時が好きを変えていく
名前変更
名前変更お話にて使用する、夢主(主人公)のお名前をお書きくださいませ。
【デフォルト名】
巫兎(みこと)
囚人番号:211
※囚人番号は固定となります。
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好きには、恋愛、友情など、色々な種類がある。
そしてここにも、そんな好きの種類が関係する男女がいる。
「ボクは、巫兎さんのことが……好きですッ!」
「ウパくん……。ありがとう、私も好きだよ!」
「本当ですか!?」
「うん!リャンくんやチィーさん、猿門主任も皆、私は好きです!」
ニコリと笑みを浮かべながら答える巫兎に、そうじゃないでしょうと小さな声で呟いたウパの声が届くことはなく、折角勇気を出して告白したにも関わらず、その本当の想いに巫兎は気づかない。
そんな二人のやりとりを少し離れた場所から見つめる3つの影がある。
「あ~、やっぱ58番のヤツダメだった見てぇだな」
「そのようですね」
「まぁ、俺ら3人も同じ返事だったしな~」
影の正体は、ウパと同じく巫兎に告白をしている3人の姿だった。
その3人とは、この5舎の看守である悟空 猿門、そして、5舎8房の囚人、囚人番号2番のリャン、同じく、5舎8房の囚人で、囚人番号71番のチィーだ。
3人共、ウパと同じく巫兎に告白をしたのだが、返事はウパと同様、巫兎の中では複数の好きの中の一人でしかなかった。
「もしかして巫兎ちゃん、人を好きになったことないとかだったりして?」
「そりゃねぇだろ」
「いえ、猿門さん、もしかすると……」
まさかと思いながら3人の視線が巫兎へと向けられる。
そこには、今も楽しそうにウパと話す巫兎の姿があり、ウパは少し表情が曇っているようだ。
「あれ、傷つくんだよね……。ふった本人は気づいてないけど」
「あぁ……。だがよ、巫兎が人を好きになったことねーとか、ありえねーだろ」
「そうですね。私は巫兎さんに振り向いていただけるよう、もっと相応しい男になって見せます!」
そんな会話がされているなど、巫兎もウパも知るわけもなく、フラれたウパの心は傷ついていた。
ただ好きが違うだけであり、ウパの好きの種類が違うことに、巫兎は気づいていないだけなのだろうが、すでに恋としての好きではないのならフラれたと同じことだ。
「はぁ……」
「ウパ、元気を出せ」
「ボクはアナタ達のような強い心なんてありませんから、ほおっておいてください……」
一人落ち込むウパを励まそうとリャンが声をかけるが、今のウパを励ますのは難しいようだ。
「やはりボクが小さいから、だから男としてみられていないのでは……。だとしたらもっと巫兎さんに似合う男になれば……」
何やら一人で考え出してしまったウパに誰も声をかけることができずにいると、突然ウパが立ち上がった。
「よし!そうですよ!ボクがもっと男として巫兎さんに見てもらえるようになればいいんです!!」
どうやら、他の皆と同じくウパも、簡単には諦めない強い心を持っていたようだ。
「あらら、なんかやるきだしちゃったよ」
「私もウパに負けていられませんね」
「キキキッ!まぁ、何人なろうが巫兎は俺がもらうけどな」
そんなことがあった翌日のことだ、何時ものように皆の鍛練の様子を監視する巫兎だったが、そんな巫兎に近づく一つの影があった。
「巫兎ちゃん」
「あ、チィーさん。もう具合は大丈夫なんですか?」
「あー……うん、平気平気」
何時ものことながら、仮病を使い休んでいたチィーだったが、今回はサボることが目的ではない。
この時間こそ、巫兎と二人きりになれるチィーにとってのチャンスなのだ。
真面目なリャンやウパ、猿門に、真っ向からぶつかって敵うわけがないことくらいチィーもわかっている。
だからこそ、この時間でその差を埋める必要がある。
「な!?」
