その協力は誰の為
名前変更
名前変更お話にて使用する、夢主(主人公)のお名前をお書きくださいませ。
【デフォルト名】
風明 音根(ふうめい おとね)
■友達(親友)
陽子(ようこ)
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「ふ~ん、なるぼどねぇ。なら、その想い人ってのを今から見つけたらいいんじゃない?」
「は?」
「よし!そうと決まれば善は急げだよね。しゅっぱーつ」
「え?ちょ、ちょっと!?」
突然腕を掴まれると、音根は有無を言わさず連れていかれ、そして何故かこっそりと茂みの中に隠れさせられる。
二人茂みの中に隠れ、一体何をするのかと隣を見れば、あの人なんてどう、と指を指す。
「あの装束の色って、あなたと同じ五年生よね?」
「そう。元髪結いでくの一からはかなりの人気がある斉藤 タカ丸さん」
「ああ!あのくの一に人気の。で、あの人がどうかしたんですか?」
くのたま達の噂で、元髪結いということと名前だけは知っているものの、実際に目にするのは初めてだ。
やはり元髪結いというだけあり、他の忍たま達とは差のある髪型をしている。
「どうかしたって、キミの想い人探しをしてるんでしょ」
「え!?初耳だけど!?」
「ほらほらいいから、一回話してみようよ」
またも無理矢理引きずられるように引っ張っていかれると、その忍たまはタカ丸に声をかけた。
「やあ、どうしたの綾部くん?」
「ちょっとこのくのたまの子がタカ丸さんに用があるみたいで」
「え!?」
この忍たまを綾部と呼んでいたため、綾部というのかと思っていると、突然綾部がとんでもないことを言い出した。
タカ丸の視線が音根へと向けられ、名前を訪ねられたため自己紹介をする。
「音根ちゃんって言うんだね。その音根ちゃんが僕に用って何かな?」
「あ、えっと……」
助けを求めるように横にいる綾部見るが、綾部は変わらない表情で視線を逸らしている。
誰のせいでこんなことになっていると思っているのかと怒りが込み上げて来る音根に、わかった、という声が聞こえ視線を前に戻す。
「もしかして、僕に髪結いをしてほしいんじゃないかな?」
「え?……あ、は、はい!そうなんです」
何とかその場を乗り切りタカ丸が去っていくと、音根はキッと綾部を睨み付ける。
だが、綾部はそんな音根に気づかず、視線は上を向いている。
「おやまあ、珍しい。タカ丸さんが普通の髪型にするなんて」
「ちょっと綾部くん!!一体どういうつもりなのよ!?」
「それじゃあ、次に行きましょうか」
「ちょっ!?だから人の話を聞けーッ!!」
そして他数名の五年生の元に連れていかれたあと、最後に向かった人物は、どうやら綾部があまり乗り気でない人物らしい。
自分は関わりたくないからと、音根を中庭に立たせ、今から通りかかる五年生に声をかけるように伝えると、綾部は茂みの中に隠れてしまう。
「はぁ、何で私がこんなことを……」
楽しんでいるのか協力してくれているのか、綾部の表情からは読み取れないが、これが最後ならと付き合う決心をし、目的の五年生が来るのを待つ。
どうやらその人物は、決まってこの時間にここに来ては戦輪の腕前を自慢する人物らしい。
ちなみに戦輪とは、投擲武器の一種であり、 外側に刃の付いた金属製の投げ輪となっている。
これを指に引っかけ飛ばすのだが、切れ味は抜群だ。
そんなことを考えていると、紫の装束が見え、あれが綾部が言っていた五年生に違いないと思い声をかけようとしたとき、逆に音根は声をかけられてしまっていた。
「私の練習場所にいるなんて、もしかしてキミは私の戦輪を見に来たのかい?」
「え?あ」
「何も言わなくてもいい、私には全てわかっているからな!ならば、私の戦輪の腕前を思う存分見せてあげようではないか」
「いや、あの」
こうして音根は、この忍たまの戦輪の技、そして自慢話を嫌というほど聞かされ、すでに空は暗くなり始めていた。
「おっと、もうこんな時刻か。また私の戦輪技を見たくなったらいつでも来るといい」
そう言いはその忍たまが去っていった時には、音根は疲れきりげんなりしていた。
そして、気づけばこんな時刻。
想い人どころか色の実習の相手を見つけることすら今からでは難しい。
「これというのも全てはあなたの~!!って、いないし」
隠れていたはずの茂みには、すでに綾部の姿はなく、その後、音根に色の実習の相手が見つかることはないまま、不合格となったのはいうまでもない。
それから翌日、綾部が何時ものように穴を掘っていると、上から声が聞こえ綾部は穴から地上に出る。
するとそこには、昨日音根と会わせた五年生達の姿がある。
「綾部くん、昨日はあんな感じでよかったの?」
「私の戦輪を最後まで見てくれていたぞ。まぁ、当然だがな!」
「戦輪の話はどうでもいいです。でもまぁ、無事彼女は不合格になったみたいなので」
想いを寄せていたのはどうやら綾部の方だったようだ。
穴を掘っていたら偶然見かけた想い人。
一人百面相をしている音根をこっそり見て笑みを浮かべる。
ひょっこり穴から出て気づかないふりをしていれば、知らないくのたまに声をかけられ話を知った。
そして考えたのは、絶対に音根の初めてを誰にも取られない方法だ。
そのために、頼みたくもない五年生、とくに戦輪が得意である平 滝夜叉丸にまで頼み協力してもらった。
「まぁ、あの後も心配で夜まで見張ってたんだけど」
「それは駄目だろ……」
嬉しそうに笑みを浮かべる綾部は穴の中に戻ると、再び穴堀を始めた。
その少しあとに、桃色の装束を来た想い人が来ることも知らずに。
《完》