前よりも、アナタに恋して
名前変更
名前変更お話にて使用する、夢主(主人公)のお名前をお書きくださいませ。
【デフォルト名】
巫兎(みこと)
囚人番号:211
※囚人番号は固定となります。
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5舎にいる間、チィーやウパとしばらく話していると、組手を終えた猿門とリャンがこちらへとやって来た。
二人の額は汗で濡れており、巫兎は二人へとタオルを差し出す。
「先程六力さんに頼んでタオルをいただいてきましたので、どうぞ使ってください」
「謝謝」
「サンキュー!やっぱ女がいると違うよなー」
「いえ、そんな。では、私はそろそろ13舎に戻りますね」
もう三鶴もいないだろうと13舎へ戻ろうと、5舎を後にする。
いつ何処にいるかもわからない三鶴を警戒しながら13舎へと向かう途中、突然背後から腕を掴まれると、そのまま壁へと背を押し付けられてしまった。
「巫兎ちゃん、み~っけ!」
「み、三鶴さん……!?」
とうとう三鶴に見つかってしまったが、何故三鶴がこんなことをするのかわからず動くことができない。
サングラスのせいで表情はよくわからないが、どこか悲しげに思える。
「5舎で楽しそうだったよね~」
「ッ……!?何故それを!?」
「あっれー?俺ちゃんが普段何処にいるか知らない訳じゃないよね?」
そう、三鶴がいるのはセキュリティールーム、そこは刑務所全体の監視ができる場所であることをすっかり忘れていた。
だが、だとしたら、あのことも三鶴は知っているのではないかと口を開く。
「もしかして、13舎13房の脱走の件も……」
「あ~、あれね。勿論知ってるよん」
13舎13房の度重なる脱獄は、看守である巫兎、ハジメ、大和、星太郎、そして13房の囚人しか知らないことであり、もし隠していたことが上に知られれば、看守である巫兎達の責任となるのは間違いない。
だが、知っていたのに何故三鶴は上に報告しなかったのか疑問が残る。
「今、何で上に報告しなかったのかって思ったでしょ?」
「ッ……!」
「それはねー」
一体どんな理由があるのだろうかと三鶴の言葉を待つと、三鶴の口角が上がる。
「ハジメと遊ぶのが好きだからね~。モニターで見てると面白いんだよ」
「それって、ただハジメ主任の反応を楽しんでるだけなんじゃ……」
絶対にこの事をハジメが知ったら怒るに違いないと思っていると、でも、と三鶴は言葉を続けた。
「今はもう一つ理由があるんだよね~」
「もう一つ、ですか?」
「うん、それはね」
巫兎ちゃんだよと耳元で言われ、鼓動が音をたてる。
まさかその理由に自分も入っているとは思いもせず驚いていると、三鶴は楽しそうに笑みを浮かべていた。
「私が理由ってどういう、ッ!?」
言いかけたとき、三鶴の舌が首筋を這い、くすぐったいような感覚に体を捩る。
「巫兎ちゃんの質問はここまで!話を戻そっか。何で俺ちゃんを避けてたのかな~?」
モニターで見ていたのなら、5舎にいたことや巫兎が三鶴を避けていたことなど当然知っているわけで、知られてしまったからにはちゃんと伝えようと口を開く。
「三鶴さんがいると、仕事にならないからで……」
「で、俺ちゃんがいなくて5舎の連中と仲良く話してたんだ?」
「はい……」
「71番には手まで握られて、顔を真っ赤にしてたよね」
そんなところまで見られていると、何だかここにプライバシーはないのかと思ってしまうが、目の前の三鶴の顔は何だか悲しげに見え言葉がでなくなる。
何故そんな顔をしているのかわからず聞こうとすると、足の間に三鶴の片足が入れられた。
「俺ちゃんにも見せてよ、巫兎ちゃんが林檎みたいに真っ赤に染まるとこ」
「ッ……三鶴さん、止めてください」
そんな言葉など聞く耳持たず、頬に手が添えられると、そのまま手が下へと滑り頬を撫でる。
ただ頬を撫でられているだけなのに、何故か背筋がゾクゾクとする感覚に可笑しくなりそうだ。
「そう、その顔が俺ちゃんは見たかったんだよねー」
そう言うと三鶴は巫兎から体を放し、ニヤリと笑みを浮かべる。
巫兎は何が何だかわからず頭の中がぐるぐるとしてしまっていると、伸ばされた手が頭に置かれ、巫兎は三鶴へと視線を向けた。
「これからは付き纏わないから、避けるのだけは勘弁してくれないかな?俺ちゃんも結構傷ついちゃうんだよね~」
口調はいつも通り軽い三鶴だが、声色がいつもと違い少し元気がないように感じる。
「んじゃ、今日はこの辺で仕事に戻るんで、まったね~!」
「ま、待ってください!」
遠ざかっていこうとする背に声をかけると、三鶴は立ち止まり不思議そうに巫兎へと振り返る。
「付き纏ってもいいですから……」
「へ?」
「付き纏ってもいいですから!私、今日ずっと何かが足りないような気がしてたんです。それが今ならわかります」
三鶴に付き纏われない初めての一日だったが、それは何かが足りないような、そこにいるべき存在がいない、そんな寂しい感情が巫兎の中にずっとあった。
三鶴に壁に押し付けられたとき、突然のことで驚きもしたが、三鶴を見て安心した自分がいた。
「いつの間にか私、三鶴さんが傍にいることが日常の一つになっていたみたいです」
ニコリと笑みを向け伝えると、三鶴は巫兎へと近づき思いきり抱き締めた。
「そんなこと言われたら、俺ちゃんずっと巫兎ちゃんに付き纏うからね?」
「はい、そうしてください」
でも、仕事の邪魔にはならない程度にと言葉を続けようとしたが、言うより先に三鶴は巫兎の腕を引き歩き出す。
「え?三鶴さん?」
「そうと決まったら先ずは13舎に戻らないとね!ハジメに巫兎ちゃんが怒られちゃったら嫌だからねー」
結局話しは最後まで聞いてもらえず、その後三鶴は前以上に巫兎にベッタリとなってしまい、周りへの迷惑は格段に上がった。
とくにハジメは三鶴の遊び相手にされる事が増え、これには囚人も憐れみ、13房の脱獄の回数が減るという結果をもたらした。
「胃がいてー……」
「主任、胃薬です」
「いつも悪いな星太郎」
最近は胃薬の減りも早くなり、このままではハジメの身が持たないのではと星太郎が心配している。
そんな二人にたいし巫兎は心の中で謝罪し、あんなことを言ってしまった自分に後悔をしてしまう。
「あの、三鶴さん、近いです」
「えー、だって離れたくないしさー」
やっぱりあの平和な時間が、今は恋しくなる巫兎だった。
《完》