「リャン、何を余所見してるんですか」
「ウパ!あれを見てみろ!!」
「何ですか……ッ!?」
二人の視線の先には、今まさに抜け駆けをしているチィーの姿がある。
そんな光景を目にした二人の内心では、今すぐにでもチィーに蹴りをいれたいところではあるが、今は鍛練の最中、抜けるわけにはいかない。
「あのクズ……」
そんな苛立ちが言葉に出たリャンだったが、隣で浮かぶウパは平然としている。
「ウパ、お前は怒らないのか?」
「はい、ボクは大人の男ですから」
そう言ったウパの手には拳が握られているが、どうやら大人の男は嫉妬などしないという考えに行き着いたようだ。
どんなに嫉妬しても、今は走るしかできない二人はグランドを走り続ける。
その頃、チィーと巫兎はというと、チィーの体調を気にした巫兎がベンチへと座らせていた。
本当はただの仮病なのだが、巫兎はいつもチィーが本当に具合が悪いと信じきっている。
「いくらよくなっても、先程まで体調を崩されていたんですから、ここで大人しく見学していてくださいね」
「優しいね、巫兎ちゃんは。囚人で、それも俺みたいなヤツを気遣ってくれるなんてさ」
「看守として、囚人の健康管理を気にするのも当然ですよ」
ニコリと笑みを浮かべた巫兎に、チィーも笑みを返す。
すると、伸ばした手が巫兎の腕を掴みそのまま引き寄せられてしまう。
「きゃッ!?」
そのままチィーの胸の中へと倒れてしまい、慌てて離れようとする巫兎の体をチィーは抱き締め動きを封じる。
まだグランドでは皆が走っており、この状況を見られでもすれば誰もが誤解するだろう。
「チィーさん、あの、放していただけますか……?」
「ダーメ」
チィーは抱き締める力を更に強め、巫兎と密着する。
巫兎の耳元ではチィーの息遣いが聞こえ、みるみる顔は真っ赤に染まっていく。
「可愛いね」
「ッ……!!」
そんな巫兎の反応が可愛くて、チィーは耳元で囁くように言うと、巫兎の耳に吐息がかかり体がビクッと反応する。
だがその時、突然ゴンッと言う音が聞こえると、巫兎を抱き締めていた腕が放されたため、巫兎は直ぐにチィーから離れた。
「何してるんだ、このクズッ!!」
そこには、グランドを走り終えたばかりのリャンとウパの姿があり、二人とも鬼の形相でチィーへと視線を向けている。
そしてチィーはというと、リャンに一撃をくらった頭を押さえている。
「リャン、今のは痛かった。止めるならもう少し優しくしてくれないかなぁ……」
「どの口が言うんだ?」
「顔怖いから!それにウパはウパでその視線やめて!!精神的に来るから!!」
そんないつも通りとも呼べる光景に、チィーにからかわれたのだろうと巫兎は一人納得していた。
そしてその後は、鍛練を終えた皆を房へと戻し、巫兎は休憩の時間となる。
だが、巫兎が向かった先は休憩室ではなく看守室、今日は猿門が忙しそうにしていたため、巫兎は気になり様子を見に行こうとしたのだ。
扉をあければ椅子に座り、書類を見つめる猿門の姿がある。
「おう!巫兎か、どうしたんだ?お前休憩時間だろ」
「はい、そうなんですが、今日猿門主任忙しそうだったので、何か私にお手伝いできればと思いまして」
巫兎にできることなど些細なことかもしれないが、何か少しでも役に立てるならと、休憩時間さえも他人のことを気遣う。
すると、猿門は手にした書類をデスクの上に置き、巫兎へと近づいてくる。
目の前まで来たところで、巫兎へと手が伸ばされ、何だろうと首を傾げると、猿門の指が巫兎の額を軽く弾いた。
「ッ……!」
「バーカ、こんなんお前に心配されなくても一人でなんとか出来るっつの。お前はもう少し自分のことを気遣え」
「はい、すみません。要らない心配でしたよね……」
自分みたいな下っ端が主任を心配するなんて失礼だよなと顔を伏せてしまうと、頭に手が置かれ顔を上げた。
すると、猿門は笑みを浮かべ、でもサンキューなと嬉しそうに言う。