涙の意味を知りたくて
名前変更
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【デフォルト名】
巫兎(みこと)
囚人番号:211
※囚人番号は固定となります。
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「いつまで寝てやがる!!今日は全部吐いてもらうからな!!」
「んッ……もう朝ですか?」
「もう昼だっつの!!」
眠い目を擦りながら起き上がる巫兎を看守室へと連れていくと、すでに来ていた大和も加わり昨夜の事を詳しく聞こうと質問する。
質問内容は昨日と変わらず、何故この場所を知っているのか、そしてどうやってこの場所に来たのかだ。
だが、何度聞いても空から来ましたと答えるだけで話が進まず、看守3人もお手上げ状態となりハジメは頭を抱えている。
「お姉さん、もう大丈夫なの?」
「はい、ゆっくり休ませていただきましたから」
「って、なんで25番がここにいやがる!!」
いつの間にか宿直室に現れたニコは、昨夜脱走をした4人の中の一人だ。
だが、房に入っているはずのニコがここにいるということは、他の3人も脱獄したということになる。
余計な仕事がまた増えたとイライラしていたハジメの耳に届いたのは、巫兎と数人が話す話し声だった。
「へぇ、巫兎ちゃんっていうんだ!」
「昨日空から降ってきたよな?」
「ねぇねぇ、巫兎ちゃんて天使さんなの?」
「それはねーだろ」
その声は、昨夜の脱獄囚人4名のものであり探す手間はなくなったが、こう簡単に何度も何度も脱獄されていてはハジメの仕事は増える一方だ。
「はぁ……。胃がいてぇ」
「主任、お薬です」
「あぁ、わりーな」
星太郎から胃薬を受け取ると、何時ものように薬を飲みストレスを和らげる。
天使だとか空から降ってきたなど、有り得ない空想話に花を咲かせる囚人達を房へと戻すと、再び椅子に座り質問というより尋問を始めた。
「てめー、何時までそうやって隠すつもりだ」
「隠してなど私はいませんよ?」
「空から来たなんて有り得るわけねーだろうがッ!!」
星太郎は見回り、大和は何時ものごとく迷子、ハジメを止める人がいない今、巫兎に無理矢理にでも吐かせるしかない。
でなければ、いつこの件が他の舎の人にバレるかわからないからだ。
問題は速やかに解決しなければ、ハジメの胃が持たなくなるだろう。
「女だろうがアンタはこの南波に浸入したことになる。そんな何者かもわからねぇヤツに優しくするつもりはこっちにはねーんだよ」
鋭く突き刺すような視線が巫兎へと向けられると、巫兎はニコリと微笑み口を開く。
「私は空から来たのですよ」
「だからんな話を俺は聞きてぇんじゃ」
「私はこちらで言われるところの天使ですから」
「……もういい、話にならねぇ」
房にでもブチ込めば音を上げて吐くだろうと考えたその時、突然目の前が光に包まれ、あまりの眩しさにハジメは目を瞑る。
直ぐにその光は収まり瞑っていた瞼を開けると、目の前の信じられない光景に言葉を失った。
「これが私の本来の姿です」
「なッ!?」
巫兎の背には羽が生えており、髪も先程までとは少し変わっている。
「何の冗談だ……」
「冗談じゃないですよ?」
そう言うと、巫兎の背に生えていた羽は消え、姿も一瞬にして戻ってしまった。
「本当は、この姿は人には見せてはいけないのですが、アナタには特別です」
「ッ……!」
微笑みながら特別なんて言われたせいで、不覚にも一瞬ハジメの鼓動がドクリと脈打つ。
この高鳴りはきっと今の言葉だけのものではなく、現状が理解できないせいでもあるのだろうと自分に言い聞かせながら大きく息を吸い自分を落ち着かせる。
「信じてもらえましたか?」
「はぁ……。あぁ、目の前であんなもん見せられたら信じねぇ訳にもいかねぇだろ」
