涙の意味を知りたくて
名前変更
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【デフォルト名】
巫兎(みこと)
囚人番号:211
※囚人番号は固定となります。
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月が綺麗な夜、此処、南波刑務所の囚人である13舎13房の4人の囚人が脱獄をしていた。
「てめーらは、毎度毎度脱獄しやがって!!俺の仕事が増えんだろうが!!」
ようやく外に出られた4人だったが、この南波刑務所を本当の意味で出るためには、この目の前に立ちはだかる男、13舎13房の主任看守部長である双六 一を倒さなければならない。
脱獄は此処に来てから何度もしているものの、ハジメだけは誰も倒せたことはなく、今日もやられるのを覚悟で立ち向かおうとしていたその時、何処からか声が聞こえてきた。
「キャーッ!!」
その声は女のものだが、此処は南波刑務所であり、とある孤島に所在する、日本最大にして世界最高水準のセキュリティを持つ刑務所。
その場所は何処にあるのかさえもわからない場所だというのに、そんな場所に女の声がする自体可笑しい。
「一体なんだ!?何処からこの声は、ぐはッ!!」
声の正体を突き止めるべく、ハジメが周りを見回していると、突然の頭上からの衝撃に顔面を地面へと強打してしまった。
囚人4人は何が起きたのかわからず砂埃を見つめていると、シルエットが浮かび上がり、ハジメの影ともう一つ影があることに気づく。
「あれ?誰かいるよ!」
「ほんとだ」
「なんだなんだ!?」
「どれどれ~って、もしかしてあれは……!?」
砂埃が収まりそのシルエットの人物がハッキリと見える。
「やっぱ女だぁーッ!!」
そう、ハジメの上で倒れているのは女であり、どうやら気を失っているようだ。
だが、この13舎の囚人に女はおらず、看守にも女はいない。
「ッ……一体なんなんだよ!!」
ハジメが上で気を失っている女を退け立ち上がるが、どうやら頭に直撃したらしくかなりの痛みを感じる。
「ハジメちゃん、女の人だよ!!」
「女だと?何でこんなとこに女がいやがんだよ」
「俺には空から降ってきたように見えたんだけど」
ジューゴの言葉に他の3人も頷くが、ハジメはんなわけねぇだろうがと信じはしない。
結局、女をこのまま放置というわけにもいかず、一度13舎の宿直室で寝かせ、目が覚めたら話を聞くことになった。
「あッ!その子運ぶの俺がやりたい!」
「えー、ウノくんズルいよ~」
「4人の中で一番力あんのは俺だろうが!」
「女なんだし、力そこまでなくていいんじゃないか?」
4人が揉め始め、イライラがピークに達したハジメは女を荷物のように担ぐと、4人にズルいズルいと騒がれたが、このままだと埒が明かないため有無を言わさず皆で看守室へと向かう。
「主任、お帰りなさい、って、え?女の人!?」
「ちょっと色々あってな。この女が目を覚ますまで宿直室で寝かせるぞ」
「は、はい!わかりました!」
13舎の看守の中で一番下っ端看守である星太郎は、何故女の人が此処にと不思議に思ったが、ハジメの言葉に返事をし、慌てて準備をする。
「あの女の人大丈夫かなぁ?」
「ああ、空からだもんな」
4人が女を心配していると、お前等は房に戻るぞとハジメに言われるが、女の人が心配だと房に戻ることを嫌がっている。
駄々を捏ねる4人だったが、ハジメに強制的に房に戻され、もう出てくんじゃねぇぞと念押しするとハジメはその場を離れ看守室へと戻っていく。
「そうだったんですか、看守のお仕事って大変なんですね……」
「うぅ……ッ!!そうなんですよ!だから僕、この仕事向いてないのかなって」
「そんなことないですよ。そんな大変なお仕事を今でもこなしてるんですもの、自信をもってください!」
「巫兎さんッ!!」
看守室へと戻ってきたハジメが目にしたのは、何故かすでに先程の女と仲良くなっていた星太郎の姿だった。
それも看守が何者かもわからない女に悩み相談、ハジメの苦労は増えるばかりで頭を抱えてしまう。
「あ、主任、お帰りなさい!」
「お帰りなさいじゃねぇ!!何でその女と仲良さげなんだよ!!」
「巫兎さんが優しくて、ついつい話してしまってました」
囚人も囚人なら看守も看守、どうやらここでまともなのはハジメくらいのようだ。
「もういい……。で、名前は巫兎だったな?何でアンタは此処にいる」
「え?アナタが運んでくれたって聞きましたが」
「そういうことじゃねぇ!!なんでこの南波刑務所にいんのかって話だ!!どうやってこの場所に来やがった!!」
怒鳴るようにして聞くハジメは、夜だというのに囚人の脱走、そして訳のわからない女の登場にイラついているようだ。
そんなハジメを前にしても、巫兎のぽわぽわとした雰囲気は変わることはなく、う~ん、う~んと考えている。
その巫兎のぽわぽわとした空気は、いつものハジメなら更にイラつかせることになるのだろうが、今はそれよりも、こんなことがバレればただではすまないという心配事がハジメの中では勝っていた。
「あ!」
「なんだ?」
「喉が乾いてしまって、お茶をいただいてもよろしいですか?」
巫兎は質問には答えず、まるで話を逸らすかのようにお茶を要求する。
先程からぽわぽわとし何を考えているのか読み取れないため、ハジメのイラつきは募るばかりだ。
早くこんな面倒事は片付けたいというのになかなか話が進まず、ハジメの肩が怒りで震えている。
「この女……無理矢理にでも吐かせてやるッ!!」
「主任ッ!!落ち着いてください!!」
胸ぐらを掴みかかりそうな勢いのハジメを星太郎がなんとか押さえ制止するが、そんな状況にも巫兎は動じることなくぽわぽわ満開だ。
「主任、いくらなんでも女性に掴みかかるのは不味いですから!僕がお茶を用意しますので取り合えず落ち着いてください!!」
星太郎の言葉に我に帰ったのか、怒りを落ち着けると再び椅子へと座る。
「お茶です、どうぞ」
「ありがとうございます!ふぅ、お茶が美味しい」
「おい!飲んだならさっさと質問に答えろ!」
そのハジメの一言に、巫兎は湯呑みを置くとハジメへと視線を向け、人差し指を立てニコリと笑みを浮かべ答えた。
「空から来ました」
「お前、答えねぇつもりだな……」
ニコニコと笑みを浮かべるだけで答えるきがない女にこれ以上聞くのは無駄と判断したハジメは、巫兎の身柄を預かることに決めた。
囚人ではないため房に入れることはできず、しばらくは宿直室で寝泊まりをしてもらい、ハジメや大和、星太郎が交替で監視をすることになるだろう。
「お前が本当のことを話すまでここで身柄を預からせてもらう。わかったら今日は寝てろ」
「わかりました、おやすみなさ~い」
小さな欠伸をすると、巫兎は素直に宿直室へと入っていく。
「これで一先ずはいいだろう」
「でもどうするんですか?もしこんなことが他の舎の人にバレでもしたら、僕達クビですかね……」
「うッ……!バレなきゃいいだけの話だ」
こうしてこの夜は、ハジメと星太郎が交替で宿直室の扉の前で見張り、とくに問題もないまま朝を迎えた。
「あの女はどうしてる」
「宿直室からは一度もでていませんよ」
それを聞いたハジメは、ノックもせずに女性が眠る宿直室へと入ると、今もすやすやと寝息をたてている女を起こす。