捕まらないあなた 前編
名前変更
名前変更お話にて使用する、夢主(主人公)のお名前をお書きくださいませ。
【デフォルト名】
風明 音根(ふうめい おとね)
■友達(親友)
陽子(ようこ)
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「胸に手を当てて何してるんですか?そんなことしたって胸の大きさは変わりませんよ?」
「あ~や~べ~ッ!!あんた、また痛い目にあいたいみたいねぇ?」
懐に手を入れ、今にも苦無いを投げそうな勢いの音根だったが、その手は喜八郎の一言により止まる。
すると、音根は突然走り出し、五年の長屋へと向かう。
喜八郎から聞いた言葉は、今さっき勘右衛門が自室に入っていくのを見たというものだった。
今度こそ勘右衛門に会えることを期待しながら、全速力で五年の長屋へ向かうと、一気に部屋の戸を開ける。
「勘右衛門ッ!!」
だが、そこにいたのは兵助と雷蔵、もしくは雷蔵に変装した三郎の姿があり、肝心の勘右衛門の姿はない。
「音根、どうしたの?」
「うん。今綾部に、勘右衛門が部屋に入るのを見たって聞いて来たんだけど」
どうやら音根と呼ぶこの人物は三郎らしく、音根は三郎の質問に答えながら部屋をキョロキョロとするが、誰かがいる様子はない。
何時ものように、音根の気配に気づいた勘右衛門は逃げ出したのだろう。
「もう!!何でいないのよ!!」
「元気出しなよ。よかったら豆腐食べる?」
「う、うん。ありがとう」
兵助から豆腐が乗せられた皿を受け取ろうとすると、音根の指先が兵助の手に触れ心臓が跳ね上がる。
食堂で感じたときと同じ高鳴りに、もしかしたら、自分は兵助のことが好きなんじゃないかと考えてしまう。
だが、そんなことあるはずないと考えを振り払う。
「私が好きなのは、勘右衛門、なんだから……」
「何か言った?」
「ううん、何でもない。う~ん、やっぱり兵助が作る豆腐は最高ね!」
受け取った豆腐を食べ考えを振り払うが、どんなに振り払っても兵助に視線を向けてしまう。
目が合いそうになるとバッと逸らすが、変に思われていないだろうかと心配だ。
「そ、そういえば二人は何してたの?」
何か話して気をまぎらわせようとしたのだが、何故か二人は黙ってしまい、何か聞いちゃいけないことだったのだろうかと思い、音根は立ち上がると、そろそろ失礼するねとだけ言い残しその場を後にした。
きっと男同士の話だってあるに違いない。
そんな話に、いくら忍たまとはいえ女の自分が聞いていい話ではない。
それよりも、今はどうすれば勘右衛門と会えるかが重要だ。
今まで通りが上手くいかないなら、方法を変えるしかないわけだが。
先ず、音根が部屋に行く前にはいた勘右衛門が姿を消した理由は、音根の気配に気づいたからに違いない。
それなら、音根が気配を消し近づくのが確実だ。
「よし!これでいこ、っわあ!?」
突然崩れた地面、そしてここは、考えながら歩いていたせいでいつの間にか行き着いてしまった校庭。
そこから導き出される答えなど一つしか存在しない。
「綾部 喜八郎ッ!!さっさと私をここから出せ!!」
「おやまあ。また音根先輩ですか」
「どうせまたですよ。いいからさっさと縄梯子を下ろしなさい!!」
はーいというなんとも気の抜けた返事が帰ってくると、音根は下ろされた縄梯子で地上に上がる。
一体穴に落ちるのは何度目か、考えるのも嫌になってくる。
「おや?今日は怒らないんですか?」
「ええ。さっき勘右衛門の情報を教えてくれたからね」
「で、会えたんですか?」
「会えたように見える?」
不機嫌な表情の音根を見れば、会えなかったことなど一目瞭然だ。
喜八郎は、残念でしたねというが、その言葉に感情のかの字も込められていないことなど直ぐにわかる。
「はぁ、何で勘右衛門、私を避けるんだろ……」
「もしかして、他にいい人が出来たりして?」
「ッ……適当なこと言わないでよね!!」
音根は怒りながらその場を離れるが、喜八郎の言葉が音根を不安にさせる。
勘右衛門の恋仲は自分であり、他に女などいるはずがないのだと言い聞かせる。
「あれ……?私、勘右衛門と本当に、恋仲、なのかな……」
恋仲になってから一度も一緒に出掛けたこともなければ会ってすらいない。
そんな関係を恋仲と呼べるのかと、音根の不安は更に膨らみ、気づけば駆け出していた。
この不安を早くなくしたくて、勘右衛門を必死に探す。
何時もなら、見つからなかったら今日もかと諦めてしまうが、今は、諦めたくはない。
「音根」
「あ、トモミちゃん」
呼び止められ足を止めると、そこにはくの一教室のトモミの姿があった。
音根は忍たまではあるものの女のため、くの一の子達とは仲良くしている。
だが、今は話しているような時間はなく、先を急がなくてはいけない。
「ごめんねトモミちゃん、今私急いでてて」
「あ、直ぐにすみますから。その、先輩の耳には入れた方がいいかなと思って」
言いにくそうにトモミが口にした言葉は、一瞬にして音根の思考を停止させた。
そして、また音根は走り出した。
背に自分の名を呼ぶトモミの声が掛けられていたのだが、そんなことにも気づかず、気づけば音根は夢中で走り五年の長屋に来ていた。
目的の部屋の前まで来ると、中から勘右衛門の声が聞こえる。
「勘右衛門ッ!!」
戸を開ければ、そこにはずっと探していた勘右衛門の姿があった。
だが、そこに居たのは勘右衛門だけでなく知らない女の姿もある。
それも、女は勘右衛門に抱き着いており、トモミのいっていた言葉は本当だったのだと知った。
音根は顔を伏せ、ずかずとか部屋の中に入っていく。
「っ音根、これは、ッ!!」
怒りや悲しみ、色々な感情が混ざり合い、音根は勘右衛門の頬をひっぱたく。
パシンというあまりにも綺麗な音が部屋に響く。
「ッ、最低だよ……」
伏せていた顔を上げ勘右衛門を見るが、音根の視界は涙で霞むどころか全く見えない。
溢れだす涙は床を濡らし、音根はその場から走り去った。
遠くに逃げたくてしかたないのに、忍たまである音根が行ける範囲など限られている。
「ッ!?」
走っていると地面は崩れ音根は落下する。
この穴は間違いなく喜八郎のものであり、ひょっこり覗いた喜八郎に顔を見られないように下を向く。
すると、カラカラという音と共に縄梯子が上から降りてくる。
「上がってこないんですかあ?」
何時もの飄々とした言葉に返事はなく、音根が上がる代わりに喜八郎が穴の中に降りてくる。
「上がりますよ」
「イヤッ!!ほおっておいてよ」
嫌がる音根を喜八郎はひょいッと持ち上げると、そのまま地上へと運ぶ。
やはり男だけあり力はあるらしく、暴れる音根を簡単に穴の中から出してしまう。