いつものオチ
名前変更
名前変更お話にて使用する、夢主(主人公)のお名前をお書きくださいませ。
【デフォルト名】
風明 音根(ふうめい おとね)
■友達(親友)
陽子(ようこ)
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そして翌日、音根が屋上に上がっていくのを見た滝夜叉丸と喜八郎は、きっと告白の返事をしに行ったのだろうと思った。
断ると知っている自分達には全く不安はないため、教室に戻ると普段通りを装う。
それから授業も終わり下校時刻。
いつもの六人が集まり帰路を歩く中、音根が口を開いた。
それは、はやり滝夜叉丸と喜八郎が思っていた通り告白の話であり、他の三人は今日告白の返事をしたことを知らないため、上手く伝えられたのか尋ねる。
「うん、ちゃんと伝えたよ。私には、まだ恋とか愛とかわからないから、ごめんなさいって」
どうやらその言葉で男は身を引いたようだが、このとき五人は同じことを思っていた。
その男は、音根の言葉は自分を傷つけない為に言った言葉だと思ったか、あるいは、それまでの気持ちだったのだろうと。
自分達は高校生であり、周りにも恋人がいる者など何組もいる。
そんな中、恋や愛がわからないなどという音根の言葉は、普通の高校生男子からすれば、傷つけないように断られたととるだろう。
だが、ここにいる五人は知っている。
音根が、それを本心から言っていることを。
何故なら、五人がどれだけ告白に近い言葉を言おうとも、音根はそれに気づかないほど鈍いのだ。
今回の告白は、きっと男がストレートに好きです付き合ってくださいとでも言ったのだろう。
「きっと音根ちゃんにはもっと素敵な人が現れて、その時には恋や愛のこともわかってるようになるよ」
「うん。運命の王子様ってのだよね。きっと会ったら恋に一瞬で落ちるんだろうなぁ」
その王子様の座を狙っているのは、音根の周りにいる五人なのだが、今回音根が告白をされたことにより、五人の心に変化が現れていた。
最後に自分を好きになってくれたらと思っていたが、またいつ音根に告白する者が現れるとも限らない今、五人の本気モードスイッチが入ってしまう。
そんなことなど知るよしもない音根は、悩んでいたことがすっかり解決し、笑みを浮かべている。
そしてそんな翌日のことだ。
音根のスマホに連絡があった。
それは、久しぶりに皆でお泊まり会でもしないかというものだった。
今日は土曜日で明日は日曜日、六人とも用事がないことから、言い出しっぺの滝夜叉丸の家に皆が集まる。
「滝夜叉丸の家って久しぶりに来たかも」
「僕は初めて来たけど、独り暮らしなの?」
「はい!ちなみに音根も喜八郎も守一郎も、ついでに三木ヱ門も独り暮らしなんですよ」
「何で私だけついでなんだ!!」
そうなんだとタカ丸は頷いているが、タカ丸から発せられた言葉でその場にいたタカ丸と音根以外の皆が固まった。
まさか聞き間違いだろうと思った滝夜叉丸が尋ねると、タカ丸いつものふにゃりとした笑みで言う。
「うん。僕、前に音根ちゃんの家に行ったことがあるから、音根ちゃんが独り暮らしなのは知ってたんだよね」
やはり聞き間違いではなかったのだと知り、一気に皆は差をつけられた気がし落ち込んでしまう。
タカ丸以外まだ、音根の家に行った者はおらず、まさかお泊まり会で好感度を上げ恋を意識させようと考えていた皆にとっては、最初から大きな差ができてしまった。
滝夜叉丸は音根以外の皆に、このお泊まり会で勝負だと宣戦布告していたのだ。
恋に先輩後輩は関係ないため、タカ丸にも勿論伝えてあったわけであり、タカ丸は業と差を皆に知らしめたのだ。
だが、ただ家に行ったことがあっても、音根の様子からして何か意識した行為ではないとわかるため、まだまだ皆諦めてはいない。
「タカ丸先輩って、以外に侮れませんね」
「はは、そりゃあ僕も負けたくないからね」
「一番油断ない相手かもしれないな」
集まって早々に火花が散るお泊まり会、そんな中音根はというと、久しぶりのお泊まり会に胸踊らせていた。
皆リビングに集まったところで、先ずはテーブルの上に各自持ち寄ったお菓子やジュースを置く。
グラスにジュースを注ぐと、皆でカンパーイと言い一気にお祭りモード。
だが、そんなお祭りモードで終わるはずもなく、いつの間にか音根の隣にタカ丸が座っている。
「音根ちゃん」
「何ですか、タカ丸先輩?」
「こっちのジュース飲んでみる?さっき買ってみた新商品なんだけど美味しいよ」
そう言い差し出したのは、今までタカ丸が飲んでいたグラスだ。
音根は気にすることなく、いただきますと受け取ろうとしたその時、横から伸ばされた手がグラスをタカ丸から奪い取り、ごくごくと飲み干してしまう。
「酷いよ守一郎くん!」
「俺はタカ丸先輩の思惑を阻止しただけです」
そんな二人の会話を見ながら音根が思っていたのは、守一郎もあのジュースが飲みたかったのかなという何とも呑気な考えだった。
そのあとも、誰かが何かを仕掛けては別の誰かが邪魔をしの繰り返しで、すでに当初の目的など皆忘れているようだ。
「何故皆私の邪魔をするんだ!!」
「それは私の台詞だ!!」
「そもそも皆が皆の邪魔してるよねぇ」
「というか、さっきから音根が静かな気がするんだけど」
守一郎の言葉で、確かにと思った四人が音根に視線を向けてみると、いつの間にか音根の隣にいる喜八郎に音根が寄りかかり寝息をたてていた。
その光景に、皆が何かを言おうとするが、喜八郎は自分の口に人差し指を当てる。
「静かにしないと音根が起きちゃいますよ」
当初の目的である本人が眠ってはどうすることもできず、皆が肩を落とす中、喜八郎だけは嬉しそうだ。
だが、このままでは風邪を引くといけないため、喜八郎は音根をソファに寝かすと、毛布を掛ける。
「結局今回もこういうオチというわけか」
「いいんじゃない、僕たちらしくて」
「タカ丸さん、それは余裕のあらわれですか?」
静かな男だけでのお泊まり会、それは、去年と同じだった。
あのときも、音根が眠ってしまったため、そのあとは男だけで静かに会話をして終わった。
「音根ちゃん、何時も夜の9時には寝るらしいよ」
「今寝たのも確か9時でしたからピッタリですね」
「てか、今年は喜八郎だったか」
「今年は俺であってほしかったのに」
中学から続くお泊まり会の楽しみは、音根が誰に寄りかかり眠るかであり、この調子では、まだまだ恋は難しそうだ。
《完》