い人に見えたため、そうそう問題は無さそうだと安心できる。
配属早々脱獄をさせたなんてミスを犯せば、折角掴んだこの仕事を辞めることにもなりかねない。
巫兎はそれだけは何としてでも避けたいのだ、あの人を見つけるまでは。
そんなことを考えながら11房へと入ると、そこには、懲りもせずまたも壁に隠れている99番の姿がある。
「だからバレバレですってば……。99番さん!」
「なに!?何故わかった!?まさか巫兎殿も忍」
「違います」
99番の言葉を遮り否定すると、兎に角ちゃんといることは確認できたため、看守室へと戻り書類の整理をしようと扉へ向かったその時、背後から呼び止められ振り返る。
「どうかされましたか?」
「あ、えっと……」
99番は、何かを言いたげだが上手く言葉にできないのか黙ってしまう。
いつの間にか口許を隠していた布は下げられており、今99番は自分の言葉で何かを伝えようとしているようだ。
そんな99番を可愛いなんて思いながら口許が緩む。
「99番さん、話したいことを上手く伝えようとか思わなくてもいいんですよ。99番さんが今伝えたいことを99番さんの言葉で聞かせてください」
「俺の、言葉で……」
巫兎の一言で話す決心がついたのか、99番の視線が巫兎へと向けられた。
その視線に、巫兎の鼓動は高鳴り、何故囚人相手にこんな気持ちになるのかわからない。
一体何を伝えようとしてくれてるのだろうかと巫兎は言葉を待つと、99番から聞こえた言葉は思いもしないものだった。
「もう少し、俺の側に居てほしいんだけど、いいかな……?」
「え……?」
まさか、自分と一緒にもう少しいたいなんて言われると思わず、頬が段々熱を持っていく。
「ごめん、看守の仕事があるのに迷惑だよね……」
答えない巫兎を困っていると思ったのか、視線を下へと落とし申し訳なさそうに99番は言う。
そんな99番に、慌ててそんなことないよと否定する。
「思いもしないことだったから少し驚いただけで、とっても嬉しいよ!」
「よかった」
巫兎の言葉に99番は笑みを浮かべ、その笑みに、巫兎の鼓動が音をたてる。
その後は、二人房の中で他愛ない話をしながら過ごし、書類などの作業をすっかり忘れてしまっていた巫兎は看守室に戻るとハジメに叱られてしまった。
そんな巫兎を慰める星太郎はとても優しいが、仕事もせずに囚人と話してたなんて怒られても無理はない。
「はぁ……。私、なにやってるんだろ」
「そんなに落ち込まないでください。書類も少なかったので主任一人で終わりましたし!お茶でも飲んで一服してください」
「ありがとうございます」
星太郎からお茶を受け取り、目の前の雑誌でも読みながら気分転換をしようとしたその時、巫兎は雑誌を持つと目の前まで近づけ、そこに写る人物を確かめる。
服装は違うものの、その人物は99番であり、間違いなく巫兎が好きな芸能人、カミカゼだ。
「星太郎先輩!!これ!これって!」
「ああ!その人は99番くんですね」
さらっと言われてしまったが、まさか自分の担当である99番があの人気芸能人と知り、頭が混乱する。
最初に会ったときから、何故か初めて会った気がせず、この胸の高鳴りがなんなのか気づけなかったが、これではっきりした。
恋のような、でも何かが違う、そんな気持ちを感じていたが、これは芸能人にたいする好きという気持ちであり、例えて言うなら二次元と現実のようなものだ。
だからこれは恋とは呼べない、それに、知ったところで私にとっては自分が担当する囚人、99番に変わりはない。
翌日巫兎は、いつも通り11房の様子を見に行くと、懲りもせずまたも99番は隠れているつもりらしいがまるわかりだ。
巫兎が声をかけると、流石だ巫兎殿、と反応が返ってくる。
「忍者、好きなんですね。やっぱり役者だからですかね」
「ッ……!知っていたのか……?」
口許の布を下げ、素の99番が顔を出す。
その顔は昨日見た雑誌の人物そのもので、鼓動は音をたててしまう。
「はい、といっても昨日雑誌で知りました。私、カミカゼ大好きだったので」
「そっか……。なんだろ……凄く嬉しいけど照れる」
「ふふっ。私はこれから書類整理の仕事があるので失礼しますね」
巫兎が99番に背を向けたその時、後ろから腕を掴まれ引き寄せられると、前に腕が回され抱き締められてしまう。
よくわからない状況に鼓動が騒がしくなるのがわかる。
「ごめん、こうしたくなったんだ」
「い、いえ……。でも、これからまだ仕事があるので放していただけますか?」
そう言うと、99番は腕を緩めるどころか更に力を入れ抱き締めてくる。
この状況から逃れる方法などわかるはずもなく、巫兎は看守らしく99番に告げようと口を開く。
「囚人番号99番、放しなさい。何故こんなことをするのかわかりませんが、私は看守、アナタは囚人です」
「ッ……!巫兎さん……」
悲しみを含んだ声音に巫兎は振り返ることなく、緩められた腕から逃れると11房を去った。
もし振り返っていた、99番がどんな顔をしていたのか、考えただけで胸が苦しくなる。
私は看守、99番は囚人、自分で言った言葉だというのに、何故か巫兎の心に突き刺さる。
巫兎はよくわからない感情が渦巻く中、看守室へと向かうと、椅子に座り書類の整理を始めた。
すると、その数分後に警報が鳴り響き、看守室にいた巫兎以外の看守はそちらへと行ってしまう。
また直ぐに捕まって牢に戻されるのだろうと考えていると、耳元で囁くような声が聞こえ椅子から立ち上がった。
すると、そこにいたのは99番であり、あの脱獄を知らせる警報は99番が脱獄をしたことを知らせる警報であることがわかる。
「何故99番さんが脱獄なんて……。それよりも、房へ戻りますよ!」
腕を掴み房へと戻そうとするが、逆に巫兎の腕が掴まれ抱き寄せられてしまった。
「99番さん、何を、んッ!?」
突然唇を奪われ、重ねられた唇は熱を持つ。
逃れようにも抱き締められていてはどうにもならず、こんな無理矢理なのに、何故かその口づけは優しく頭がクラクラとしてしまう。
ようやく唇が放されたときには、巫兎の呼吸は乱れ、瞳は潤んでいた。
「いきなりごめん、でも、これだけは伝えておきたくて。俺、上手く自分の気持ちを言葉にできないから、なんて言ったらいいかわからないんだけど、俺は巫兎さんが好きだ」
「ッ……!?」
突然の告白に巫兎が動揺してしまっていると、99番は驚きの表情を浮かべた後、戸惑いながら口を開く。
「えっと、そんな顔真っ赤にして見つめられると、期待、しちゃうからさ……」
「ッ……み、見ないで!!恥ずかしいから……」
顔を何とか隠そうと横へ向けると、耳元で可愛いなんて甘く囁かれてしまう。
今のこの感情は二次元なんかじゃなくて現実であり、これを言葉で99番に伝える方法は1つしかない。
「……き……す……好き、です……!!」
真っ赤に染めた顔、潤んだ瞳を向けハッキリ気持ちを伝えると、再び唇が重ねられてしまう。
さっきとは違い遠慮のない口づけに、体まで熱を持ち始める。
「凄く嬉しいよ。でも、そんな表情で言われたら、いくら役者でも抑えられなくなりそうだ」
「それは、困りますね……」
お互いに笑みを溢し、この日から二人は秘密の恋人になった。
誰にも内緒の二人の関係、囚人と看守であっても、この想いを止められる者は誰もいないに違いない。