前よりも、アナタに恋して
名前変更
名前変更お話にて使用する、夢主(主人公)のお名前をお書きくださいませ。
【デフォルト名】
巫兎(みこと)
囚人番号:211
※囚人番号は固定となります。
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この南波刑務所には、南波刑務所恒例行事や新年大会での実況を務める人物がおり、その放送局部部長が一声 三鶴という男だ。
行事などで放送や実況係を勤めることもあるが、普段はセキュリティールームで刑務所全体の監視を行っている。
そして、そんな三鶴に気に入られてしまったのが、最近新人で13舎に配属された女看守の巫兎だった。
「あの、何故ついてくるのでしょうか?」
「いや~、巫兎ちゃんのこと好きだからね!一緒にいたいって思うのは普通じゃないかな~」
色黒の肌、そしてピアスにサングラス、その上この話し方だ、チャラい男が苦手な巫兎からしたらあまり関わりたくはないタイプの人間だ。
だが、一応自分より先輩のため何も言うことができず、結局三鶴に付き纏われることとなる。
「主任、3舎に書類を届けてきました」
「ああ、ご苦労だったな」
「やっほー!ハジメ」
「三鶴、てめーまた巫兎に引っ付いてやがったな!!」
ハジメが怒るも、三鶴は気にする様子もなく何時ものテンションでハジメの反応を楽しんでいる。
巫兎が南波刑務所に来てからというもの、毎日この繰り返しであり、正直迷惑でしかない。
仕事をしている途中で声をかけられたりもするため、仕事が進まないことなんてしょっちゅうだ。
「はぁ……」
「どうしたの?溜め息なんてついて」
休憩時間となった巫兎が休憩室でため息をつくと、近くに座っていたキジが尋ねてきた。
その場にいたハジメや猿門にも、三鶴のことを話すと、3人はどうしたものかと巫兎と一緒に頭を悩ませる。
「三鶴には俺も迷惑してるからな」
「まぁ、あれだけ付き纏われたんじゃストレスにもなるよな」
「女の子の迷惑も考えないなんて、ちょっと懲らしめてやるべきよ!」
だが、結局その為のアイディアは浮かばず4人が悩んでいたとき、ハジメがひらめいた。
それは、巫兎と三鶴を会わせなくするというなんともシンプルな方法だが、一番解決に近いものだ。
「いいじゃない、それ!」
「ゴリラにしてはいい案じゃねーの」
「何だとサル!?殺されてーか!!」
だが、この方法を実行するには皆の協力も必要になる。
そこで、日頃三鶴に迷惑を被っている他の舎の主任達にも協力を求め、巫兎と三鶴、会わせないぞ大作戦が決行された。
「巫兎、この書類を5舎に届けてくれ」
「はい、わかりました」
書類を手に5舎へと向かう途中、三鶴の姿はないかと警戒しながら歩くが、今日はとくに会うこともなく無事に5舎へとついた。
「ハジメ主任に頼まれた書類をお届けに来ました」
「ああ、ご苦労だったな!」
猿門に書類を渡し、13舎へ戻ろうとしたその時、看守室の扉が勢いよく開かれ、看守である六力 大仙が中へと入ってくる。
慌てた様子の大仙に猿門がどうしたのか聞くと、どうやらこの5舎に三鶴が来たらしく、看守室、つまりここに三鶴が向かっているらしい。
「なッ!?どーすんだよ!!ここじゃ隠れるとこなんて……仕方ねぇ。おい!ここで隠れてろ!」
そう言い猿門は立ち上がると、デスクの下を指差す。
巫兎は慌ててその下へと身を縮こませ隠れると、聞き慣れた声が看守室に響く。
「やっほー!」
「三鶴じゃねーか、なんか用かよ」
「あっれー?ここに巫兎ちゃんって来てない?」
「巫兎なら来てねーけど、13舎にいんじゃねーの」
そっかーと納得すると、三鶴は看守室を去り、どうやら巫兎を探しに向かったようだ。
なんとか見つからずにすみ、猿門は安堵すると、今もデスク下に隠れている巫兎へと近づき声をかける。
「もう行っちまったから出てきていーぞ」
その言葉に、巫兎は緊張を解きデスクから出てくると、猿門にお礼を伝えた。
だが困ったことに、きっと今三鶴は13舎に向かったに違いなく、もし今から巫兎が戻れば鉢合わせになりかねない。
「三鶴のことはハジメが適当にやってくれるだろーけどよ、今は戻らねー方がいいだろうな」
そうして巫兎は、しばらくの間5舎に留まることとなった。
流石に三鶴も同じ場所にそう何回もこないだろうという考えだ。
その間、巫兎は5舎を見学させてもらうことにし、丁度鍛練中だった囚人の様子を眺めていた。
「巫兎ちゃんじゃねーの」
そう声をかけてきたのは、5舎8房の囚人、囚人番号71番のチィー。
「チィーさん、お久し振りです。って、またサボりですか?」
「まーね!こんな暑い中走るなんて俺は無理だしね。それより巫兎ちゃんの方こそどうしたんだ?」
話すべきか迷ったが、チィーになら平気だろうと今回の事を説明する。
「なるほどねー。でも、その気持ちわかるかも」
「え?」
その時、チィーの手が巫兎の右手を取ると包み込むように優しく両手で握った。
突然のことに驚きで頬を染める巫兎の姿がチィーの瞳に映される。
「俺も囚人じゃなかったら、巫兎ちゃんの傍にずっといたいって思うからさ」
「ッ!?」
巫兎と年もそう変わらないのだが、チィーの大人を感じさせる雰囲気にくらくらしてしまいそうになる。
何て返事をすればいいのかわからず困っていると、さっきまで感じていた手の温もりが離れていく。
「なんてね」
「へ?」
「困った顔も可愛いよねー」
「ッ……!!からかったんですね!酷いです!!」
ごめんごめんと謝るチィーから顔を背け怒った振りをしてみると、今度はチィーさんが困った表情になりクスッと笑みが溢れる。
こんな平和な日を過ごすのは、この南波刑務所に来て初めてのことだと言うのに、何かが足りない、そんな気持ちを巫兎は感じていた。
「巫兎さんじゃないですか。で、なんでクズは謝ってるんですか?」
「あ!ウパくん」
「クズって……」
グラウンドを走り終えたウパが二人の元へとやって来るが、そこにはもう一人の姿がない。
「あれ?リャンくんは?」
「リャンならグラウンドを走り終えた後直ぐに猿門さんのところへ行きましたよ。今日の組手のお相手はリャンですから」
流石鍛練の5舎と呼ばれるだけあって、皆体の鍛え方が違うのだなと感心してしまう。
普通の人なら、グラウンドを走り終えた後に組手などできないだろう。
その上今は太陽が真上に上っており、こうして皆の様子を見ているだけでも暑さでくらくらとしてしまうくらいだ。