捕まらないあなた 後編
名前変更
名前変更お話にて使用する、夢主(主人公)のお名前をお書きくださいませ。
【デフォルト名】
風明 音根(ふうめい おとね)
■友達(親友)
陽子(ようこ)
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「何か言った?」
「ううん、何でもない。う~ん、やっぱり兵助が作る豆腐は最高ね!」
美味しそうに豆腐を食べる音根をつい口許を緩ませ見つめていると、目が合いそうになりバッと逸らす。
もしかしたら、変に思われていないだろうかと思っていると、音根の声が聞こえ視線を向ける。
「そ、そういえば二人は何してたの?」
突然の質問に、いい言葉が思い浮かばず三郎に視線を向けるが、三郎も苦笑いを浮かべている。
どうしたものかと考えていると、突然音根は立ち上がり、そろそろ失礼するねとだけ言い残し、返事も聞かずにその場を去ってしまった。
「なんかわからないけど、バレずにすんだみたいだ」
「でもさ、何時までこれ続けるつもりなの?」
「そうなんだよな。でも、今はやっぱりまだ難しいからさ、もう少し音根と話せる時間が欲しいんだ」
勘右衛門が兵助の変装をときながら言った言葉に、三郎はニヤリといたずらっ子のような笑みを浮かべると、なら女装なんてどうだろうかと言い出した。
勿論今までに、女装をすることは忍たまなら何度かあったものの、正直苦手だ。
だが、三郎の言う通り女装をすれば、音根との時間や男では聞けない会話をできるかもしれない。
「まぁ、毎回私が変装を施す訳にもいかないからね。男と違って女の変装は時間がかかるから、こればかりは勘右衛門が自分で出来るようにならないとね」
先ずは私がお手本を見せてあげるよといい、サッと変装をした三郎の姿に、勘右衛門は目を見開いた。
何故なら、着物は三郎のままだが、顔は音根に変装していたからだ。
「な、ななななんで音根になってるんだよ!?」
「え?面白いから?」
「お前なぁ……」
そもそもそんな一瞬のうちに変装されては、どうすればいいのかなどわかるはずもない。
女の化粧がわからず困っているというのに、確実に三朗は遊んでいる。
その証拠に、音根の声を真似しながら、勘右衛門の腕にしがみついてきている。
「勘右衛門、私のこと、好き?」
上目遣いで言われたその言葉の破壊力は凄まじく、緩みそうになる口許を片手で押さえ三郎を引き離そうとする。
いくら顔が音根でも、体つきや着ているものは男であり、音根の身長はもっと低い。
「いい加減にしないと怒るぞ」
「ああ、なるほど。よっと、これでどうかな?」
一瞬にして女の着物に変わると、勘右衛門は更に顔が熱くなる。
そんな勘右衛門が面白くて、三郎が前から抱き締めた時だった。
自分の鼓動の音や内心騒がしかったこともあり、その人物が近づいてきていたことに気づいていなかったのだ。
「勘右衛門ッ!!」
戸が勢いよく開かれると、そこには音根姿があった。
驚いたような表情を浮かべ顔を伏せる音根を見て、今自分がどういう状況だったのかを思い出す。
三郎も慌てて勘右衛門から離れ、兎に角何から話せばいいのかわからず、先ずは誤解を解かなくてはと口を開く。
「っ音根、これは、ッ!!」
顔を伏せたままずかずかと近づいてきた音根の手が振り上げられると、自分の左頬に衝撃を感じると、痺れたような痛みが頬に残る。
「ッ、最低だよ……」
そう言った音根の目からは涙が溢れ出し、頬を伝い床にいくつも落ちていく。
そんな音根の姿に、勘右衛門の胸は締め付けられるように痛み、何か言わなければいけないのに、伝えたいことは山ほどあるのに声がでない。
部屋から走り去っていく音根を追いかけることさえできず、ただ呆然と立ち尽くすしかなかった。
そのあと自分がどうしていたのかは覚えておらず、気づけば昼刻となっていた。
自分のせいでもあるからと、三郎はずっと部屋にいてくれており、勘右衛門は三郎と食堂へ向かう。
音根がいるんじゃないかと顔が上げられずにいると、三郎がいないことを教えてくれ、二人座ってお昼を食べる。
「ちょっと話があるんだけど」
そう声をかけてきたのは兵助だった。
三郎が兵助に事情を説明すると、やっぱりねと納得する。
どうやら音根から相談を受けたらしく、勘右衛門に他の女がいたというのが引っ掛かっていたようだ。
「兎に角食べ終わったら、三郎も一緒に俺らの部屋に来て。音根も呼んであるから」
兵助の言葉に三郎は頷き、三人朝食を済ませると五年の長屋へ戻る。
部屋にはまだ音根の姿はなく、食堂にいなかったのを見ると、これから朝食を済ませてくるのだろう。
重い沈黙の中、口を開いたのは兵助だった。
「俺も協力してた訳だから、二人のことをどうこう言う資格はないけど。三郎もやり過ぎたことくらいわかるよね?」
「うん」
「勘右衛門も、接し方がわからなくなったって気持ちはわからなくはないけど、このまま続けても、こういう結果にしかならないことはもうわかってるよね?」
勘右衛門は頷くと、自分がしてきてことを反省し、音根にあんな顔をさせてしまった自分への怒りで、膝に乗せていた拳に力が込められる。
静寂の部屋の中、廊下から足音が近づいてくると、この部屋の前で止まり声がかけられた。
その声に兵助が答えると入ってきたのは、やはり音根だ。
「今説明するから、取り敢えず音根も座って」
兵助に言われるまま音根が床に座ると、兵助は勘右衛門と三郎と視線を合わせ、三人同時に頭を下げ謝った。
「実は、さっき勘右衛門に抱きついてたのは私なんだ。本当にごめん!!」
話が全く理解できないといた様子の音根に、勘右衛門は意を決し、音根を真っ直ぐに見据え口を開く。
そして全てを話した。
二人が恋仲になったあの日からのことや、三郎や兵助にも協力をしてもらっていたこと、最初から全てを隠さず伝える。
「話はわかったけど、さっきの女性が三郎だとして、何であんなことになってたの?」
「いや、それがさあ」
兵助に変装をするのはいいものの、男と女では話をするのはほんの少しの時間だ。
それなら、女装をすれば話せる時間も増えるんじゃないかという話になったこと、そしてふざけて三郎が音根に変装して抱きついていたことを話す。
全てを話終え、一体どんな返事が返ってくるのかと、不安であった勘右衛門だったが、聞こえた言葉はもういいよというものだった。
怒っているわけでもなく、何故か安堵したような声音に三人はそっと下げていた頭を上げる。
「勿論、三人して私を騙してたことは今でも怒ってる。でも、話を聞いたらなんか安心しちゃった」
そう言いながら、柔らかな笑みを浮かべる音根を、勘右衛門は気づいた時には抱き締めていた。
あれだけ傷つけて、嫌われても可笑しくないというのに、音根が自分に向けてくれている想いに変わりはないのだと知り、もうこんなこと絶対にしないからと誓う。
恋仲になって初めて抱き締めた音根の体はとても暖かく、音根も勘右衛門に応えるようにそっと抱き締め返す。
そんな二人の姿に、兵助と三郎も暖かな視線を送り笑みを浮かべた。
《完》