湖の逢い引き 前編
名前変更
名前変更お話にて使用する、夢主(主人公)のお名前をお書きくださいませ。
【デフォルト名】
風明 音根(ふうめい おとね)
■友達(親友)
陽子(ようこ)
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「すみません。貴女があまりにも可愛らしい反応をされるのでつい」
「ッ……!!し、失礼します」
音根は立ち上がると、その場から逃げるように食堂へと戻った。
頬の熱を冷ますように、水で顔を洗うが、先程のことを思い出すとまた熱が上がってしまいそうだ。
きっと自分は利吉にからかわれたのだろうと思うが、それでも背中の温もりが消えることはなく、気にしないなんてできない。
「相手はプロの忍者なんだから、あんなことくらい何でもないことよ」
プロの忍者なら、時には任務で女性に近づき情報を聞き出すことだってある。
さっきのことはあまり意識せず忘れようと、食材の買い出しに出かけた。
「安くて沢山買っちゃったけど、ちょっと買いすぎたかな」
野菜を乗せた荷車を動かそうとするが、自分一人の力ではびくともしない。
忍術学園に戻って人を呼ぶにしても、ここからでは距離があるため悩んでいると、沢山買いましたねと、聞き覚えのある声が聞こえ振り返る。
「利吉さん?え、休まれていたはずでは」
「ええ。ですが、風明さんが出掛けていくのが見えたので後をついてきたんです」
何故、後なんてついてきたのだろうかと不思議に思うが、今はそんなことよりも、利吉に運ぶのを手伝ってもらえないか頼むと、利吉は嫌な顔一つせず、逆に笑みを浮かべ、勿論手伝わせていただきますよと言ってくれる。
利吉後からも借り、無事に忍術学園まで運ぶことはできたが、ゆっくり休んでもらうはずが手伝いまでさせてしまって、申し訳なさで一杯だ。
「ここで大丈夫ですか?」
「はい……」
荷車を置くと、様子が可笑しい音根に気づいた利吉が、どうかされましたかと尋ねてくる。
「手伝ってくださってありがとうございます。特別授業や任務でお疲れなのに、こんなことに手伝わせてしまって……」
「そんなことを気にされてたんですか?」
「そりゃ気にしますよ!」
真剣な音根の瞳に、利吉は何かを思い付いたかのように口を開いた。
「でしたら、今日のお礼として、この後僕に風明さんの時間をいただけませんか?」
「それは構いませんけど」
時間をほしいなんて、一体何をするつもりなのだろうかと首を傾げていると、じゃあ早速いきましょうかと、利吉は音根の手を握り歩き出す。
一体何処へ行くのか尋ねても、利吉は内緒ですと言い教えてはくれず、裏裏山まで来たところで、すでに空には一番星が輝いていた。
それからしばらく歩き、ようやく利吉の足が止まると、音根へと振り返り着きましたよと言う。
道が道だったために足元ばかり見ていた音根が、利吉の言葉で顔を上げると、そこには湖があった。
「うわあ!!綺麗……!!」
「この場所は、忍たまの良い子達から聞いた場所なんですが、夜に来るととても綺麗なので風明さんに見てもらいたかったんです」
湖には、月や星が映し出されており、夜のはずなのにこの場所だけは輝いて見える。
だが、もうすでにこんなに遅くなってしまったため、まだ見ていたいところだが早く忍術学園に戻らなければならない。
「まだ見ていたいところですが、そろそろ戻らなければ」
「その必要はありますんよ。そのために、事務員の小松田くんに見つからないように出てきたんですから」
ニコリと笑みを向けられ、そういえばと、ここへ来るときのことを思い出す。
いつもなら、出門表にサインをし正門から出て行くのだが、今日は利吉と共に小松田 秀作に見つからないように抜け出してきた。
利吉はいつも小松田から逃げるようにして忍術学園に出入りしているため、いつものことだと思っていたが、今回は少し違ったようだ。
「でも、もし誰かにいないことが見つかったら、心配させてしまいますし」
「それも心配ありませんよ。私の父には報告済みですので」
利吉の父親、つまりは伝蔵に伝えてあるということならと頷く。
二人湖の近くに座ると、視線は湖へと向けられ、穏やかな刻を過ごす。
ただ座り眺めているだけで、会話があるわけでもないのだが、心が落ち着くのが不思議だ。
「利吉さん、こんな素敵な場所に連れてきてくださってありがとうございます」
「気にしないでください。それに、お礼を言われることはしてませんから。ただ私が、貴女の時間を独り占めしたかっただけですから」
冗談なのか本気なのかわからない言葉に音根の頬は熱くなるが、月明かりだけのこの場所なら、色づいた頬に気づかれることはないだろう。
今が夜でよかったと思ったその時、突然伸ばされた手が頬に触れる。
音根の瞳には、真っ直ぐに自分を見つめる利吉の姿が映り、鼓動が高鳴る。
「利吉、さん……?」
利吉の行動の意味が理解できない音根は、ポツリと利吉の名を口にする。
するとその瞬間二人の距離が縮まり、唇に柔らかなものが触れるとそっと離れた。
何が起きたのかわからない音根の耳には、ただ一言、すみませんという利吉の声が聞こえた。
それから二人は一言も言葉を交わすことはなく、忍術学園にある音根の部屋まで送ったあと、利吉は何も言わずその場から去ってしまう。
音根は部屋に入ると、布団を敷き横になる。
まだ感触の残る唇に指で触れると、音根の顔は熱くなり、頭まで布団をかぶり眠ろうとする。
顔も唇も熱く、先程の事が脳裏で思い出される度に振り払う。
利吉が何故あんなことをしたのかわからず、音根は一人あの行動の意味を考えながら瞼をぐっと閉じた。
《完》