アナタが教えてくれたから
名前変更
名前変更お話にて使用する、夢主(主人公)のお名前をお書きくださいませ。
【デフォルト名】
巫兎(みこと)
囚人番号:211
※囚人番号は固定となります。
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とある孤島に所在する、日本最大にして世界最高水準のセキュリティを持つ刑務所、南波刑務所。
ここの最も奥に存在する13舎13房の雑居房に捕らわれている4人の囚人は、今日も脱獄をしていた。
「おいお前ら、って、またアイツら脱獄しやがったなッ!!」
13房にやって来たこの男、双六 一は、この13舎の主任看守部長だ。
だが、扉を開けるもそこに彼らの姿はなく、血管を浮き上がらせながらその場から離れるとモニタールームへ向かう。
「おい!どうなってやがる!」
「えっとですね。先程脱獄した13房の囚人は、セキュリティーをどんどん突破してまして。このままだと……どうしましょう!!脱獄されちゃいますよ!!」
「あー、泣くなッ!!」
泣きながらハジメにすがりつくこの男は、七夕 星太郎。
13舎で一番下っ端の看守であり、イケメンの部類に入るが、気が弱いのが欠点だ。
そんな七夕を引き離し、ハジメが向かった先は、この監獄最後の難関ともよべる場所だ。
一方そのころ13房の囚人達は、次々とトラップを回避し、ついに、最終地点の扉を開いた。
「よし、開いたぞ!」
「でかした!」
「凄いよジューゴくん!」
「だが、最後は……」
4人が見つめる先、それは刑務所の外なのだが、そこには一人の人物の姿がある。
そう、その人物こそ双六 一だ。
そしていつものことながら、怒りの拳をくらった4人は再び13房へと逆戻りとなった。
だが、4人が戻ってきたとき何故か部屋の真ん中に、一人の女が正座をして座っている姿がある。
「ッ!?ハジメ、女の子!!女の子がいんだけどッ!?」
「どこどこ?ほんとだ!女の子だ~」
「何でここに女が!?」
「あ、本当だ」
自分達の部屋だというのに、4人は女に気をとられ、中に入ることも忘れ、ただ女へと視線を向けていた。
畳に正座する女の姿は一枚の写真のように美しく、ハジメとジューゴ、この2人を覗いて3人は生唾を飲む。
すると女はスッと皆へ視線を向け、その視線に3人は鼓動を跳ね上がらせた。
「戻ってこられたのですね」
美しい声音で微笑みながら言われた言葉はどこか心地よく、3人は口をつぐんだまま声が出せずにいた。
そんな3人のことに気づきもせず、その中でジューゴが口を開く。
「誰?」
その質問に答えたのは、この13舎の主任看守部長であるハジメだった。
「ああ、こいつは13房の新人で、囚人番号211番の」
「巫兎です」
音もなく立ち上がった巫兎に柔らかな笑みを向けられ、3人の鼓動は更に早鐘を打ち頬が色づいていく。
だが、そんな3人の気持ちに気づかないのがジューゴだった。
あまりの美しさに固まって動けずにいる3人とは違いジューゴは、部屋の中へと入ると、巫兎に近づいていく。
「俺はジューゴだ。よろしく」
「よろしくね、ジューゴくん」
差し出された手を握ろうとしたそのとき、ジューゴは3人に引っ張られ部屋の隅へと連れていかれてしまった。
「いきなり何すんだよ」
「何すんだよじゃねぇ!!」
「そうだよジューゴくん」
「あんな美人な女となに握手しようとしてんだよ!!」
隅で話している4人の声はよく聞こえず、巫兎が小首を傾げていると、何を話しているのが想像がつくハジメは溜息をついた。
「何を話してるんでしょう?」
「あー、気にすんな。んじゃ、俺はこれで行くが、問題は起こすんじゃねーぞ」
「ふふッ、問題なんて私は起こしませんよ」
ニコリと笑った巫兎の笑顔、その意味がわかるハジメはまたも不安の種を抱えながら13房を後にした。