「よかった!」
ニコニコと笑みを浮かべる巫兎とは対照的にハジメは、天使なんてものをどうしたらいいのかと更に悩んでいた。
天使だからこの南波刑務所の場所を知ることができ、来ることもできたとしても浸入は浸入だ。
そして、天使ならこの場所を知られていても問題は無いのか、すでにハジメだけでは判断できない状況に陥っていた。
「あら?まだ悩み事ですか?」
「あぁ、天使だからっつっても、この場所を知られるのは不味いからな」
「問題ないですよ。私がこの場所を去るときには皆さんの私に関する記憶は全て消えますから!それに、天使は普段人間には関わらないので、この場所を口外することもありません」
巫兎の言葉にハジメの悩みは一気に無くなり、体からスッと力が抜けるのを感じた。
だが、巫兎が言ってることが事実だとしたら、一つ疑問が残る。
「お前は今、天使は普段人間には関わらねぇっつったが、なら何で今お前はこうして俺達と関わってんだ?」
そう、普段人間と関わらない天使がよりにもよって刑務所何てところに来るのは不自然でしかない。
「それはですね」
どんな言葉が返ってくるのだろうかと巫兎の言葉を待つ。
「秘密です!」
結局何かを隠しているのか質問には答えてもらえなかったが、これで大体のことはわかった。
だが、これはわかったところでどうしたらいいのかなど、ハジメだけでなく誰にもわからないだろう。
上に報告すべきか悩んでいると巫兎の声が聞こえ、再び視線を前へと向ける。
「一つ言えることは、会いたい人がいて来てしまったということです……。こちらの世界で天使は長く居続けることはできませんから、あと数日だけ、こちらにいさせてはいただけませんか?」
ぽわぽわとした感じは変わらないものの、巫兎の瞳の奥が不安げに揺れている。
天使だろうが何だろうが、ここに浸入した事実は変わらず、そんなヤツをここにおく理由もないのだが、その瞳を見ていると断るに断れず頷いてしまう。
「やったぁッ!!ありがとうございます!」
「一応言っておくが特別だからな!数日したらここから消えてもらう、いいな?」
「はい!」
巫兎は笑みを浮かべながら、自分の体をゆらゆらと揺らしているが、一体天使が会いたい人物とは誰なのか気になるところだ。
「ところで、会いたいヤツってのは誰なんだ?」
「えっとですね……秘密です!」
「また秘密かよ……。秘密じゃ会わせようにも会わせられねぇぞ」
さっさと会わせて帰らそうとしたのだが、巫兎は会いたい人物については何も話しはしなかった。
「大丈夫ですよ、直ぐに見つかりますから」
ニコリと微笑む女は何を考えているのか相変わらず読めないが、それ以上ハジメは聞こうとはしなかった。
巫兎が秘密と言ったことは、それ以上聞いても答えてはくれないだろうと思ったからだ。
だが、それから2日が過ぎた今も、巫兎はただここでの日々を過ごすだけで一向に会いたい人物を探そうとはしていない。
「巫兎~、今日脱獄するんでよろしく~」
「わかりました!脱獄頑張ってくださいね!」
「巫兎ちゃ~ん、俺には頑張ってはないの~?」
「ウノくんも頑張ってくださいね!」
「ジューゴくんにウノくんばっかりズルいよ!」
「そうだそうだ!」
今日脱獄をするという話のようだが、ここはすでに看守室であり、すでにジューゴ達は今日最初の脱獄をしている。
「最近よく皆さんここへ来ますよね」
お茶を運んできた星太郎が巫兎と囚人の間に入り声をかける。
星太郎の言う通り、巫兎がここに来てからというもの、ジューゴ達13房の囚人達が脱獄する回数はかなり増えていた。
普段から脱獄する問題児達ではあるが、ここ最近は脱獄をしては巫兎の元へと来て話をしているのがほとんどのため、探す手間は省けるのだが、こう何度も脱獄をされてはいつ他の舎の人に知られるかわかったものではない。