その協力は誰の為
名前変更
名前変更お話にて使用する、夢主(主人公)のお名前をお書きくださいませ。
【デフォルト名】
風明 音根(ふうめい おとね)
■友達(親友)
陽子(ようこ)
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くのたまには色の実習というものがある。
元々くの一は、男と行為をしている最中に暗殺をするなんてことをすることもあり、色の実習は避けては通れない道であった。
そんな色の実習を音根も初めてすることになったわけだが、相手に困っていた。
他のくのたまは、仲の良い忍たまや想いを寄せている忍たまの元へ行くらしいが、音根には忍たまで仲の良い人もいなければ想いを寄せる相手すらいない。
「どうしよう……」
そんなことを考えていると校庭まで来てしまい、ここで一番最初に目に留まった忍たまに決めようかと考えた。
だが、いくら実習とはいえ、初めては想いを寄せた相手としたい。
そんなことを一人考えていると、何やら声が聞こえ視線を向ける。
すると、穴の中からひょっこりと一人の忍たまが顔を出す。
「あの装束の色、五年生よね」
何時からいたのか穴から出てきたその忍たまに、一人のくのたまが駆け寄っていく。
そのくのたまは、音根と同じで今日色の実習をする者であり、どうやらあの忍たまに決めたようだ。
だが、何故かそのくのたまは少しその忍たまと話したあと、怒って去っていてしまった。
「あの忍たま、一体何を話したんだろう?」
色の実習にはルールがあり、相手に色の実習だと気づかれてはいけないというものだ。
実際の任務でも色だと気づかれてしまったら意味がないため、その辺は実習でも本番と同じようにするようだ。
だが、それが問題となる。
仲の良い忍たまがいたとしても、色の実習だと話せなければ、自分の力でそういった行為に持ち込むしかない。
「私には無理だよ……」
「何が無理なの?」
「ひあッ!?」
突然顔を覗き込まれ、音根はビックリして声を上げてしまう。
よく見ると、さっき穴からでてきた忍たまの姿が目の前にある。
「酷いな~、まるでおばけでも見たような驚き方だよね」
「ごめんなさい。突然覗き込まれたので驚いてしまって。それで、あの、何か?」
「うん、なんかさっきから百面相してたから気になっちゃって」
見られていたんだと恥ずかしく思っていると、その人は、また表情が変わったと言う。
そんなにコロコロ表情を変えているだろうかと考えるが、頭に浮かぶのは、悩んだり驚いたり恥ずかしがったりしている自分ばかりの姿で納得してしまう。
「ただ顔に出やすいだけなので気にしないでください。それでは」
そういい去ろうとしたとき、ちょっと待ってよという声に引き留められ振り返る。
するとその忍たまは、先程音根が漏らした言葉の続きを聞いてきた。
だが、色の実習で困っているなど恥ずかしくて話せるはずもない上に、もし話したりして、さっきのようにこの目の前の忍たまと実習を考えているくのたまがいた場合、自分が今ここで話してしまったら、そのくのたまはこの忍たまに色の実習だと気づかれてしまうだろう。
何かいい言い訳はないかと考えていると、その忍たまの口から驚きの言葉が紡がれた。
「もしかして、キミも色の実習だったりして」
「っ、な、何故それを知って!?」
「ああ、それはね。さっき僕のところに来たくのたまの子が言ってたからだよ」
まさかの発言に、音根はそんなことあるはずないと口にする。
色の実習は相手の忍たまに知られてはいけないというルールだ、そのルールを破るはずがない。
「でも本当のことだから。あのくのたまの子、どうしても僕と実習をしたかったみたいで、全部話して頼まれたんだ」
そう言いながら、平然とした顔をしているその忍たまが言っている言葉が本当かは正直わからない。
だが、考えてみればあり得なくはない話だ。
どうしてもしたい相手、そう、相手が想い人なら、確実にするために全てを話して協力をしてもらうくのたまがいても可笑しくはない。
「そうですか。でも、その事を私に話してもいいんですか?私が先生に教えてしまうかもしれませんよ」
音根が先生に話してしまえば、この忍たまはその相手のくの一とできない上に、そのくのたまは何らかの罰、もしくは退学処分も有り得る。
「話したかったら話せばいいよ。僕には関係ないからね。それに、ルールを破って話したのはあのくの一なんだから、罰を受けるのは当然なんじゃない」
思いもしない返事に驚く音根だが、それよりも許せないのは、全てを知っているというのに、そのくのたまのことを関係ないというこの忍たまだ。
自分には想う相手などいないからよくはわからないが、お互いに知った上ですると決めたことを、目の前の忍たまは平然と裏切った。
「あなたという人は……女の気持ちを何だと思っているんですか!?全てを知った上で受け入れると決めた相手、それはあなたにとっても想い人のはず。なのに……なのに、簡単にそんな顔色一つ変えず裏切るなんてッ!!」
溢れだす怒りを言葉にし吐き出すと、その忍たまは驚いた表情を浮かべる。
いくら自分に関係ないこととはいえ、想い人と初めてをしたいというくのたまの気持ちは痛いほどわかるため、音根は忍たまをキッと睨み付けた。
するとその忍たまは、飄々とした口調で話始める。
「何か誤解してるみたいだけど、僕はそんな誘い受けてないよ」
「へ?で、でも、今あなたは全部知ってるって」
「うん。そのくのたまから全部聞かされた上で実習の相手になってほしいって言われたんだけど、そんなの興味ないからって断ったよ」
キョトンとしてしまう音根からは一気に熱が冷め、自分の早とちりだったのだと知り別の意味で熱が上がる。
そもそも先程のくのたまが怒って去っていったことを思い出せば、この忍たまが断ったことなどわかりそうなことだ。
「ご、ごめんなさい!私、早とちりを」
「少し驚いたけど別にいいよ。それで、さっきの話に戻るけど、キミは色の実習で悩んでたの?」
その問いに、音根ははいと小さく頷くと、恥ずかしさついでに話してしまえと思い、その忍たまに自分が悩んでいたことを話す。
同じくのたまの人達にも、誰にも相談できなかった悩み。
くの一になるなら、これからいろんな男に抱かれることになる。
それなのに、初めては想い人としたいなんて誰にも相談できるはずがなかった。
勿論、自分と同じ考えのくのたまだっている。
この忍たまを誘ったくのたまのように。
だがそのくのたまも、一人で考えた末での結論だったに違いない。
ただ自分と違うのは、想い人がいるかいないかだ。
いない自分が悩んでいてもどうしようもないことであり、そんな理由で不合格になるわけにはいかない。