違うようで似ている二人
名前変更
名前変更お話にて使用する、夢主(主人公)のお名前をお書きくださいませ。
【デフォルト名】
風明 音根(ふうめい おとね)
■友達(親友)
陽子(ようこ)
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「俺、気づかなかった。音根の気持ちに」
「い、いいの!逆に何か冷たくして、誤解させるようなことしてごめんね」
「お前が、まさか俺の豆腐を美味しいって思ってくれたなんてな」
「へ?」
思いもしない言葉に話を聞いていると、どうやら八左ヱ門の勘違いが兵助にそのまま伝わったらしく、兵助のことが好きと言ったのは、友情的な何かで伝えられたらしい。
そして兵助は、自分の豆腐を本当は美味しいと音根が思っていたことに感激しており、今はこのまま誤解させておこうとその話に乗る。
こんな形で想いは伝えたくなかったためこれでよかったのかもしれないが、兵助の中で音根は友人として認識されてしまっただろう。
小さく溜息を吐くと、兵助が突然音根に謝罪をしたためなんのことか尋ねてみると、どうやら八左ヱ門から間接キスの話も聞いたらしく、配慮が足りなかったと謝ってくれた。
「何か音根といるとさ、女って感じがしなくてつい気がつかずにしてたけど、これからは気を付けるよ」
「ぐッ……!!」
「どうかした?」
「う、ううん、何でもない。ははは」
女とすら見られていなかった事実に、胸に鋭い矢が刺さり、音根は乾いた笑みを浮かべ気にしないでと言う。
知りたくなかった事実を知り、呆然とする音根の目の前に豆腐が差し出され顔を上げると、もう一度食べるかと聞かれ、単純にも喜んでしまう。
勿論、嬉しいなんて顔には出さず、仕方ないから食べてあげるわよと言い受け取ると、豆腐を一口パクリと食べる。
その様子をじっと見つめる兵助の瞳はキラキラと輝いており、期待の眼差しを向けられていることに気づいた音根は、美味しいわよと顔を逸らしながら初めて兵助の豆腐が美味しいと認めた。
嬉しそうにニヤける兵助の視線を感じながら豆腐を食べ終わると、何時からなのか八左ヱ門の姿がないことに気づく。
一言文句でも言ってやりたいと思っていたが、きっとこんな切っ掛けでもなければ、自分の気持ちを伝えることはできなかっただろうと考えると、逆に八左ヱ門には感謝しなければいけないのかもしれない。
「御馳走様、って、兵助ニヤけ過ぎ。そんなに豆腐を美味しいって言ったのが嬉しかったの?」
「それもなんだけど。なんか、俺と一緒の物を音根にも好きになってもらいたかったからさ」
「別に豆腐が嫌いな訳じゃないわよ」
「うん、そうなんだけどさ。やっぱ、好きな子に喜んでもらえるのって嬉しいから」
ニコニコと笑みを浮かべながらさらっと言われた言葉に、音根の頬は熱くなる。
好きな子という言葉に深い意味はないと知っていても、好きな相手にそんなことを言われれば、勘違いしてしまいそうになる。
「兵助、そういうことは簡単に言わない方がいいわよ」
「そういうことって?」
「だから、その……好きな子、って……」
兵助の顔が見れず視線を少し逸らしながら言うが、どうやら音根の言葉の意味が兵助には伝わっていないようだ。
成績もよく、六年生のいない火薬委員会の委員長代理を、五年生でありながらこなしているほどだというのに、こういうことには少し鈍いようだ。
「だ、だから……。好きな子、なんて言ったら勘違いさせちゃうかもしれないでしょ」
「勘違いって、好きな子に好きな子って言ったら変かな?」
「だ~か~ら~!!もう知らない!!」
プイッと怒ると、音根は食堂を後にした。
そして一人残った兵助はというと、何故音根が怒ったのかを考えていた。
「兵助、お前も音根と似てるよな」
声がし視線を向ければ、そこにはいつの間にか消えていた八左ヱ門の姿がある。
音根と自分が似ているという言葉の意味がわからず尋ねると、八左ヱ門はただ一言、足りないんだよなぁと言い去ってしまう。
「足りない……」
八左ヱ門の言葉の意味を考えるが、どうやらわかりそうにない。
素直に自分の気持ちを言葉にできない音根。
そして、自分の気持ちを素直に言葉にしても、肝心な気持ちが伝えきれていない兵助。
二人とも気持ちは同じなのに、言葉が足らず上手くいかない。
そんな二人の気持ちが通じ合う日は果たしてくるのか。
それはまだ誰にもわからない。
そしてその翌日、食堂に呼ばれ来てみれば、音根の目の前には何故か沢山の豆腐料理が並べられていた。
兵助は八左ヱ門の足らないという言葉を豆腐の量だと思ったらしく、自分の好きな豆腐の量で自分の気持ちを表したようだ。
「そういうことじゃないんだよな……」
こっそり様子を覗いていた八左ヱ門は苦笑いを浮かべながら呟く。
そんな八左ヱ門の視線の先では、昨日より更に怒った音根が食堂を出ていってしまう。
この様子では、まだまだ二人の関係が進展するには時間がかかりそうだ。
八左ヱ門が二人の気持ちをお互いに伝えれば解決する話ではあるが、八左ヱ門が手助けできるのはここまでだ。
勿論音根は、八左ヱ門が自分の兵助への気持ちを知っているなど知りもしない。
この先この恋がどうなるか見守りつつ、ちょっとの手助けをすることになる八左ヱ門は、二人の被害者となりそうだ。
《完》