お団子の甘い夢 後編
名前変更
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【デフォルト名】
風明 音根(ふうめい おとね)
■友達(親友)
陽子(ようこ)
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夜、もう周りは寝静まった頃だというのに、音根は眠れず天井を見つめていた。
今日花畑で沢山眠ってしまったのが眠れない原因だろう。
布団に入っていても眠れそうになく、音根は羽織を肩に掛けると外に出た。
「綺麗なお月様」
ポツリと月を見ながら呟くと、こんばんはと声がかけられ振り返る。
するとそこには伊作と仙蔵の姿があり、二人は音根の元へと近づいてくる。
「二人も眠れなかったの?」
「はい、今日は沢山寝てしまいましたから。ですが、そのお陰でこうして風明さんと会うことができました」
そんな恥ずかしい台詞をさらっと言えてしまう仙蔵も凄いが、普通の女なら、頬を赤らめたりするところを笑顔で返す音根も凄いのだろう。
そんな音根の反応に苦笑いを浮かべる仙蔵だが、その隣では伊作が安堵していた。
「風明さんの世界でも、月は綺麗でしたか?」
「う~ん、あんまり夜空を眺めることなんてなかったけど、こんなに大きくて綺麗には見えなかったよ」
忍たまの世界は室町時代が舞台となっているのもあるが、忍者のたまごが通う学校ということもあり、周りはとても暗く星や月が綺麗に見える。
車などが無いため空気も澄んでいるのだが、この時代にないはずのものがあったりとするため、最初は音根も戸惑ったものだ。
何がなくて何があるのか、今でもわからないことは多々ある。
「風明さんは、今も元の世界に帰りたいと思いますか?」
「うん。私がいるべき世界はここじゃないと思うから」
音根の答えに、やっぱりと思う反面、二人は悲しげな表情を浮かべる。
だが、直ぐにいつもの表情に戻ると、三人一緒に夜空を見上げ綺麗だねと呟いた。
それから各々の部屋に戻った三人は瞼を閉じると、先程見上げた夜空を思い出しながら眠りにつく。
翌朝目が覚めると、音根は昨夜の伊作の言葉を思い出していた。
元の世界に戻りたいと思うのか。
音根は勿論頷いたが、皆と離れたくないという気持ちも確かにある。
この世界を知り、ここで暮らす皆のことを知り、元居た世界にはない物があることを知った。
「私は、どうしたいんだろう……」
音根が元の時代に帰る方法は、先生方が調べてくれているのだが、最初の頃は音根も自分で探せる範囲でできるだけ情報を掴もうとしていた。
結局見つからなかったわけだが、見つからなかったから探すのを諦めたのではない。
ここで暮らすうちに、ここでの生活が続くのもいいかもしれないと思ったのだ。
「何考えてるんだろ……」
布団を片付けると、顔を洗いに井戸へと向かう。
水を汲み、パシャパシャと丁寧に顔を洗うと、目が開けられないまま置いておいた手拭いに手を伸ばす。
だが、置いたはずの手拭いはなく、周りを手で触りながら探していると、ようやく手拭いを掴み顔を拭く。
「あれ?この手拭い」
「風明さんのは地面に落ちて汚れていたので、私のを差し出させてもらいました」
声がする方に視線を向けると、そこには仙蔵の姿があり、手には砂がついた音根の手拭いが握られている。
どうやら風で手拭いが地面に落ち汚れてしまったようだ。
「ありがとう仙蔵くん。でも、仙蔵くんも顔を洗いに来たんじゃ」
「はい」
「ごめんね、今新しい手拭いを持ってくるから」
自分のせいで仙蔵の手拭いを濡らしてしまったため、部屋にある新しい手拭いを取りに戻ろうとする音根だったが、その必要はありませんよ、という仙蔵の声に足を止めた。
すると仙蔵は水を汲み、顔を洗い出した。
もしかして、もう一枚手拭いを持っていたのだろうかと思い見ていると、仙蔵は瞼を閉じたまま音根に手を差し出す。
「私の手拭いをいただけるだろうか」
「え?う、うん」
すでに濡れてしまっている手拭いを渡すと、仙蔵はその手拭いで顔を拭く。
少ししか濡れてないとはいえ、一度音根が顔を拭いたというのに、仙蔵は何も気にしていない様子だ。
「ふぅ、さっぱりしましたね」
「そうだね。でも、その手拭い……」
「ああ、気にしないでください。私が貸したくてしたことですから。それでは、私はこれで失礼します」
丁寧に頭を下げ去っていく仙蔵の背を見つめ、音根が思ったことはただ一つ。
「私の手拭い……」
手拭いを返してもらうことをすっかり忘れており、音根の手拭いは仙蔵に持っていかれてしまった。
追いかけようとも思ったのだが、その時にはすでに仙蔵の姿はなく、あとから食堂で会ったら伝えようと、音根は自室に戻る。
そして朝食の時間となり食堂へ向かった音根だったが、そこに仙蔵の姿はまだないようだ。
キョロキョロと周りを確認するが、仙蔵の姿はない。
「誰か探していらっしゃるんですか?」
「あ、伊作くん」
仙蔵と同じ六年生の伊作なら何か知っているんじゃないかと尋ねると、伊作の表情が一瞬曇る。
だが、直ぐに何時もの伊作に戻ったため、気のせいだったのだろうかと、音根は気にしていなかった。
「仙蔵ならさっき廊下でスレ違ったので、もう少ししたら来ると思いますよ」
「そっか、ありがとう」
先に朝食を食べながら待ってようと考えていると、よければ一緒に朝食を食べませんかと伊作に誘われ、音根は頷くと伊作と向かい合わせになる形で座る。
入り口を気にしながら朝食を食べていると視線を感じ、前を向けば伊作と目が合う。
「どうかした?」
「いえ……。入り口を気にされてるみたいだったので」
「うん、仙蔵に用があるから、来たときに気づけるようにと思ってね」
音根の返事にまたも伊作の表情が曇り、やっぱりさっきのは気のせいじゃなかったんだと気づく。
先程から箸も止まっており、何か悩みでもあるんじゃないかと思い口を開く。
「伊作くん、どうかしたの?」
「え……?」
「何だか元気がないみたいだから。何か悩みがあるなら相談に乗るよ」
任せてと胸を叩くと、伊作は少し考えたあと何かを決めたらしく、音根に視線を向ける。
その目は真剣であり、どんな内容でもしっかり受け止めなければと音根の手に力が入る。
だが、伊作の口から出た言葉は、仙蔵にどんな用事ですかというものであり、失礼ではあるものの拍子抜けしてしまう。