知って知らずも苦しい心情
名前変更
名前変更お話にて使用する、夢主(主人公)のお名前をお書きくださいませ。
【デフォルト名】
風明 音根(ふうめい おとね)
■友達(親友)
陽子(ようこ)
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「何でお前がここにいやがる!!」
「偶然鍛練をしようと裏山に来ただけだ」
「ほぉ、偶然お前は裏山に来て、あの木の上にいたわけか?」
「ああ、そうだ」
「嘘つけ!!どうせ後でもつけてきたんだろうが!!」
普段から仲が良いとは言えない二人ではあるが、音根の前では何時も以上に殺気だっている。
このままでは鍛練どころではなく、今にでも戦いが始まりそうな勢いだ。
「二人ともストーップ!!文次郎、今日は鍛練をしに来たんだろ?それに留三郎も鍛練をしに来た。なら、皆で一緒に鍛練をすればいいだけの話だろ」
音根が提案すると、留三郎はニコやかに頷き、文次郎は不快そうに表情を歪める。
結局三人での鍛練となったわけだが、途中から二人の喧嘩が始まってしまい、どっらがあの岩の天辺まで登れるか勝負だと言い、すでに音根の存在を忘れ勝負を始めてしまう二人。
「おい、二人とも、まっ────!?」
二人を追いかけ崖のような岩を登っていく途中、音根は足を踏み外し、そのまま下へと落ちてしまった。
気づいた二人が慌てて岩から降りるが、音根は足首を怪我したらしく動けそうにない。
「このくらい大丈夫だから気にしな、っ――」
「バカタレ!!無理をするな」
「文次郎、俺は伊作を呼んでくる。その間、音根を頼んだぞ」
「言われなくてもわかっている」
音根を背負っていきたいところだが、下手に動かすわけにもいかず、留三郎が伊作を呼びに行く。
それからしばらくして留三郎が伊作を連れて戻って来ると、伊作は音根の足の手当てをし、忍術学園まで運んだ。
こんな事態になったことに伊作は内心怒っていたが、それよりも先に、音根を忍術学園に運ばなければと、二人を怒ることができないまま忍術学園に戻ると、音根を布団に寝かせた。
「しばらくは安静にしててね」
「うん。ありがとう、伊作」
一度、音根を部屋に残し、文次郎、留三郎と共に部屋を出ると、部屋から離れた場所で伊作は静かに怒りを露にした。
「文次郎、僕言ったよね。音根に無理をさせないようにって。それに、留三郎までいて音根に怪我をさせるなんて……」
「すまない……」
「悪かった、伊作」
「二人が謝る相手は僕じゃないでしょ。少し二人とも、頭を冷やしてきた方がいいよ」
それだけ言い残すと、伊作は二人に背を向けその場を去った。
「頭を冷やすのは、僕もだな……」
二人に聞こえない声で、伊作はポツリと言葉を漏らす。
音根が怪我をしたと聞いたとき、留三郎を怒鳴りつけてしまった自分。
それに、今も冷静でいようとしているのに、冷静になれない自分も頭を冷やすべきなのだろう。
伊作は戸の前で、自分を落ち着かせるように大きく深呼吸をすると、部屋へと入る。
布団では、寝息を立て眠る音根の姿があり、こんな自分を見られずにすんだことに少し安堵すると、音根の装束が土で汚れたままであることに気づく。
「今頃気づくなんて、どれだけ僕は冷静じゃなかったんだろ」
これじゃあ二人のことばかりも言えないなと思いながら、疲れているのかぐっすりと眠っている音根を起こさないように、体についた土だけでも落とそうと装束に手をかけ上を脱がそうとしたその時、体に巻かれている物に気づき手を止めた。
それは、音根が女であるという確信に繋がるものだ。
だが不思議と驚きはしなかった。
時々思わせる女の仕草。
文次郎や留三郎のような忍者でさえも惹き付けてしまう魅力。
それは、男にはないものであり、心のどこかで気づいていたんだ。
音根は、女であることに。
だが、女であることを隠しているのなら、これは見なかったことにしようと、装束を整える。
汚れたままにするのはどうかと思うが、女である音根の肌を見るわけにもいかない。
それに何より、もし着替えさせている最中に誰かが来るなんて事態になれば、音根が女であることを知られてしまう。
そんな状況にならないためには、今はこの選択しかないのだ。
そして、自分は何も見なかった事にし、忘れるしかない。
「んっ……伊作……」
「起きたんだね」
「うん。ごめんね、医務室借りちゃって」
「大丈夫だよ。それより、汚れた装束は着替えた方がいいから、部屋まで送っていくよ」
頷く音根に肩をかし、六年の中屋へと向かう。
部屋に着くと、何やら音根は落ち着きがなく、その理由に伊作は気づき立ち上がると、僕は保健当番だから戻るねと言い残し部屋をあとにした。
きっと、自分がいては女であることに気づかれてしまうため、着替えることができず困っていたのだろう。
そんなことを考えながら医務室に戻る途中で、文次郎と留三郎と会った。
どうやら反省した二人は、音根に謝ろうと医務室に戻ったらしいが、伊作も音根の姿もなかったため、部屋に戻ったのかもしれないと向かう途中だったようだ。
「悪いけど二人とも、今音根は部屋で休んでるから、もう少し時間を置いてから行ってもらえるかい?」
今二人が部屋に行けば、音根が着替えているところを見られてしまうかもしれないと思った伊作が機転を利かす。
二人が頷きその場を去ると、伊作は医務室に戻り小さな溜息を漏らす。
さっきあったことは忘れなければならないのに、音根が女であることを意識してしまう。
「僕も、いつの間に二人と同じ気持ちを抱いてたんだ……」
自分の気持ちに気づいても、この想いはさっきあったことと同じ様に、なかったことにしなければならない。
それは、とても辛く悲しいものなのかもしれないが、女であることを隠している音根のためになるのなら、その苦しみさえも心の奥底に封じよう。
《完》