そして、ようやく話がついたのか、4人が巫兎の前へと近づいてくる。
「まずは俺からだ!俺はウノ」
「俺はロック」
「僕はニコだよ!」
緊張しながらも自己紹介をする3人に、巫兎は再び柔らかな笑みを浮かべよろしくねと言う。
その笑顔の破壊力に魅了されない男などいるはずもなく、3人は巫兎に心を奪われてしまった。
そしてその日から、巫兎を巡って恋の火花を散らせる3人だったが、ジューゴだけが何で皆は巫兎がいいのかよくわからず、ただじっとその光景を眺めていた。
そして今日も、巫兎を巡っての喧嘩が始まっていた。
「巫兎は俺と娯楽室に行くんだ!」
「何言ってるの!巫兎ちゃんは僕とゲームをするんだよ!」
「いや、巫兎は俺と食堂の献立の話をすんだよ!」
巫兎の取り合いで3人が揉める中、その原因ともなる巫兎は笑みを浮かべていた。
「ごめんなさい。私、今日はジューゴくんと脱走をしてみたいの」
突然の言葉にジューゴだけでなく、そこにいた全員が驚きの表情を見せるが、そんな皆のことなど気にする様子もなく、巫兎はジューゴの腕を掴むとその場を後にした。
それから少し走ったところで立ち止まると、巫兎はジューゴへと向き直り口を開く。
「突然ごめんね、皆からジューゴくんは脱獄に関しては天才だって聞いて、一度その技が見てみたくなっちゃって」
「ああ、そういうことなら見せてやるよ!」
その後ジューゴの活躍により、どんどんセキュリティーも突破したのだか、最後のセキュリティーでジューゴの手が止まる。
「どうしたの?」
「いや、この先にはハジメがいるなと思ってさ」
「そっか、最後のセキュリティーがあのハジメさんってわけなんだ」
ジューゴは正直ここから脱獄する気なんてないため、今日もこのセキュリティーを解除したら終わりの筈だったのだか、最後のセキュリティーを解除し巫兎へと振り返った瞬間、巫兎との距離が近いことに気づいた。
だが、そんな距離にもなんの動揺も示さず、ジューゴは先に行こうと促す。
「待って、ジューゴくん」
「何?」
「本当はね、私ジューゴくんと二人きりになりたくて脱獄しようなんて言ったの」
その言葉の意味などジューゴにわかるはずもなく、どういう意味だと首を傾げている。
そんなジューゴに、巫兎は更に距離を近づけると、艶っぽい声音でわからないのと囁く。
「悪いんだけど、さっぱりわかんねーや」
「ッ……!!そんなわけないわよッ!!私みたいな美人な女に心奪われない男なんているはず」
「それがいるんだよ」
巫兎の余裕の笑みが崩れた瞬間、ロックが解除された扉から入ってきたハジメが口を挟む。
そんなハジメの言葉に、有り得ないわと認めようとしない巫兎だったが、実際に目の前にいるジューゴからは好意を感じられない。
「残念だったな。お前のことだ、どうせ脱獄するために男惚れさせて、そいつら使って脱獄、なんて考えてたんだろ」
「ッ……!!」
そう、この巫兎という女、自分の美しさを武器に、男を惚れさせてはその男達に脱獄をさせ、自分も抜け出すという手で何度も脱獄をしてきた女なのだ。
巫兎自体には何もできないが、その美しさ故に惹かれない男はおらず、看守すらも惚れさせて脱獄の手伝いをさせたこともある。
「お前の美貌も、この南波刑務所ではなんの役にもたたねぇだろうな」
「どういうことかしら?」
「お前が惚れさそうとした15番は、そういうことだけじゃなく、いろんなことに鈍いんだ。それにだ、ここの看守に、お前に惚れて逃がすなんてへまをするやつは生憎いないんでな」
「最悪だわ……」
結局そのまま13房へと戻されたジューゴと巫兎だったが、残っていた3人が巫兎の様子が可笑しいことに気づき声をかけた。
だが巫兎は、何でもないのといつもの笑みを浮かべる。
内心では、まだこいつらには使い道があると思いながら。